柑橘パッショナート

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【読書感想文】「え、社内システム全てワンオペしてる私を解雇ですか?」

夏になると読書を進めたくなるのは夏休みにひたすら図書館でお世話になっていた時期があったからかもしれない今日このごろです。といっても「読書好き」と名乗れるほどの愛好家でもなく、ふわっとふらっと「気になった本を気になった形で手にとって見る」というスタイルを貫いているわけですが。

今回はなろう小説でも話題の下城米雪さんによる 「え、社内システムワンオペしている私を解雇ですか?」。

 

ライト層の小説やコミックスってタイトルで結構敬遠しがち(「タイトル長すぎて覚えられない」「もう内容全部言っちゃってるじゃん」派)なのですが、この作品についてはちょうど、当ブログで大変お世話になっている伊於さんがコミカライズされるということを知ったのがきっかけ。

 

 

 

伊於さんのホームページ「クラフトスタジオ」はこちらからどうぞ。

「ホームページに私(柑橘パッショナートのアイキャッチおよびイメージ画像)なくない????」と聞いたら「個人的なお願いは仕事に入らないやろ」といわれて「確かに!!!!!!!!!!」となりました。ごもっともですね。

いつも無理難題いって申し訳ないなと思うのと同時に特徴のあるイラストを作ってもらって頭が上がらない限りです。V6関連でお知り合いになった方なので諸々とお互いダメージが大きいなかですがお互い頑張って生きていこうな…という心情です。

 

ということで、ざっくりと感想を綴りますが、ネタバレ諸々含みますので、ご注意ください。

 

ちなみに書籍化する前にカクヨム小説家になろうでも掲載されているのでそちらから触れるのでもありだと思います。*1

 

 

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お話のあらすじ

社内システムを一人でこなしていた佐藤愛という女性が主人公です。

コスプレをして仕事をこなす彼女は、社長交代を機に解雇を言い渡され退職するところからスタート。

その後、幼馴染の鈴木健太、通称「ケンちゃん」と出会い、プログラミングの塾に務めることに。その名も「真のプログラマ塾」。

胡散臭さしかない名前の塾ですが、彼女自身の持ち味とスキルをいかしやってくる受講生の一人ひとりが影響を受けていく形が感じられます。

 

お話に関して”ストレス社会で頑張る全ての人たちへ。明日がちょっとだけ笑顔になれるお話です。”という言葉の通り、異世界転生要素はなく、現実社会だからこそのつらさしんどさがありながら、「えがお」になれるように前を向くための物語です。

 

ちなみに冒頭シーンは作者の下城米雪さんによってTwitterで公開されています。

 

 

 

ざっくり感想

「タイトルあってるけどあってない」という良い意味で騙された感がありました。

いわゆる佐藤愛という主人公が自分を解雇した会社に対して、ハイパースペックを用いて勧善懲悪のごとく叩き潰すタイプの物語ではなかったので、なろう小説に対して偏見があったなぁと己を恥じました。

システムエンジニアというお仕事について自分は触れたことはない業種ですが、皆さん夜遅くまでやっていらっしゃったりだとか、やれ朝会社の椅子で寝ている姿が発見されるだとか、Twitterで覗いていると「恐ろしい世界だ……」と震えていたので(もちろんそんなことのない会社さんも多く有るとは思いますが)愛のお仕事の大変さをふんわりとしか分からないながらも見ていてお仕事ものというよりも人間ドラマとして受け取れたような気がします。

 

触れやすい世界観と文体

ライトノベルといわれて思いつくものは様々ですが、本作に関しては世界観が現代日本ということもあり、非常に入りやすかったように感じます。

もちろんプログラミングの用語等コードに関して専門外の人間からすると「なんだそれ」というような部分もあったのですが、作中に登場してくる受講生の殆どは「分からない」ことからスタートになるので、主人公である愛がわかりやすく導いてくれています。

基本的な文体としては会話文が多く、かつ地の文に関しては話ごとのキャラクター目線で描かれているのでテンポがよかったです。

一人の視点で絞って進んでいく形もそれはそれで面白いです(相手が何考えているかは汲み取れず「キャラクター」の考えでしか判断ができないという推理部分がありますよね)が、丁度の区切りごとで視点が切り替わっていくからこその良さもあるんだなぁと読みながら鈴木健太、佐藤さん、そして他のキャラクターごとで違ってくる、リレーのようにつながっていく形というのも一つの形として、また会話文もあいまっているのでリズムが刻まれているように見えました。これもまた物語の波と同じように作っている感じもしますね。

新社長のくだりや本筋の描き方の部分になると地の文がまた変わっていくので、感情がアップダウンというよりも文体によって切り替えていくほうがわかりやすいかな、と思いました。いわゆる「神様視点」になるのか、ゲームでいう使用キャラクターの目線になるのかーーみたいな、そんな感じかな、と読みながら感じていました。

 

「二次元ならでは」を凝縮した愛嬌のあるキャラクターたち

主人公である佐藤愛に関しては二次元オタク要素が散りばめられていてフラットな文体特有の軽さに準じたような明るさが感じられました。

プロフィールに乙女ゲーと夢小説が好きと書かれていてどちらも通ったことがある人間としてはああ…となったり、夢小説もオリキャラ派と自分派と俯瞰派と細分化されるもんな……とか乙女ゲームも学園モノ異世界もの以外も結構あったりするもんなあ…とか自分の面倒くさい部分が出て一瞬めちゃくちゃ身構えました。

「少年漫画が好き」だからといって全てが好きな人なのかどうかが違う通り乙女ゲームとくくってもRejetが好きなのかオトメイトが好きなのかネオロマンスなのか、honeybeeが好きなのかコナミが好きなのかメーカーで違うしそこで更に「で、好きな作品は?」ってなっていくのでどうしても……こう…「大丈夫かな」という気持ちがよぎったりしながらページを捲りましたが、乙女ゲームも夢小説もがっつり描かれているわけではなかったので、逆に少しホッとしました(笑)

良い意味でも悪い意味でも彼女は全開にオタクなので「流石にそれはTPOが……」とか社会人になってハラハラする部分もあるのですが(言葉がオタク要素全開すぎるところなど)、立ち上げた事業に対しての真面目さは抜群であるように感じます。

また、コスプレに関してのきっかけなどが描き下ろしで読めたので読んでいた中で「SEって大変だな」と改めてしみじみとしました。

 

プログラミングというものに関しては昨今任天堂がゲームで覚えるプログラミングなどゲーム感覚で楽しめるものや、ディズニーなどもプログラミング教室ゲームを出しているので、いろんな人達の窓口になっているなぁと感じるからこその彼女自身の存在によって、現代社会で縁の下の力持ちがごとく支えていらっしゃるSEさんたちへのスポットとして当てられている面白さもあったように感じられます。

 

リアルには近くにいてほしくない、二次元的なキャラクター要素を散りばめながら、「それはそれとしていいやつだよ」といいたくなる愛嬌さをバランスとっているように感じました。

ちょっとしたワーカーホリックな部分(単純に「好き」だから「面白い」と感じられる要素)なところも含めて決して強要はしていないので、常に楽しそうにしている、情熱を持っているから引っ張られていく、のポジティヴな循環を気づけばしている人物。

作中でどうしても褒めそやされるシーンが多いので(どうしても開発者としての点が多いので)そこは「繰り返されてるなあ」という印象もありますがそこのバランスは今後いろんな登場人物によって変わっていくのかもしれないな~とも。(インフレ起きすぎるとあれだけど、完全一人無双しすぎると個人的には「もっと…もっとこう…」となるので)

 

また、そのほかの登場人物に関してもリアルと乖離しているキャラがメインには多かったかな。いわゆる「乙女ゲー」といわれる部類(いわゆる恋愛シュミレーションゲーム)にいそうな人たちが多かったです。

そういった乙女ゲーおよび恋愛シュミレーションゲームユーザーの人間なので、ついつい「キャラデザ誰ですかね?」ってなっちゃうんですけど(笑)彼らに関するルックスに関しての描写は基本的に愛のオタク心をくすぐる部分の描写として描かれていることが殆どで、彼女を沸き立たせるため&ハイスペイケメンのお仕事部分としての「入りやすさ」を導入していたのかな、と思います。

ツンデレや王子様キャラもいきすぎると扱いが難しいのはゲームやっててつくづく思うので、そういう意味では1章ごとに中心から少しそれるので使い方が程よかったです。

 

ライトノベルだからこそできるキャラクターの個性が多いので、そのへんの「リアルでは~」な部分も全部ひっくるめて、このワンオペ解雇という作品にいるべきピースとしてのハマり方があったんではないでしょうか。メインキャラクターたちがズレた部分(ビジュアル、発言、キャラクター性など様々を踏まえた上でこう表現)があるからこその「ハイスペック」とのバランスを取っています。

また、サブキャラクター、1話ごとにやってくる登場人物がそれに対してリアリティがある、というか「いそう」な人であるおかげで塩梅として丁度よいというか、置いてけぼり感をあまり覚えませんでした。

 

ヒールキャラクターにおける立ち位置

個人的にはヒールになった相手が自滅していく下りについて、相手の企みがどんどん低レベルになっていくのは惜しい(勿論人間的な嫉妬とか汚い部分があるからこそなのですが)なぁとはなりましたが、佐藤さんたちの事業がそれだけ楽しそうだったりどんどんと前にいくからこそなのかもしれませんね。

「ざまぁ」とまではないけれど、結局打ち勝ってしまっている展開になっているので、ケンちゃんとの対峙で毒をはらんでいる部分に、何共言えぬ気持ちではありました。その前での「悪役」という扱いについて考える部分が多かったので…。

勿論佐藤さんのようにはなれないからこそのケンちゃんの判断だともわかるのですが、新社長の行動が少々小物感があったので「そうかなあ」とも思わなくもない。

徹底した悪役ではない人だというのであれば、その部分を描かないと理解しかねるし(現状横暴を極めているので)、そのへんのバランスってやっぱり難しいんだろうなとも思います。会社経営者の部分を鑑みるならプログラミングも勿論ですが経営面としての描きも必要になってくるだろうし、「悪役はいない」という描きでいくからこそ、2章以降の展開についても期待しています。

だからといってヒールを読者が許すとは言っていない、につながっていくのかもしれませんが(笑)そこは佐藤愛という徹頭徹尾の描かれ方があったからこその伏線だと私は考えています。

 

サブキャラクターですと、洙田裕也という未経験ながら夢を持った登場人物に対して心がウッとなりました。

面白おかしく子供部屋おじさんを描くのではなく(そもそも30才はおじさんなのか、という疑問もありますが/先日ネプリーグで10代~20代が感じるおじさんの平均は45~ぐらいだと言っていました)彼自身の内面と社会における価値のジレンマが一番明確であったように読み進めて感じました。

高収入ではないからこその達成できないささやかな願いというのは、昨今の世の中でもあることで、「親孝行したいときには親はなし」なんていう言葉もあるからこその現状を打破したい、でもできないのくだりから佐藤愛に引っ張られるように変わる塾のくだりは見ていて熱いものを感じました。

佐藤愛が与えたものはスキルとかスペックとか知識とかだけではなく、ほんのちょっとの踏み出す力みたいなもの。おとなになったからこそ出来ないことは多いですが、失敗して人生負け組といわれる地位から「諦めない」というように引っ張り上げた流れは、キャリアアップを考えた時にどういう道に進むのか、と悩んだ時に感じた「どうにかしたいけど、どうしたらいいのか分からない」への背中を押してくれているように感じました。

この小説に関して、メインターゲット層10代~20代だと思うのですが、今後の人生を考えて、己の立ち位置を鑑みていきたいもの、なりたいものに悩んでいる部分に「どうにかしたいなあ」への「どうにかしたっていいじゃん」「やったっていいじゃん」みたいな明るさで照らしてくれる章でした。

この章での転職エージェントの熱量がすごいなと。洙田さんは非常に転職エージェントに恵まれているな~~とも感じたので彼自身の魅力として進んでいった流れ(大学の恩師もしかりですね)は非常に自分のお気に入り部分でもあります。

 

インターネットで読むか本で読むか

書籍化されていたので書籍から手を出しましたが、ネットからだとそれこそ改行などで作者の方がネット小説独特のテンポなどを生み出しているので「それはそれでこれはこれ」という感覚で読めるんじゃないかなと思います。

 

力強く訴求してくる作品、というよりも、少し暗い所を歩いていた中で、懐中電灯が照らされて道筋が見えてくれる作品であったように自分は捉えました。

あくまでも補助輪的な立ち位置で、サブキャラクターたちへの道を照らしたとしても進むのは彼らにすぎない。ハイスペックなキャラクターたちだけれど、主役は佐藤愛だけれど、「進む」のはサブキャラがメインというのが印象的でした。

 

コミカライズしたときに、地の文で感じたコミカルさやキャラクターの表情がどう変わってくるのかも楽しみです。

プログラミングやってみようかな~とふわっとゆるゆるな気持ちでちょっと思えたりしたような小説でした。小説、2巻も販売されるとのことです*2のでどう変わるのか気になるところですね。

 

小説での好みは結構がっつり分かれるかな、とは思います。

よくも悪くもラノベっぽさはあるので、好きな人は好きだけど逆もまたしかりかな、とも。自分がそれなりに社会経験がある人間だからこそ「年齢」や「性別」「パワハラ」「ロジハラ」などを見て「もやもやする」ところと「わからなくもない」という二律背反部分がある作品でした。社会の風というのはどうしても厳しいものですよね。

それらを全部含めても「それでもやっぱり、何だか少しだけ笑顔になれた」というような人々がちょっとだけ変わっていく、踏み出す勇気があるような物語でした。

雑感ですが、感想としては以上!あまり手を出さないジャンルだったので非常に興味深かったです。

 

余談ですが、作中に出てくるメガネを見た時に丁度仮面ライダーで文字も出てくる眼鏡、通称「ZAIAスペック」というものが仮面ライダーゼロワンにて出てきたので(ZAIAスペックは基本眼鏡と併用するものなので…)「あれみたいなもんかな」と思いながら見ていました。思えばあれもIT関連のお話でしたね。

p-bandai.jp

 

ということで、小説・コミカライズ楽しみにしています。

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