柑橘パッショナート

二次元、三次元、映画、アイドル、サッカー他諸々の多趣味の結果、好きなことをアウトプットするためのビュッフェタイプになったブログです

【読書感想文】池井戸潤「鉄の骨」/正義か組織かの間で揺れる人模様

先日WOWOWの新作ドラマで神木隆之介くんが主演で「鉄の骨」をやることが発表されました。これについて「以前NHKで見たような」というふんわりとした記憶ではあったものの、「なんか聞き覚えがあるな」と思っていたわけです。そうしたらやっぱり小池徹平くんでドラマをやっていました。

 

NHK土曜ドラマ 鉄の骨 DVD-BOX

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 ふわっとした印象ではあったものの重厚な作品であったのを漠然とした知識ではあるなかで認識していたので、これを改めて2020年代の現在に神木隆之介くんでやるというのは非常に興味があったわけです。当時の小池徹平くんの年齢と神木隆之介くんは年代も近いこともありますし、二人のお芝居は全然きっと違うからこその面白さもあると感じています。

で、まぁここで驚いたのは自分の推しである橋本良亮氏がこのドラマに参加されるということが発表されたからです。えっドラマ!?!!

WOWOWのドラマは何かとジャニーズ事務所所属の方が出ている昨今なので(近々でいえばHiHi Jetsの高橋くんがV6長野くんと一緒にドラマ出ていますね)さほど件の事務所の人が出ることに驚きはしなかったのですが、橋本くんが出ると聞いて「マジか~!!!」とめちゃくちゃ驚いたのと「じゃあこれを機会にちゃんと見よう」と思って本を買ってみました。Kindleで購入したので仕事の合間や寝る前に読んでみた次第です。

ちなみにキャストについてちゃんと把握していたのが「神木隆之介=富島平太(主役)」だけで、他のメンバーは完全にラストシーン、P625の嶋野と平太のシーンまで把握していなかった次第です(笑)めっちゃいいシーンなのでP625全力でやってほしい。

 

鉄の骨 (講談社文庫)

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 ということで、ここからは「鉄の骨」という原作の感想になります。

※完全にネタバレになっていますのでご注意ください※

 

 「鉄の骨」とは

半沢直樹」「下町ロケット」でおなじみの池井戸潤氏が描くゼネコンを舞台にした作品。今年は4月に半沢直樹シリーズのドラマ展開もありますね。何度も言うけど銀翼のイカロス(4冊目)が私はどっからどう見てもJALで大好きなので(笑)ドラマも期待している次第です。

半沢直樹 -ディレクターズカット版- Blu-ray BOX

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 後個人的には「花咲舞が黙ってない」がすごい好きで(小説「不祥事」)、こちらのドラマシリーズの杏ちゃんも非常にサバサバしてて好きでした。

花咲舞が黙ってない (中公文庫)

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花咲舞が黙ってない DVD-BOX

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 最初のイラストと印象が異なっているのでそのへんも含めて「面白いな」って感じていた作品でした。杏ちゃんは「名前をなくした女神」も同じぐらい大好きなので自分の好きな作品に出てくれるとなんだかウキウキします。

 

人間臭い、「人間」

鉄の骨のあらすじは次の通り

中堅ゼネコン・一松組の若手富島平太が異動した先は”談合課”と揶揄される、大口公共事業の受注部署だった。今度の地下鉄幸治をトラないと、ウチが傾く――技術力を武器に真正面から入札に移動もうとする平太らの前に「談合」の壁が。

組織に準じるか、正義を信じるか。吉川英治文学新人賞に輝いた白熱の人間ドラマ!

講談社文庫裏表紙あらすじより)

 

なんというか池井戸潤~!!!ってかんじがします(漠然)

登場人物見ていると皆完璧じゃないんですよね。その完璧さが「人間臭い」というかなんというか……。

 

平太と恋人である萌(ドラマだと土屋太鳳さんがやります)の関係が段々距離が離れていく、心が離れていくのを見ていて「ああ~~辛い~~目に見えて萌が冷めているのに何とかつなぎとめようとしている現場、原文も辛いけど隣にいるカップルとかの立場になったらめっちゃ辛い~~~」って頭抱えましたし、上司部下のコミュニケーションも「そんな!!そんな世の中うまくいかない!!!!」ってなったりとか、思うところがめちゃくちゃあったし、何なら読みながら「この会社!!絶対私向かない!!」ってなったりとか(笑)

 

平太って良くも悪くも「普通」だなと思いました。普通がゆえにその「談合」という靄のかかった「世間的にNGだと分かっていてもそれにすがるしか出来ない」世界の中にいて「どう」動くかを重要視される。良いなんて思っていない。でも彼は「サラリーマンだから」というキーワードをよく上げています。

サラリーマンだから。サラリーマンだからどうあるべきなのか。

この作品における「正義」とはなにか。

この作品における「組織」とはなにか。考えてみるととても奥深いです。

組織の正義と世間の正義は違って、そこに生まれる自分の義があるわけで。

一方で「組織」は会社であり同時にその業界全体をも包括しているわけです。ずっとそうだったから。今更だめだと口ではいっていたとしても行動になれるか、っていわれるととても難しい。

 

平太・園田・嶋野の対比

読んでて面白かったのは誰かが誰かの対比のようにナチュラルに混ぜ込んでくるのがうまいなあと思いました。

読みながら「園田…こいつは殴らないと駄目だ…絶対近寄ったらいけないタイプ…」って真顔になったのはいうまでもなく、更に言うならそこで萌が心を向け始めているのを見て「ああ~~~~港区に憧れる女子みたいなことになっとる~~」でした(偏見)

「とりあえず園田は人のものと分かって欲しがるタイプなのでろくなやつじゃないと言うことは断言できる」と自分の感想ツイートを遡ったら書いてあったの大体あってて間違ってなかったと思います。良くも悪くも彼は彼の固定概念があって、それを押し付けていく、生活の中で縛られてしまうタイプだなと。名前をなくした女神高橋一生くんの役どころじゃん…ってなりました。

名前をなくした女神 DVD-BOX

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 でもって、平太、園田、嶋野の三者三様ちょっと対比的になっているなと感じる部分があったので記しておきます。

  • 平太…地方の出身、ゼネコンで働いている、段々会社の状態がしんどくなっている。恋人が気持ち離れているのを分かっている。自分が正しいとは思ってはいないが「サラリーマン」として有るべき姿を立ち回っている。良くも悪くも「大学生」だったころの名残が萌とのやり取りから見える。狭いけど長い友達が多そう。「先輩」と「自分」とタッグを組みながらいかにして取り込もうか思案するけれど最後は自分たちの力を信じて、コストダウンして正当に攻めていこうとする。
  • 園田…学歴コンプ、会社コンプ。良くも悪くもプライドが高い。人より自分優位に立っていることに満足感を得るタイプ。ゆえに「平太なんかと付き合っていた過去を持つ萌」に対しても理解できない。一つのミスをずっと攻めていくタイプ。その分自分を高めることも辞めないだろうけれど、「周り」がアクセサリー感覚で友達いなさそう(暴言)港区男子っぽい。友達いても表面上の友達っぽさそう(暴言2回め)基本上司・先輩のことも下に見ている傾向があるように感じられる。
  • 嶋野…立ち位置としては完全に平太といわゆる「逆だったかもしれねえ*1」な若者。平太、園田ほど内情には触れていないですけれど良い意味で「まっすぐ」だなと感じました。友達いる…いるのかなあ…?(笑)間違っていることは「間違っている」と言うタイプ。野心がどうこうっていう感じはあまりしなかった。

登場人物で言うと内心が描かれていたからわかりますが萌と園田の母親との「自分がこうなるかもしれない」という立ち位置みたいな考え方っていうのも対比になっていて面白かったです。

 

昭和、平成の対比(ある意味若者である3人は「平成」として)(談合をしている上の人々は「昭和」として)や移り変わりをしても変わらぬものものあって、取り残されている部分と、「何を捨てて、何を拾うのか」という取り捨て選択にも見えて、こう…読んでいてくるものがありました。

それでもある意味「勧善懲悪」ではなくて、城でもなく黒でもなくグレーである立ち位置の平太が「だめと分かっている」のに、の白の部分と「でも」という悩みと、一方で他のゼネコン会社の談合を向けてくる連中に対して堂々と渡り合おうとする瞬間は最初の「どうしよう上の人いっぱいいる場違い…」から成長している感じがしました。

 

また、嶋野と北原は平太と西田との対比みたいだなぁとも感じました。

名前が「西田」と「北原」って方角入れているのでわざとかなとも思っているんですが……捜査の掘り下げシーンと、西田と平太が「どうするか」「どうしたらいいんだ」と動く流れも面白いなと思います。そうなるともっと上である尾形はどこにつくのだろうとか、想像すると楽しいですね。

 

好きなシーン

そりゃもう色々あるわけですが、最後の談合シーンもそうだし、逆に「やられた!」で四苦八苦するところもそうで、池井戸潤の地べた這いずって絶対勝ち残ってやる、生き残ってやるっていうシーン、私大好きなんですよね。

そういう意味では「茶室」での平太VS他社でのやり取りもインパクトに残っています。また、ラストシーンである嶋野と平太のやり取りは「道が違ったら逆になったかもしれない」であろう二人の明暗というか同じ時代に生まれて同じ時代を生き抜いてきた彼らがどうして「自分とそう変わらないやつがどうして」っていう嶋野の気持ちがすごく見えていいシーンですよね。

ちなみにこのページ読むまで私は自分の推し(A.B.C-Z橋本良亮氏)が、嶋野をやると把握していませんでした。そのシーンの後に出てくる穏やかそうな口調でフォロー入れてくれる…事務官だと…思っていました…。

 イメージに「あっている」「あっていない」じゃなくて、完全に見落としていたがゆえの衝撃でした。「推しが出る」という気持ちはあるくせにどこに出るかしらないという…だからこその「印象が変わって2回めは読めるぞ!」って気持ちにもなったんですが(笑)

この嶋野vs平太のシーンは神木隆之介くんと橋本良亮くんの実際にも実年齢が同年代(ふたりとも93年生まれ)なので、見ごたえがあったらいいなぁと期待を寄せています。バックボーンはさておくとして、二人もまた「生き方」が全然違うでしょうし、お芝居の仕方もぜんぜん違ってそれでいいと思っています。違うからこそのぶつかったときのやり取りが非常に楽しみです。

 

また、萌に関してはこのシーン読んでたタイミングで「で、誰やるの?」と調べたら土屋太鳳ちゃんでした。下町ロケットじゃん……(娘役でした) 

下町ロケット -ディレクターズカット版- DVD-BOX

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 正直萌の役回りってとても難しくて、私は読みながら「何いってんだお前~~~~~理解出来ない~~~こんな女やめとけって~~~」っていうのを何回も感じたんですが(良い意味で現代の女性像っていう部分もある)(そのへんが池井戸潤の「こんな周りが頑張ってるのになんだかなあ」っていうリアリティだと思う。私は好き)、それをいかにして土屋太鳳ちゃんがやるのか楽しみにしています。

極論言えば「周りにイラッとさせられたら成功」なパターンのキャラクターだと思うので、リアリティあふれる揺れ動く女性のお芝居をしてもらってより「この…こいつっ…萌好きになれんわ~~」って思わせてもらえたら嬉しいなと思うばかりです。

「鉄の骨」で調べると「萌クズやん」「萌が悪女すぎる」「理解できない」って感想がたくさんあって 分かる…分かるよ…って笑ってました。でもいるいるこういう清楚でいい子っぽくて(実際多分いい子な部分もあるだろう)でも結局流されてしまうタイプの子…。

ドラマは4月18日(土)よる10:00から。その前に読めてよかったなぁと思う一冊でした。

鉄の骨 (講談社文庫)

鉄の骨 (講談社文庫)

 

 

*1:NARUTOネタから