2月22日(にゃんにゃんにゃんの日)に公開された「ねことじいちゃん」という映画が前々から気になってまして、映画好きの友人に「暇ならどうでしょう」と誘われたものを二つ返事で行ってまいりました。
猫よりも犬派なのですが、猫も勿論好きだし、穏やかな気持ちで見られる動物映画っていうジャンルは「自分がなかなか好んですぐ行く」ものではないだけに、ワクワクしながらいってまいりました。
結論だけ一言まとめると「猫が猫として猫目線な映像ってすごいなあ」というものです。
※いつものことだけどネタバレ考慮ないです※
「ねことじいちゃん」概要
原作は累計発行部数35万部を超える大人気コミック「ねことじいちゃん」。
ねことじいちゃん (メディアファクトリーのコミックエッセイ)
- 作者: ねこまき(ミューズワーク)
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/メディアファクトリー
- 発売日: 2015/08/07
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (8件) を見る
ほわ~っとしたあったかいイラストが特徴の、猫とじいちゃんの日常を描いたマンガです。
その「猫の物語」である今作のメガホンを取るのは動物写真家・岩合光昭さん。
よくBSのNHKで朝ドラみている時間帯の予告で流れては「癒やされる」とほっこり笑顔になっていたのですが、それとは異なる「役者猫」や「人」を含めての映像というのは見るのが初なのでどうやるんだろう?という。
ちなみに世界ネコ歩きは劇場版にもなっているそうで…BGMの毎度おなじみのものとふわと優しい気持ちに予告編からなる姿がたまりませんね。
岩合監督にしか撮れない猫たちの表情や島の美しい風景とともに、そこに暮らす人々をユーモラスかつ繊細に描き出しました。
主人公の大吉さんには岩合監督からの「志の輔さんしか考えられない」と熱烈オファーを受けた落語家・立川志の輔。共演には柴咲コウをはじめ、小林薫、田中裕子、柄本佑、銀粉蝶、山中崇、葉山奨之など人気・実力を兼ね備えた俳優陣が集結。
そしてもう一人の主人公、猫のタマ役は、100匹以上のオーディションから抜擢されたベーコン。まあるい体にふてぶてしい表情、志の輔師匠との息の合った動きなど、観る者の心を奪う熱演(?)は必見です!
(公式ホームページより)
予告編はこちらから。
岩合さんの「猫の目線」「猫の視線」で描かれる世界って色鮮やかできれいなイメージがあるんですよね。猫もまた世界の一部、でも猫だけが世界じゃないというか。小さいもの、大きいもの、たくさんのものと共存しあって存在している。そういう気持ちにさせてくれます。
映画の感想について
じいちゃんと、ばあちゃんと、ねこたちの島。
この島にいる若者は数えられるぐらいしかいないけれど、「島を出ていく人」「島に残る人」という部分と、一方で変わらぬ空間ながらもゆ~~っくりと時間が流れていく姿が印象的でした。
春夏秋冬を交えながら、彼らの微妙な変化が特徴的だったと思います。
猫にとっては時間というのは人間よりも速いわけですけれども、それをあまり感じさせないというか……じいちゃんたちもゆっくり、でも彼らもまた「寛容」な人とそうじゃない人もいて、変わっていく世界に対して意見が飛び交っていたりとか。
カフェのマドンナみちこさん(※柴咲コウ)と若先生(柄本佑くん)との距離感が初々しくて「あらあらまあまあ」みたいな、おじいちゃんおばあちゃんのほっこり空気感は見ているこちらも若先生頑張って!感がありました。
出会いもあれば別れもある。それは人も猫も同じで、学生カップルの「島を出る」の決断は本当に切なく、それでいてキラキラしているように感じました。この関係は一瞬のきらめきで、そこを「出る」「残る」を決めた両者の選択肢がどちらも尊いものです。
ストーリーとしてみていて「わ、わかるー!」となったのは大吉さんのレシピノートをみんなで作って行く過程。
これをしよう、あれをしよう、「みんなで」やろう。
それを実現できるのは大吉さんならではの人望もあるし島でのコミュニケーションが成立しているからだと思います。
立川志の輔さんのお芝居がねことの歩幅や柔らかさ、人と接する時の先生、としての優しさと歳を重ねての穏やかさが柔和な表情で出てて、タマさん、という言い回しもほっこり優しくなります。
息子さんがいっていた「東京じゃなくて、ここだからこそきっと親父も、タマもいいんだろう」って言葉にある通り、東京でも猫が飼えるとしても、東京で暮らせるとしても、彼らはここを選んでいるのだ、というのがとても重要なキーワードだと思います。
また、大吉さんの息子を演じた山中崇さんは朝ドラでもおなじみの俳優さんで(私はごちそうさん、の室井さんが好き)、ハロー張りネズミでもご出演されていたし見てて出番としてはメインではないけれども「精錬された東京の人」としての立ち位置、そして島で育った人としての立ち位置の狭間にいる形でとても良かったです。おうちで飼ってる猫とのやりとりも可愛かった…!
また、おばあちゃんだからといって優しくみんながなるわけじゃなくて悪友、腐れ縁からの偏屈なままになってしまった関係もあります。それってとてもリアルで口が悪いと「くそじじい」「くそばばあ」と言われてしまうやつですね。
でもそれを「クソ」として受け止めないでちゃんと相互ありきとして「誰と喧嘩をしたらいいんだ!」と言い合ったり、友達として腐れ縁として向き合う姿は優しい気持ちになりました。
また、「青春は何度でも来る」と言う意味合いでは、旦那さん、奥様がそれぞれいて、死別されて、当時の初恋をやんわりと思い出しながらの距離感を探ると言う意味でもとてもほろ苦く刹那的なものでも「幸せ」を享受できたんじゃないかなと。
小林薫さんのお芝居が私は好きなのですが、本当にこう……こう…程よい距離感と、それでいての切なさとの組み合わせが言いようのない気持ちにさせられました。
みーちゃんの猫としての習性と、彼女を飼わないという選択肢。猫嫌いなのに猫に好かれる、小さいものには優しくしてしまうガキ大将感。そんなん好きに決まってるじゃんかー!という要素が詰まったお人で、お芝居とのマッチ感が良かったです。
そういう意味では「ダンスフロアを作ろう」という流れは時代の流れを含めてもとても良いなあと感じました。彼らにとっての憧れの場所であったものが一つ一つ叶えられていく。それは島の中でできたカフェもそうだし、(クリームソーダがもれなく飲みたくなった)ダンスフロアもそう。ミラーボールもきっと憧れだったんでしょう。
時間がゆっくりだからこその彼らの憧れがあって、彼らが欲しているものがあって。かなえられていく流れは素敵なものでした。
また、俳優さんたちと同じく猫たちのお芝居のクオリティの高さ。目線が岩合さんだからというのもあるんでしょうが、ひたすら猫の猫たる猫らしさが詰まってました。主演のベーコン(タマ役)が息をするようにタマ。ずっとタマ。
それはこの写真集「ねことじいちゃん」にも詰まっていて、ふてぶてしさとか、ぎゅっと詰まってる感じ。岩合さん写真家さんなだけあって映像としても写真としてもねこたちの表情が素敵なんですよね。癒されました。
あとは前述もしましたがご飯を作る流れ。みんなで教わったり、やったりしてみる流れ。
「私らとやってること変わらないなあ」ていう…あれそれを…思いました(笑)
※筆者は友人と集まり普段できないことをあれこれすることを不定期にしています
一人でもできるけど、みんながいるとまた楽しい。そう思えるのって素敵だなと思います。レシピが読みたい(笑)パンフレットとかにあったんですかね。買えばよかったかなあ。
また、一緒に見にいった友人が「ドクターコトーとかもめ食堂と世界ネコ歩きを足して3で割った感じの映画という感じ」と話しておりたしかに〜!と納得していました。若先生主軸で見たらきっとドクターコトーだし、みちこさんメインで見たらかもめ食堂の要素があって、そこに住んでいるネコと人の有様が加わる「世界ネコ歩き」が組み合わさった雰囲気と空気感で穏やかで優しく、それでいてほんのちょっぴりビターな感じがいいなと思います。お菓子でいうと和菓子の栗きんとんみたいな…渋いお茶と組み合わせてほっこり優しさを感じられるものでした。
いろんな形、いろんな表現がある映画の中でこういう映画があるのもまた一つの表現としていいなーとなったので、優しい気持ちになる映画でした!!と!伝えたい!