A.B.C-Zのシングル「Graceful Runner」が発売されました。
今回の楽曲については「草野のアネキ」と当人たちも話に挙げるように「紅蓮華」でおなじみ草野華余子さんが「火花アディクション」に続き手掛けた楽曲です。
発売おめでとうございます。その上で、CDを入手して拝聴し、パフォーマンスをテレビ等ごしに見た雑感を記しておこうと思います。
「Graceful Runner」
作詞・作曲・コーラス 草野華余子
編曲:CHOKKAKU
まずこの楽曲を手掛けるきっかけになった部分であるインタビューについて触れなければなりません。10周年を迎えた彼らが今思うこと、という動画が先日のベストアルバムの特典としてストリーミング再生を通した映像で見ることが出来ました。
ちなみにこれは今作のB盤に映像として残っていますね。(見ている上でのお話になります)
これまでの彼らの軌跡は決して事務所内の他の先輩や同期、後輩のようには進んでいっていません。イレギュラーな存在として進んできた分、当人たちも悩んだことでしょう。これについてはTwitterや検索ツールなどでのサジェストでの言葉で決してポジティヴとは言えないキーワードが見掛けられ、感じる部分もあります。
でも、それでも進んできた確固たる自信と、彼らを信じて見守り続けてきたファンへの言葉がそこにはありました。
告知されていなかったぶん、驚きました。と、同時に何だかとても見ていて温かい気持ちになり、涙が出てきました。「これで最後だと思った」と考えながらやってきたという話があり、心の奥底に見えないようにしてきたものをチラチラと当然彼らも抱えていたのだと知りました。そりゃアイドルだからいつかピリオドはくるもので。でも、そのうえで自担*1はセンターでありたい、続けていたいと言い、メンバーからは「誰一人として諦めていない」という顔を上げた言葉がありました。
ぐっとくる、その上で、2021年の11月1日*2のことを思い出しながら、どんな気持ちで彼らはあの時見ていたのだろうとも考えました。
比喩ではなく、まさに「グッときた」というシーンばかりで、歩んできた軌跡と奇跡の重なり合いであり、外野の声や自分たちの葛藤といろんなものを孕みながらそれでも「新しいもの」を築き上げていこうとするスタイルに「この人達をもっと見ていきたいなあ」とつくづく思ったものです。
……という、そんなインタビューから歌詞を起こして出来た楽曲。
この楽曲の発表のタイミングは、ABChanZooでうっかりツアーがあることがさらっと発表された後だったこともあり、「なんだなんだツアーの発表か?」とざわついている中だったので「そうかあ」「いや嬉しいけどそっちかあ」みたいないろんな意見をお見かけしました。かくいう私も「そっちか~!!!」みたいな層でした。いやでも素直に歌が新しく出るというのは非常に嬉しかったです。嬉しかったんですが、こう、予想していたのが「ツアーでは?!」だったので…(笑)
実際に最初に聞いたときは「歌詞に10周年のお祝いムード感が!!!ない!!!!」という驚きが第一印象でした。こう…10周年ってもっと…華やかそうというか、みんな!!サンキュー!!ハッピーラッキーよろしくねー!!!みたいなそういうイメージがあったので、カラッとした明るさと言うよりもじっとりとした、重量感のある曲だなと感じました。5周年で自分たちが手掛けた曲を作るという流れでドキドキ夏夏したいって言っている曲だったのもあってギャップがすごかったです。
「10周年おめでとうと言いたい一方、ガッツリ重たいこと言われるの結構辛いものがあるな!(ハッピーラッキー嬉しい!ありがとう!!!を全面に出して良いのか?)」とまざまざと「解散」「休止」というキーワードを思い出させるような単語にビクビクしたのも事実です。
粉々のプライドってそりゃそうだよね…しんどいよね……なんて思ったり、それでも私は彼らがいいと思うんだよという気持ちもあったり。5周年のときに「Reboot!!!」が発表され、「再起動」しているぶん、さらに5年経ってまた「スタートライン」ということはそこのスパンの部分は何だったんだ……というジレンマが生まれたのもまた本当で。
もちろんニュアンスとして「ステップを踏んでいる」「段階がある」というなかの1なことを分かっているのですが、じゃあ、あのときのあれは何だったのか、というざわつきもちょっとありました。
切り替えと言われるとゴールしそうだったのにゴール出来ないままカウンター一発食らって「戻って!!!!!!」ってすごい形相でアワアワしている状態とか、そこからまたセットプレーやる羽目になって絶対くるから気をつけて!!!!!!集中して!!と祈るように試合を見ているような気分になるというか……。
インタビュー自体がすごく良いもので、曲もすごく刺さるものだったぶん「お祝いではない」というジレンマの中どうなるのかな……と僅かな不安もあり、揺れ動いていました。そんななか、CDが発売され手元に届き早速開封の儀を行い、拝聴しました。
曲は全体的にロックナンバーでありつつ、どこかジャニーズ要素があるのはCHOKKAKU氏の編曲部分がありました。
ジャニーズというジャンルを聞いている人なら聞きやすく、それでいて力強さがあるタイプの曲です。スルメ曲というか「スタートライン」のフレーズを何度も繰り返している分印象に残る要素もたくさん散りばめられています。
疾走感のある楽曲の中で目指していく世界は「新しい世界」であり、停滞ではなく前進、過去を振り返るのではなく、かといって切り捨てるのでもなく「それも含めての自分たち」という等身大のスタイルが確立されていました。
1番では「あのときの自分」「悔しかった気持ち」「他とは違うことへの葛藤」が触れられる分、「今日へとつなぐ」がより強く感じられました。その上での2番聞いたらすごい勢いで心が揺さぶられました。サビを超えて、夢(アイドル)を駆け抜け続ける覚悟を決めたからこその2番になっていました。
忙しなくがむしゃらで
Can't look back 振り返る暇なんてない
正解も 間違いも 後悔すら覚悟に変えた
「振り返れない」けれど、過去の自分たちがいて、過去これまでA.B.Cがあって、そこに橋本くんが加わって、デビューするまでの長いジュニア時代を経てデビュー、そして10年目の今につながっている。そして、そんな彼らを応援してきた人たちの中にはファンという肩書をおろしているかもしれません。
ファンの定義ってなんなのさって言われると人によって違って当然なので難しいところですが。彼らはアイドルという仕事だからいわゆるそういう「担降り」(ファンをやめること)をしている人がいることも当然視野に入れているでしょう。でもその上で、彼らは彼らなりに進んでいく「覚悟」になっていったんだなぁと言うことが非常に好きな部分でした。
以前友人が「A.B.C-Zの魅力は”とんでもないことをしているのに難しいと思わせずやるところ”を一番上げたい」と挙げており、それが非常に印象に残っていました。
確かに彼らは非常にスマートに、かつきちっと決めるべき所で決めています。何でそんな凄いことやれるの?もたくさんあって、かっこいい存在でもあるとファンの一人として魅力を語りたい箇所もたくさんあります。
その上で「泥臭い」「土臭い」こともしながら、磨き上げて築き上げたからこそ辿り着いているのだという肯定は、心無い言葉で「“どうして他のアイドルだったらここまで言われないのに彼らになった途端こんなに言われなければならないんだ”」という悔しかった思いや、歯痒さを取っ払えたように感じます。
もちろん、人から何を言われても良いわけじゃない気持ちは今もあるし、“何も思わないわけじゃない”けれど、自分は彼らが好きだなという気持ちも大事にこれからもしたいですね。
靴擦れも気にしないで 息絶え絶え 泥だらけ辿り着いた
型にはまらないオンリーワンのスタイル
どのグループも、どのアイドルも、どのタレントも、競合する人たちそれぞれに魅力があって、発信していく素敵な部分があります。その上で、彼らが模索して手を伸ばして掴んでいる「今」がオンリーワンで、彼らだから出来ること、目指したいこと、いきたい場所があるということ、肯定されているような気持ちになりました。
誰かと比較しなくていい。でもどうしても引っかかるものはある。
それは次に繋げるためのステップとしてビジネスとしての部分だったり、色んなものだったり。それでも「次」に彼らが進んでいく姿を見たいからこそ、自分は自分の、自分にできることを、楽しんでいきたいなと思います。
オンリーワンでナンバーワン。ナンバーワンということはたくさんの死屍累々があって、そこに「立ちたかった人」「目指した人」がいる。プロフェッショナルというのはきっとそういうことで、少ないイス取りゲームを制してそこにいる。これは何のジャンルでも言えることです。たくさんの屍を乗り越えた先に栄冠があり、それがゆえに輝くものでもあります。
だからこそ、彼らが「今こそ」「そこに、この思いで立てる、今が」スタートラインだということ。デビューという第一フェーズ、Reboot!!!からの第二フェーズ、そして今、10周年という第三フェーズに入ってきているがゆえに「新しく見える場所」なのかなとも感じます。
この先、どういう「ゴール」が彼らにあるのかは分かりません。人間が行き着く先が生と死という決まりきったものであるのと同様に「解散」だったり「退所」だったり色んなものがあるかもしれません。
ただ、そこは「今は知らなくていい」とはっきりと歌詞で浮き彫りになっている分、自分もまた真っ向から彼らを「好きだな~!!!」「いいぞ~!」と思っていられる時間を大切にしたいし、“推せるときは推せ”という言葉を思い出させられました。
自分の推したいときはいつか、「自分が一番好きな彼ら」はいつか?となった時に「今がやっぱり1番いいな」と思えるときを大切にしたいと再認識しています。
思い入れのある時期というのは私の中にもあって、それこそ彼らを「認識」した時期、一人ひとりの顔を覚えた時期、知っていくものすべてが新しい分面白さとフレッシュさがあり全てに対して「全部楽しい!全部最高!」となっていた時期。そこから5年駆け抜けて見えてきたもの、気づいたもの、感じたものはたくさんのエッセンスになり、メディアを通して構築される彼らの姿を自分なりに解釈したり、考えたりしていきました。
この時間があるからこそ、さらに「一番好きな時期はいつか」が”今”であると言えたらいい。一番好きなのは今の彼らで、昨日より今日の自分が好きでいたいのと同じように明日の彼らがもっと好きでいられたら。そんな風に考えています。
悲しみをやさしさに、自分らしさを力に。
「今の自分」を歌っている楽曲は沢山あって、その一つひとつが誰かに届いているものだからこそ、今回の「Graceful Runner」は、A.B.C-Zというアイドルグループが彼らのファンに向けた曲でもあるのかなと思います。
シンプルに「君」は誰か、という問いかけに「私」であり「私達」になるのかな、と感じられるのは凄く好きだなぁとも感じます。
疾走感のある、繰り返される「スタートライン」というキーワードはどこかシャトルランのように反復されるものでもあり、スクラップアンドビルドを繰り返して作ってきている「今」なのかなという意味でキャッチーでありながらも意味がきっとあるのだろうな……なんて噛みしめるように聞いています。
何度も繰り返して、スタートラインをまた飛び越えて、そのスタートを何度も繰り返しながら「今」にたどり着ける。ボーダーラインを超えた向こう側、さらなるスタートラインを目指して築いた第三フェーズ。どんな風に彩っていくのか。
10周年第一弾のシングルとして、たくさんの場所でこのGraceful Runnerが聞く機会がありますように。
Enamel Slow
作詞作曲:ARAKI
YouTube にアップロードされているリリックビデオのイラストは以前橋本くんがコラボしたKANA SUZUKIさんのもの。雰囲気があっておしゃれな感じに仕上がっています。
ゆったりとした雰囲気でありながら、シティポップさもあり、聞いているこちらも落ち着いた空間、異空間亜空間に漂うような落ち着いた雰囲気になれる楽曲です。どちらかというと夜に聞きたい曲。
Appale
作詞・作曲:戸塚祥太
編曲:CHOKKAKU
あっぱれ!A.B.C-Zのオリジナルソング。あっぱれ、あっぱれと繰り返される復興支援要素も含めた楽曲。
あっぱれというと河合さんが俺たちとみんなで~のときに最後「あっぱれ!」というようなイメージがあるので、そういう意味でもいろんな形で結び付けられた楽曲だと思います。楽しそうに歌っているのが印象的です。
静かな朝(初回限定盤A入)
作詞作曲:伊沢麻未
編曲:sugarbeans
「はらはらひらふる」でおなじみのコンビによる楽曲。
A.B.C-Zの楽曲は「ひかり」や「星」がよく使われていますが、シンプルでストレートな分心に刺してくる楽曲でもあります。静寂の中に包まれながらゆっくりと目覚めるような、どんな演出をしてくれるのかな?とワクワクするような楽曲です。
DANGER-DANGER(初回限定盤B入)
作詞:西野蒟蒻
作曲:YCM・佐野仁美
編曲:大久保薫、JUON
YCMさんは「JOYしたいキモチ」を作曲されたお人ですね!また大久保薫さんはハロプロを中心に沢山の楽曲の編曲を提供されていらっしゃるお人。入野自由くんのJoyfulも手掛けていてびっくりしました。幅が広い…!西野蒟蒻さんは97年生まれとまさにZ世代の人!現在のトレンドを走る人に作ってもらえるというのは何だか感慨深いですね。
個人的に今回のカップリングシリーズでは最推し。ガシガシ踊っていただきたい。