「忠臣蔵」は12月14日に赤穂浪士が忠義のために吉良上野介を討つ実話が基になっているものです。これが三国志のように派生し、人間性を描いたりよりドラマチックになったりと現代にまで愛されている物語の一つでもあります。ちょっと判官贔屓が入っているのも含めて当時の幕府や政府に対しての反発をそこで一矢報いてくれた部分もあって民衆受けしたんだろうなと推察しています。
ということで、先日「決算!忠臣蔵」を見てきました。
個人的には吉良上野介名君説も好きで、地元の人からすると「そりゃそうかもしれないんだけどさ~~」の見方によってどんなふうにも変わるっていうスタンスは歴史ものあるあるとして(徳川が悪く書かれて石田・豊臣が良く描かれるのも含めて)面白いなと感じます。どっちかっていうと「賄賂!!」「金!!!」っていう印象が調べてると出てきて、こう…あっ西軍と東軍で徳川家康における色んな人の意見と同じ感じ!!(※私は徳川家康の話結構好きなんですけどね!)って思うばかりです。
"受け継がれる意志"
"時代のうねり"
"人の夢"これらは止めることのできないものだ
────人々が『自由』の答えを求める限り
それらは決して止まることはない
ってONE PIECEのBelieve(Folder5)の冒頭に朗読シーンがあるじゃないですか。あんなかんじ。幻聴がもれなくこの曲聞くと冒頭に入ってきちゃうんですよね。ウィーアー!も富、名声、力、この世の以下略…な朗読も聞こえてくるから恐ろしい。
個人的にはザ・ベイビースターズのヒカリへも好きです。と、まぁそんなONE PIECEネタはともかく。
今年、その映画が作品としてあるという話を聞いて非常に楽しみにしておりました。
なにせ、堤真一さんは好きな俳優さんだし、岡村隆史さんは映画に関して言えば久しぶりだし、そもそも映画のメガホンを取るのが「殿、利息でござる」でお馴染みの中村義洋監督っていうのがありました。
中村義洋監督の妻夫木聡さん、竹内結子さんという「わ、わかる~~!!中村さんの映画おなじみの人だ~~!!」ってなる安心感と安定感がありながら「堀部安兵衛」「大石内蔵助」と歴史的に人気の高い「赤穂浪士四十七士」を取り扱う、しかもまたお金関係である。*1
これは楽しみだな~折角だからみたいな~と思っていたのですが。まぁなんていうか、一番びっくりしたのはここに自分が応援している「A.B.C-Z橋本良亮」という人が起用されたということ。
世間で言う「バーター」*2なのかどうなのかは私はまったくわかりませんが、その発表を聞いて「な、なんだってぇー?!」と非常に驚いたし、元々行く予定だったものがさらに彩られてびっくりした思い出があります。で、まぁ映画初日にいってきたわけで……その感想を書いておこうと思います。
※映画感想ですが、ネタバレ大いに上等という流れで書いています。
- 決算!忠臣蔵について
- 概要
- 自分の応援したい人がいること
- 歴史勉強番組として見れる作品
- 同じ世界でも「住む世界が違う」が刺さる
- 営業と経理での価値観の相違
- 経理の映画として
- ストーリーと俳優の話
- 「W主演」「群像劇」という扱いのむずかしさ
- 「推し」の芝居について
決算!忠臣蔵について
中村義洋監督の手がける「忠臣蔵」をテーマに使った映画になります。
経理、経済面についてあまり精通していない人間なので、文字を追いかけながら「金の出し方がエグい」となっているばかりです。
中村監督といえば堺雅人氏主演「ゴールデンスランバー」、錦戸亮氏主演「ちょんまげぷりん」、そして近年で言えば阿部サダヲ氏主演の「殿、利息でござる」でおなじみ。
特に一番最後の「殿、利息でござる」でいえば羽生結弦選手が出たことでも話題になりました。
「はっ…羽生くんだって~~!?!!」と当時映画に関して全く、ええ、之は全くといっていいほど情報をいれていなかった私が友達と映画を見に行ってお目通りかなった瞬間の民衆の気持ちは概ね一緒。ハアアアアア?!とめちゃくちゃびっくりしました。
そういう意味でも「殿、利息でござる」は好きな作品の一つです。
このジャケット本当にこれでよかったんだろうかって未だに思うけど、作品自体はとても真面目に作られていたものでした。
▽当時の感想
ジャニーズ関連でいうと重岡大毅くんこれに出ていたのですがまじで自分が記憶がまったくなくて(申し訳ない)溺れるナイフ見て「めっちゃ良い芝居してたなあ」ってなったんですが友人に「あれ利息でござるにも出てたと思うよ」って言われてびっくりした思い出があります。
▽溺れるナイフの感想
他にも濱田岳さん、横山裕さん、妻夫木聡さん、石原さとみさん、竹内結子さん、橋本良亮君、荒川良々さん、千葉雄大さん、鈴木福君、笹野高史さん…など、様々な方が出ています。
しかしこのキャスティングを見たときに「殿、利息でござるの人たちがいっぱいいる」っていう印象でした。
なんともいえぬ「わかる~~」感。竹内結子さんと妻夫木聡さん、濱田岳さんというラインナップにもう一度利息みたくなりました(笑)
概要
清廉潔白な赤穂藩主・浅野内匠頭は、かねて賄賂まみれだった吉良上野介に江戸城内で斬りかかり、即日切腹を言い渡される。
突如として藩主を亡くした赤穂藩士たちは路頭に迷うこととなり、筆頭家老の大石内蔵助は勘定方の矢頭長助の力を借りて財源の確保などに努めるが、そうした努力や幕府への働きかけも虚しく、お家再興の夢は絶たれてしまう。
それでも一向に討ち入る様子のない内蔵助だったが、江戸の庶民たちは吉良への仇討を熱望。しかし討ち入りするにも予算が必要で、その上限の都合上、討ち入りのチャンスは1回きり。予算内で仇討を成功させるべく奮闘する浪士たちだったが……
(映画.comより引用)
歴史的に見てもストーリーに持ち上げられることが多いのはやっぱり今作における主人公たる「大石内蔵助」(堤真一)とか、後は諸説諸々あるけど高田馬場で無双したで有名な「堀部安兵衛」(荒川良々)などですが、「忠義」、「男たちの生きざま」や「残していく家族の物語」として描かれたりすることが多い忠臣蔵をコメディ要素をはらみつつ経済的にどのように彼らが使っていたのか、ということを「わかりやすく」表現していく映画ですね。
自分の応援したい人がいること
2019/04/04、キャストが発表されて私は非常に驚きました。
「橋本良亮」の名前がある。映画がある。
これを驚く以外にどう驚いたらいいのかわからない。
この「決算!忠臣蔵」については映画が発表された頃から何かと私の周りで話題になっており、私は「堀部安兵衛誰やるの、えっ、荒川良々??やだみたいに決まってるじゃないですか」と言っていたからである。
で、そこに自分が応援している人が来ると聞いて動揺以外に選択肢がなかった。なにをどうしたら落ち着けというんだ。
🎊🧮第4弾キャスト解禁🧮🎊
— 映画『決算!忠臣蔵』 (@chushingura_mv) April 2, 2019
討入りを熱望する赤穂浪士・武林唯七役にA.B.C-Zの #橋本良亮 さんが決定🎉
撮影前「A.B.C-Zのセンターとしていいところを見せたいです。」と意気込んでいた時代劇初挑戦の橋本さん。
その言葉通り、撮影初日から堂々たる演技を披露していました📽️#決算忠臣蔵 #討入り pic.twitter.com/J5C7YiS9rn
今回このような貴重な機会を頂き大変光栄です。
初めての時代劇挑戦でしたが、
堤さんはじめ、キャストの皆さんスタッフの皆さんに助けていただきながら、
とても濃密で幸せな時間を過ごすことができました。事務所の先輩である横山くんの俳優としての姿にもとても痺れました!
笑いあり涙ありの内容になっているので、是非多くの方に見てもらいたいです!
(公式Twitter/https://twitter.com/chushingura_mv/status/1113199552813625345 より)
関ジャニ∞の横山裕さんに関しては「破門」を見ていたので俳優さんとして見ることにあまり違和感なかったですし、岡田准一さん主演の「天地明察」にて時代劇(といっていいのだろうか)の役柄も見ています。
それはそれであれはあれでこれはこれってかんじの印象でした。
撮影前「A.B.C-Zのセンターとしていいところを見せたいです」と意気込んでいた橋本だが、あるシーンでは納得がいかず20テイク以上重ねる場面も。「素晴らしい共演者の方々といいものを作りたいです」と語っていた橋本は、撮影現場で、うまくいかない苛立ちが募り、大声をあげ自分自身を奮い立たせる姿も見せた。
(A.B.C-Z 橋本良亮、堤真一×岡村隆史『決算!忠臣蔵』で時代劇初挑戦 「とても濃密で幸せな時間」|Real Sound|リアルサウンド 映画部 より)
撮影中の裏話を聞いて「凝り性だもんな」という部分も納得しながら、作り手の一人として映像で良いものになってくれていたらいいなあと、そんなことをファンとして願っていました。で、どのシーンなのか気になる(2019/04/05現在)ので映画誌さん等で聞く機会があったら…と思ったんですが見ていると「ここかあ」ってなりました。
クランクアップ時に橋本は、「やっとわかってきたところです。あっという間の1ヶ月半でした。まだまだ出来ます!」と謙虚に答えつつ、物足りなさを感じるほど撮影に没頭していた様子を伺わせた。そして「また時代劇をやりたいです」と、今回の参加に十分な手応えを感じたよう。
また、本人にとってもポジティブな感情を抱けるというのはとてもいいと思います。主演の堤真一さんとは5月に「良い子はみんなご褒美がもらえる」という舞台に出演しており、そういった意味でもご縁があるなあとしみじみします。
「本当に現代っ子ってかんじ」と以前評されていましたが、その後評価はどうなったんだろう、というのがちょっと気になるところです。
また、彼の起用について監督とプロデューサーは以下のように話しています。
●中村義洋監督
別にヤッカミじゃないんですけど、イケメンのカッコ悪い様って面白いじゃないですか。
橋本くんが演じた武林唯七は年収が170万円ほどで、御家断絶後も浪人となり、さらに困窮しまくる役なので、あの涼しげな橋本くんもどんどん薄汚く、余裕なく、カッコ悪くなっていくわけで……たまらなく面白かったです!
でも本人も楽しそうでしたから、ファンの皆さん、許してください。
(同上URLより)
●池田史嗣プロデューサー
橋本さんは初参戦の中村組において監督から細やかな指導を受けつつ、どこまでもまっすぐにその演出に食らいつこうとする懸命な姿勢と、堤さんや事務所の先輩の横山さんをはじめとする、主演級だらけの錚々たる共演者たちとも積極的に言葉を交わし、沢山の刺激を受けている姿が印象的でした。
史上初、全編関西弁の『決算!忠臣蔵』において、武林唯七は堀部安兵衛と共に貴重な江戸組メンバー。
決して悪い人ではないものの、やる気が空回りして大石内蔵助を困らせてしまう面白い役どころ。
劇中ではちょっとやんちゃでどこか憎めない、魅力的な橋本さんの姿をお見せできるかと思います。
どうぞご期待くださいませ。
(同上)
橋本くんは自分が人懐こい性格であることを自覚していて、また、現在はジャニーズ事務所を離れている渋谷すばるさんに対して「俺たち今日から友達ね」と言って早々に親友になったという過去を持っています。そういった意味でも「遠慮がない」(良い意味で)なのかなって感じていまして…それは「A.B.C-Z」というアイドルグループのセンター(※他の人達は全員年上)(※もともと本人は同年代のグループにいた)中でも変わらないようで、でも「少し俯瞰して見ている」のかなって想うときもありました。あくまでも私が見ていた感じですが(笑)
映画に関して“A.B.C-Zのセンターとしていいところを見せたいです”という発言があったことに関しては「これは!!!アイドルではなくて!!俳優としての!!起用だと!!!思ってほしいな!!」と私は思っていたのですが、撮影中に納得いかず「俳優として」考えて考えてこういう芝居がはどうだろう、ああいう芝居ならどうだろうを監督やプロデューサー、周りの俳優さんとディスカッションしたり聞いたりできたなら、個人にとってブラッシュアップにつなげて貰えたという認識になっています。
ということで、映画を「映画」として見たい反面と、自分の好きな人(応援している人)が出るという(しかもそれを目的として行きたかったわけじゃない)というジレンマに苛まれながら映画を見てきた感想になります。
歴史勉強番組として見れる作品
映画を見終えた感想の第一として「この映画はどこに向けた映画なのか」っていうのを考えました。
歴史ものの映画って色々ありますけれど、ベースとして「その時歴史が動いた」瞬間を切り取るのか、その「歴史に至るまでの歴史」を描くかでの大きな違いがあるわけです。
「忠臣蔵」は「討入」という本願を遂げるために向かっていく物語で描かれることがおおいです。四十七士をどのように選出し、討入りに向かっていくかをよく見るというか、その「浅野内匠頭」との関係も含めてのストーリーというか。
本作はどっちかっていうと、「ストーリー性」というよりも「事実」に基づき、紐解いていくという形をとっている印象がありました。
もちろんコメディで人柄も諸々出てきますが同時に説明が非常に多い。
「そば一杯がいくら」ということがベースにあり、当時と現代においての「円」ではなく「文」「両」といった通貨が異なることも踏まえてのちょっとしたお勉強要素もあるように感じました。
「そば一杯がいくらである」これが冒頭でのナレーションで、それが最後の演出にかかっているのが好きです。そば食い過ぎって言われたりと、何かとこの作品そばの出番が多かった。
現代社会における見方が違うので「これはどういう意味か」「こっちはどういう感じなのか」っていうのがコンパクトにまとめられていました。
演出的に言えば江戸から京にいくのに往復で70万以上かかるとき、その人が歩くたびに一緒に「@@万」っていうのが出てきたりとか。
だからどっちかっていうとユーモラスにテレビの歴史情報番組を見ているような感覚で話を追えました。
同じ世界でも「住む世界が違う」が刺さる
本作の登場人物でより感じたのは「経理」と「営業」の差が如実に出るというか、現代に置き換えやすいものも感じました。
岡村隆史さんが演じている矢頭長助と堤真一さんの大石内蔵助は竹馬の友(=幼馴染)なわけですが、同じように育ったとしても違ってきます。
「貧富の差」といってしまうともうどうしようもないんですけれども、子供心に一緒に育ってきたものの、大人になっていくとあちらとこちらで大きく違います。
作中で「自分はそうは感じてこなかった」と大石内蔵助がいうものの、矢頭長助は「着ているものでも違いが出る」と返しています。
年収がおおよそ200万のワーキングプアである矢頭長助と、家老という立ち位置にまでなった大石内蔵助が7000万の年収。そりゃ着ているものが違って当たり前です。GUを普段着として愛用している人と、プラダを当たり前に着ている人で同じように友達だとしてもまさに「住む世界が違う」。
その人個人がいい人であったとしても、やり取りをしていくときに絶対的に感じる「違う」感覚は、どうやってもあるものです。ちょっといいものを食べようとなったときに、その線引はどこになるのか。とか。普段食べるもの、使うもの、所作。様々なところで人は「違い」が出てきてしまうのでとても残酷ではあります。
ちょうど今現在進行系でやっているゲームがあるのですが(スタンドマイヒーローズといいます)、周りも、自分も、「同じ」といってもどうやっても違ってきてしまう悩み苦しみっていうのはあってしかるべきだというシーンがありました。これについてはもうひたすら「えっ…辛っ…」ってなるばかりでした。夢見る少女じゃいられない。
作中における子どもや周囲の着物については退職金(割賦金)からの支払いも含めても彼らがどういった生活を普段していたのかが如実に出ています。
作品の終盤で将棋盤をひっくり返された状態にある大石内蔵助が他国への仕えることを誘われてブチギレて返すシーンがありますがそこで「全員連れていけない」という部分のセリフで「食い扶持に困っている人間もいる」という部分がより描かれている気がしました。
こういった差を踏まえた上で、勘定と喧嘩担当…いわゆる「経理」と「営業」の違いが段々と浮き彫りになっていきます。
営業と経理での価値観の相違
見ながら「どっかの企業のあるあるを見せられている気分」でした。
会社そのものが倒産→退職金に右往左往している部分とか。このへんは本当にわかりやすく現代に置き換えたらこう、こうなったときはこう、っていう描写が解説があって助かりました。
経理面の銭勘定の細々さを見ているとちょうど「これは経費で落ちません」という作品を思い出させてくれました。つい先日ドラマになっていましたが、それも含めて「ですよね~」が詰まっているのでオススメ。
これは経費で落ちません! ?経理部の森若さん? (集英社オレンジ文庫)
- 作者: 青木祐子
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2016/07/22
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログ (2件) を見る
”喧嘩ばかりしていて(それが仕事)金の使い方がわからない”というセリフがあります。
このへんについては 営業と経理の感覚の違いにも似ています。
「営業はすぐタクシー使う」「それぐらいいらない」「何でこんなに使うんだ?」に対して「必要なものだから」「人付き合いだから」「接待だから」みたいなもんで(もちろんニュアンスの違いみたいなものもあるけれど)、見ながら移動費精算するときのことをふと思い出しました。自分はどっちかっていうと営業よりで外にでることも多いので「そうだよなあ…」ってつまされました。いつもありがとうございます。
経理の映画として
映画というよりも撮り方がスペシャルドラマとか、後はクイズ番組とかの再現VTRのような要素がたくさんあって、そういった意味で何も考えずに見られた映画だと思います。
めちゃくちゃしんどいシーンがあるわけでもなく(逼迫しているシーンはあれど、笑いのほうが強いので)、ふふっと笑える要素をもらいながら楽しむ映画でした。
同系統でいうと先程から度々上げている「殿、利息でござる!」が一番近い気がします。人間模様でいうと人が「藩」そのものというよりも村よりになっているので、人がぎゅっと詰まっているのと、主人公のスポットの当て方が異なるので別物ではありますが…。
また、同様の「帳簿」と括るのであればもっと家族にせまった「武士の家計簿」も該当しますね。
切り詰めて切り詰めてどういう生活をしていくのか……という時代の流れや雰囲気などもあるかとは思いますが(こちらは笑うっていうかシビアな世界を見せられている感覚が自分の中では印象に残っています。ラストシーンが感慨深い)…。
ストーリーと俳優の話
「浅野内匠頭が喧嘩両成敗で切腹する、藩がお取り潰しにあう」→「吉良上野介がなぜかお咎めなし。なぜだ」→結果討入する。
このストーリーが作品のポイントとしてはっきりしているので、「わかっている人間(討入が果たされている)」としては少々テンポがゆっくりというか、「この出来事でいくら使って、この出来事でいくら使って、だから残りいくらです」っていうのが非常に事細かく(もちろん本当はもっと細かったであろうけれど)描かれていて、そのぶんだけ小刻みになりすぎて大きな展開につながっている感じがしませんでした。
ざっくりと言っちゃうと、前述した「スペシャルドラマとかで一旦ここで止まってCM」とか「一旦ここで”ここで問題です、彼らはどうしたでしょうか?”」みたいなクイズ番組のストップが掛かる感じでしょうか。あまりスムーズな流れがあって起承転結で、っていうよりも起→→→→承→→→→→→転→→結みたいな。
描写描写が現代の我々にもわかるように説明するので演出の仕方が明るい感じで作っていっているのが印象的でした。
また、「これが本当の貧乏くじ」など、印象的なフレーズも多く、「誰がうまいことを言えと」みたいな感じになっているのは言葉遊びが色々あって面白かったです。
後一番ラストのそば屋でそば食べているシーンは雪が深々と降る中で「これからそうなる上でもやっぱり金勘定かい」っていう部分があって、そのへんもうちょっと明確にわかりやすかったら良かったのになっていう気持ちもちょっとありつつ。
瑤泉院のナレーションが突然飛躍して現代に持ってこられているのが個人的にはちょっと「いきなり飛躍したなあ」っていう部分もあって、そこの史実は最後のエンドロールとかで文字+写真でもよかったんじゃないかなとは思うわけです。あくまでも「忠臣蔵」の世界で、忠臣蔵で終わってほしかったというか。
なんかこう全体的にいろいろが色々の説明・補完をしあっているので、楽しい一方で終わった後に「そうなんだ」とか「へえ」とかで終わってしまったことで「もう一声ほしかったかな」「ちょっと長かったかな」と体感時間が長く感じられたところが気になりました。コメディだからこそもっとテンポがあってほしかったというか。
極端に「めっっちゃくちゃ期待!!超楽しみ!!!!!!」っていうよりも、もっとフラットな感覚で「映画見に行くか」というノリで見に行って「ちょうどやってるから見るか~!」っていうかんじで見られる映画だったかなという印象です。
めちゃくちゃ重たい映画だと「えっ…しんど…今からこれ見るの結構心しんどくない…」っていう部分もあると思いますし「ゲラゲラ笑いたいわ~」っていうものもまた準備が必要だと思うので、そういうのも含めて、全体的に「気軽に映画をみたいなら」っていうのがあっているんじゃないかな。
俳優陣については堤真一さんの「ダメな父親」「だめな男」という感じがすごく出ていて興味深かったです。フライ・ダディ・フライを思い出すような弱さと、SPのようなしっかりとした貫禄と。いろんな顔を持つ俳優さんだなと改めて感じさせられました。
「良い子はみんなご褒美がもらえる」で見た圧のある喋りもできるお人ですが、今回の大石内蔵助はどっちかっていうと「だめな父親」の要素が強く、主税(鈴木福くん)から見た彼がどんな父親であるかは推して知るべしというか「そりゃあ幻滅するよね」っていう部分がはっきり描かれていたのが印象的です。
全員が関西弁ということもあってか、よりコミカルな感じがしました(関西ってなんとなくコミカルになるかんじがありますよね。どついたろ本舗もそうですが)
以前堤真一さんは以前木村拓哉さんの「忠臣蔵1/47」で浅野内匠頭を演じていた記憶があるので(あれにそういえば今作も出ている妻夫木聡さんもいた)何かとご縁があるなと感じながら見ていました。
また、調べてみたら徳川綱吉でも大石内蔵助として出演されていて本当にご縁があるお人なんですね。
長助である岡村隆史さんのお芝居を見るのは踊る大捜査線ぶりだろうか…ってぐらいの感覚なのですが、私は彼のお芝居が好きでした。見てて早口になるというか、淡々と事実を突きつけて行きつつもどこかシビアになりきれないところが好きで、「籠」というフレーズが随所にあり、籠に乗って自分は来ないくせに理玖には籠を乗るべきとして、最後は籠が理由になってしまう。わかっているからこその策略とは言えとても見ていて可哀想な人だとも感じました。ワーキングプアのまま、息子たちを残してそしていなくなる。
不破を今回演じた関ジャニ∞の横山裕くんですが、こう、忠臣蔵めちゃくちゃ詳しいわけではないので(数名の名前の把握+展開がわかるぐらい)、最初に「藩を追い出された浪人」からの仲間になるまでのチョロさにすごい笑いました。戦闘狂がすぎる。
最近「フワ」という名前を聞くと全員脳筋とかバトル脳なのかなっていう疑惑が自分の中で出てくるような状態なのですが(仮面ライダーゼロワンの不破さん完全にバトル脳。でも常識案外最近ある)、そういう要素が彼の中にもあって、「戦うか(スッ)」みたいなところと、そこから勝手に元服した子どもたちのことへのフォローの入れ方(こいつら全員わかってますわ!)に「人情に厚いやつなんだな」と感じました。
まぁ一方で「子どもたちの主張言わせてあげて!!!!!!(笑)」とも思う部分もありましたが。未成年の主張は主張してこそだと思うのでセリフ泥棒しててちょっと笑いました。笑う所なのかシリアスなのかわからないのですが個人的には”シリアスな笑い”に該当しててちょっとなんだか一人で笑ってしまった。
私石原さとみさんについてそこまで詳しくないのですが、関西弁について全く違和感がなくて(これは私が関東の人だからかもしれないですけれど)、すんなり入ってきました。冒頭ナレーションも兼ねていらっしゃるのですが、とても丁寧にお話されていたように感じます。きっぱりとYES/NOを話した上で下すひとだからこその背筋が伸びているかんじと、怒ったり、憂いたりする表情やきめ細やかな動きがキレイでした。笹野高史さんとのやり取り含めて一つで完結してるかんじも善かったです。
「W主演」「群像劇」という扱いのむずかしさ
本作では「堤真一」「岡村隆史」がW主演となっているのですが、大前提として群像劇であり、その群像劇のはて、志半ばで長助の離脱が描かれています。
竹馬の友として必要なのは間違いないのですが(史実で亡くなっているという部分もあるだろうし)、思ったのは「そこでいなくなるのにあまりにもあっさりしすぎていないだろうか」ということ。群像劇ってどうやっても人一人を描くから仕方ないのですが、全体的に薄味になってしまいがちなんですよね。
長助の離脱により大石内蔵助が本格的に金銭面的に気をつけるようになるトリガーであることは間違いないのですが、感情移入し辛いというか、彼らのコミュニケーションが軽口たたき会ってサクサク進んで、サクサク終わってしまっているから「もう少しコミュニケーションがほしい」という部分がありました。
最終的に必要になってくる蔵奉行の貝賀弥左衛門(小松俊昌)の出番のほうが相対的に見て多くないだろうか、とか(彼は彼として重要な役回りなので必要なポジションだと思うけれど)、菅谷半之丞に対しての描写があまりにもあっさりで(これは史実はどうかはわからないけれど)、更に言うなら理玖とのシーンを少し長助とのシーンに回すのもありだったのではないかなぁと。
「W主演」であるからこそ、きっと長助である岡村隆史さんの出番は大石内蔵助と同等ぐらいにはあるのかな……と思ったのですが、そうではなかったなということで、なんともいえぬ「ううん…そうか…」という気持ちがありました。
長助の人生を探してみると死にかたが病死とあったので、描き方がいかようにもできたと思うだけに(これは実際がどうなのかわからないですが)ちょっともったいないかな。
「推し」の芝居について
前述した通り、自分の好きな人がお芝居に今作出ているのですが私自身はあまり彼に固執せずにフラットに見られました。
めちゃくちゃ下手~!!!誰だお前~!!!!!とマイナスな意味で頭を抱えるわけでもなく、かといって手放しですごいねすごいね!!!完璧だね百点満点通り抜けてるね!!とも思わないです(笑)
「俳優」としての「忠臣蔵の世界」が今回は必要だったと思うので、NG20回以上ってエピソードで身構えていましたが(良くも悪くも)想像よりずっとずっと普通というか、浮き彫りになっている形ではなく、「武林唯七」を演じていてちょっとホッとしたのは事実です。先にNG20っていうから!!どんなもんかと!!!
また、唯七は帰化からの三世ということもあり、「海外の血筋」が入っている部分も含めて橋本くんのような少しエスニックな人を起用していたのかなあと。
忠臣蔵、調べれば調べるほど面白いですね。唯七生涯において兄もまた江戸急進派だったなかで「両親が病になったから兄貴が看病したほうが良い」と脱盟しているのすごいなんかこう……長男がゆえ…みたいなのがありました。
吉良上野介を斬った人でもあるそうで、そのへん意識して他作品も見ていったらまた面白いのだろうなぁ。
今作における江戸急進派の代表格は荒川良々さんの堀部安兵衛なんですけれど、そこでスリーマンセルを組んでの動きについて良く出てくる印象がありました。刀売っているのは流石にお前…お前武士の誇り…っていう部分と「食うためには必要なこと」でもあり、その逼迫としている部分が出ている以上仕方ないのかなともどっちかっていうと江戸より目線でみてました。
すぐ調子に乗って(という言い方はあれですが)「全員分!」っていうあたりが現状の金銭面的部分が把握できていなからこその軽い言い方であるように感じさせました。
ある程度補完しつつ見ながら「こういう人物像である」ことを考えながらどういう人なのかを紐解いた上で見たらまたちょっと違うのかな。
プラスでこういうのしてほしい~!っていうのを言って良いのであればぜひ群像劇だからこそみんなで反応しているとき、引いたときも唯七要素がもっとバリバリあってもいいのかなとは感じました。ともに並んでいるのが堀部安兵衛(荒川さん)だからこそ、そこ3人はバリバリのイケイケの顔芸だってありの「ぱっと見たときにすぐ目につく!」でもあっていいのかな~とか。でもそれをしない「キレイだからこそどんどんだめになっていくところを描きたい」と仰っていたからこその結果のようにも見えるし、映像作品だからこそ、なのかな~とも感じました。
また、決算忠臣蔵に関しては、中村監督による小説版も販売されています。
さらっとまだ読み始めですが、「大石内蔵助」という人についての評価が冒頭で部下たちからどのように見られていたか、とか(昼行灯はさすがにアレだけど)が伝わってきてこちらはこちらで同じ作品をよりコミカル感増して描いている感じがします。そのへんの違いも見ていて楽しいですね。