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「ワーニャ伯父さん」を観劇してきました/耐えて、耐えて、耐えた先に見えるかすかな光を求めて

先日新国立劇場で「ワーニャ伯父さん」を観劇してきました。

月に一度はお芝居に触れる機会がほしいなあと思っていた矢先の「暇なら行こうよ」という声をかけてもらって、ホイホイのっかって見てきた感じです。

 

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ワーニャ伯父さんはチェーホフの戯曲だよ

 

ワーニャ伯父さん概要

ロシアのアントン・チェーホフによる戯曲です。

 『かもめ』、『三人姉妹』、『桜の園』とあわせてチェーホフの四大戯曲、なんても言われています。

 ちなみに副題は「田園生活の情景」。一番最初に聞いたときに田園都市線……三軒茶屋二子玉川…中央林間…?とか思った残念都民は私です。最早何も関係していない。ニコタマに美味しいお店を友人に紹介されて足を運びたいんですがなかなかチャンスがない。マヨルカのエンサイマーダは美味しいですよね。最近割りと色んな所で食べられるけれど。違うそういう話じゃない。

この作品は1889年に書かれた『森の精』の改作だそうで、森の精との共通項も非常に多いそうです。なお私は原作は「ワーニャ伯父さん」しか読んでないのでわからないですが。しかも詠んだの多分中学生ぐらいの頃なので記憶がほとんど「しんどい」しかなかったのを覚えています。なにこれしんどい。

 

チェーホフが与えた影響について

ちょっと調べていたらネオロマンサーっていうかコルダユーザーにはおなじみラセルゲイ・ラフマニノフがとても影響を受けていたそうです。ロシアだもんね、そりゃそうか。コルダ3的に言えばロシア……うっ…天音…。

ラフマニノフチャイコフスキーを崇拝していたわけですが、それと同じぐらいにチェーホフも尊敬していたようで、1893年チェーホフの短篇小説『旅中』に着想を得た幻想曲『岩』作品7を作曲、1898年にはシャリャーピンとの演奏旅行で訪れたヤルタでチェーホフと出会い、直接の親交を結んだといいます。

初対面の際にチェーホフラフマニノフにかけた「あなたは大物になります」という言葉を、彼は生涯の宝物とした、とも言われています。

まぁ実際自分がね、例えば超崇拝している人に「お前ビッグになるよ、頑張ってな」って言われたらね、ふえるぞハート!燃えたぎるほどヒート!*1ですよね。そりゃそうだわ。

チェーホフの没後の1906年には戯曲『ワーニャ伯父さん』のセリフを元に歌曲「わたしたち一息つけるわ」作品26の3を作曲したとも言われています。それぐらい、この最後の一言ってとっても重要なんですよね。

 

ワーニャ伯父さんの舞台について

今回はシス・カンパニーチェーホフの企画第三弾だそうです。

公式ホームページは此方から。

www.siscompany.com

シス・カンパニーのやっていることってなんぞ?と微塵も理解していないまま、確かこれはDEATHTRAPを見に行った際に「自分はワーニャ伯父さん見たいんだよねえ」と一緒に観劇した人と橋本良亮氏について話していたにも関わらず、そんな「みたいもの」を語っていたときに偶々見つけて「えっ宮沢りえ。えっ黒木華。えっ見たい」っていう流れでトントン拍子で見に行くことになったのが今回の次第。超勢いだった。

 

本企画は、上演台本、キャスティング、劇場等がすべて理想的に合致したところで、上演を決定させる不定期企画。

実際に、チェーホフが発表した順番を追うことよりも、まずは上演条件の理想を優先した。

シス・カンパニー×KERA×チェーホフ四大戯曲上演シリーズ 上演記録より)

とある通り、今回選ばれた新国立劇場のステージも、宮沢りえ黒木華も、全部含めての「どうだこのやろう」というのを見せつけてくれる舞台であったと思います。

 

ちなみに第一回は『かもめ』、2013年9月に東京:Bunkamuraシアターコクーン、10月に大阪:シアターBRAVA!でやられたそうです。

出演は生田斗真蒼井優野村萬斎大竹しのぶ山崎一・梅沢昌代・中山祐一朗西尾まり浅野和之小野武彦・山森大輔・中川浩行・長友郁真・頼経明子

何それ見たかった。

 

2回目は『三人姉妹』。

余貴美子宮沢りえ蒼井優山崎一・神野三鈴・段田安則堤真一
今井朋彦近藤公園遠山俊也・猪俣三四郎・塚本幸男・福井裕子・赤堀雅秋がキャスティング。

 

個人的には桜の園が見たいんですけど、どうやら1番ラストには桜の園を持ってきてくれるようで。2年おきぐらいにやってくれているようなので、超楽しみにしています。見たい。誰が来るんだ。是非見たい。

 

「ワーニャ伯父さん」のキャスト・スタッフ

段田安則 宮沢りえ 黒木華 山崎一
横田栄司 水野あや 遠山俊也 立石涼子 小野武彦 がキャスティング。

ギター演奏に伏見蛍。

そもそも今回の上演台本と演出を担当されたのは ケラリーノ・サンドロヴィッチ氏で、そうですね、あの、ご存知の人も多いでしょう。

「室温ー夜の音楽」の人です。

 

演技者。 1stシリーズ Vol.2 (初回限定版) [DVD]

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 覚えている人は多分覚えていると思いますし、私の心には大分結構残っているこちら。

トニセンこと坂本昌行氏、長野博氏、井ノ原快彦氏の演じた「室温ー夜の音楽」。

ともさかりえちゃんがマジで怪演だったのと坂本くんのおまわりさんマジで目がいってるお芝居がすごいなと思ったばかりです。後超小物井ノ原さんのお芝居も好きです。長野くんのラストもいい。少年Cしんどい。

何も考えずに「見たい!」ということで見に行ったわけですが、こういうところでご縁があるとはな、と思いました。世の中わからないものですね。

ちなみに原作はこちら。

 

室温―夜の音楽

室温―夜の音楽

 

 最初に表紙見たときに荒木飛呂彦さんが描かれたのかと思ってドギっとしたのは内緒(笑)

 

「ワーニャ伯父さん」ストーリー 

大学教授を引退したセレブリャコーフ(山崎一)は、都会暮らしに別れを告げ、若い後妻エレーナ(宮沢りえ)と共に、 先妻の親から受け継いだ田舎屋敷に戻ってきた。

先妻の兄であるワーニャ(段田安則)は、学者であるセレブリャコーフ を長年崇拝し、彼の支えとなるために、25年にも渡って領地を切り盛りしながら、教授と先妻との娘ソーニャ(黒木華)、 母ヴォイニーツカヤ夫人(立石涼子)、隣人であった没落貴族テレーギン(小野武彦)と共につましく暮らしてきた。


長年、尊敬するセレブリャコーフに尽くすことに疑いを抱いたことのなかったワーニャだったが、毎日共に暮らすようになった目の前の人物は、いつも体調も機嫌も悪く、尊大で身勝手な態度で人を困らせるただの年寄り・・・。

また、その妻エレーナも、夫への不満と年の近い義理の娘との折り合いの悪さも手伝い、田舎暮らしの中、このまま 若さも可能性も失われていく不安に憂鬱な日々を送っている。

この夫妻が都会から屋敷に戻ってからというもの、 人々の田舎暮らしのリズムは一変。

屋敷には常に重苦しい空気が立ち込めるようになっていた。何よりもワーニャは、 人生の大半を捧げきた相手が、単なる俗物だった事実に虚しさと絶望を感じ、勤勉だった彼の生活は激変してしまう。今度は、事ある毎に、セレブリャコーフに毒づき、母たちにたしなめられるが、その憤りは収まることを知らない・・・。

この屋敷に集まる人物の中に、近隣で、唯一の医師として多忙を極めるアーストロフ(横田栄司)がいた。

彼は貧しい 農民への医療に従事する傍ら、森林の環境保護を訴える活動家として、地域への献身を続けてきた。しかし、やはり 田舎暮らしに鬱積した思いを抱き、診療を放り出して屋敷に入り浸り、ワーニャと酒を酌み交わすことも多々。

そんな鬱屈した思いから、エレーナに対し熱い思いを抱いている。そして、これまでの長年の献身に絶望している ワーニャも同じく、エレーナに思いを募らせ言い寄るが、エレーナに相手にされるはずもない。

そして、一方、エレーナに恋心を抱くアーストロフを、ソーニャの熱い眼差しが追いかけるのだが、相手にもされない。 それぞれの恋のベクトルは、決して互いを向き合うことなくすれ違い、それぞれの虚しい恋心だけが募っていく・・・。

古い屋敷に立ち込めるのは、失った過去への後悔と未来への言い知れぬ不安。人々はどこへ向かうのか・・・。
そんな中、元教授セレブリャコーフが皆に告げたある考えに、ついにワーニャは激昂し、そして・・・。

公式ホームページより引用。

もうなんていうかお読みいただければわかるけれど「しんど!!!」と叫びたくなるこのなんていうか皆人間臭い。きれいな人間というよりも地べた這いずっているワーニャ伯父さんになんでこんな苦行を神は与えるんや…鬼かチェーホフ…ってなるようなかんじ。

その作品の時代背景を読み解いていくとほんとさあ、もうさあ、なんていうかさあああっていうきもちにしかならない。

ワーニャおじさん耐えるのよ…耐えるのよ……;;

観劇した感想

この不条理感たまらなくしんどい。どうやったって帰ってこない季節を振り返りながら、ただ粛々と生きていくしか無い彼らがしんどい。

ワーニャ伯父さんは妹を教授に嫁に出して、田園の管理人になって粛々と生きて、それこそ自分の生活費すら削って彼に仕送りしてきたのに教授から引退して金回りが悪くなってこっちに戻ってきたらいろんなものが見えてしまってという葛藤がしんどい。

搾取するだけしまくって、ご高説をたれるわりに「本当はそうじゃないこと」を知っている、頭のいい人。年齢が年齢のせいでもう、若々しく「何でもできた」頃とは違って、「これしかない」になってしまったのが余りにも不条理。余りにもしんどい。そりゃね、あの、ロシア暴動起きるよね革命起きるよね……っていうチェーホフの世界観よくよく表しているように思えました。

そして個人的には私はびっくりするぐらいドクトルが好きじゃないんですが(笑)

演出としてギター演奏の伏見さんがすごい感情を表しててよかったなあ。幕間でぎゅいんと落ちていくかんじがいい。

後ワーニャ役の段田さんのうだつの上がらな感じ、朴訥としたかんじもとてもいいです。宮沢りえさんの華やかさとのギャップというか。

何よりこの作品におけるヒロインといえるヒロインはエレーナとソーニャになるわけですが、本当に対比的で、美人で蠱惑的、田舎の鬱屈とした感じに窮屈さを感じるエレーナと、粛々としているソーニャ。

エレーナの心は満たされているようで満たされていなくて、ソーニャもほそぼそとした世界の中で、密かに持っていた憧れのドクトルへの恋心は満たされなくて。ああもう何これしんどい、ソーニャなにこれつらい。みたいな。

心を重ねるのは必然的に一夜の夢を持つ火遊び的なエレーナよりも着実に積み重ねていくソーニャを見てしまうのですが、ソーニャの外見は決して美人じゃないのに、朴訥としながらつい重ねていくのが……もうなんだ…黒木華の芝居力がただただ凄いというか。一番最後の机を囲んで会計をして、でもドクトルを見送って、でも、彼女は「戻る」という選択をして、激昂したワーニャをなだめて、まるで自分に言い聞かせるように「耐えろ」といい、「耐えきった後に、死ぬ時、幻想を見る」というソーニャの言葉がすごく刺さります。

どうやったって貧富の差はあって、どうやったって彼らは搾取される側で、老いに勝てないとは言え親である教授たちは都会でいきていくわけで、そんな彼らに仕送りを続け、死ぬまで本当に爪さえ燃やして、こつこつ、こつこつと生きていく田舎の彼らが切なくてしんどくて…。黒木華の瞳がゆらゆらゆれるたびに心潰れるしドクトル貴様ーーーー!!!!(※八つ当たりです)っていいたくなるしで、もうなんか黒木華すごい。本当凄い。

安寧はこの世界にはなくて、だからこそこつこつ積み重ねて、ようやく休めるときに自分を慰められる、ようやく休める、っていう。っていうのが、あまりにもしんどくてあまりにも愛しくて、そのシーンに於ける光の当て方と表情と、音のない世界が切なかったです。電卓を叩く音。彼らの静かな生活に戻ってきたのにどこか空虚なところ。

いい方悪ければバッドエンドにも見えるし、それでも彼らは生きていくしかないのがまたね…。一番最初の森の精ではワーニャ伯父さん自殺したというし、ソーニャの恋は実ったと言うけれど、けれどある意味これがリアルだよなあ……と言いようのないその次代をいきたわけでもない私は見ながら見終わった後にもうなんか……なんだ…すごいなあもう…しかいえませんでした。

小野武彦さんや立石涼子さん、遠山さんのワンポイントワンポイントで随所随所で印象に残る演技はさすがだなと思いました。小野さん私踊る大捜査線の課長大好きだから正直お芝居で見れて超嬉しかったです。秋の犯罪撲滅スペシャルの課長が好きです。

ばあやに関しては決してすべてを悟っているわけではなくて、けれども諦めているわけでもなくて、平穏を求めていて、単調に、けれども老人の「教授」を母のように、けれど甘やかすのに、どこか冷ややかなのが面白い演出だなと思いました。

もともと戯曲だからこそ台詞があって、それをどう紐解いてアレンジしていくのかって演出次第なのだろうなという認識なのですが演劇に関して突出して詳しいわけでもないマンとしては、非常に見応えが有りました。

 

いやあ、なんていうか、ドスッと心をえぐってくる、見終わった後に体を思いきり重りつけられて海にドボンしたような、深海にいるような気分になりました。見てて明るいものではないですが、だからこそ光る芝居が見られてよかったし、その一筋の光を必死こいてこれからもいきていくのが、素敵だなあ、と思うばかりです。良いお芝居でした。

 

natalie.mu

此方にある通り「チェーホフが苦手な人ほど見てほしい」というのも納得がいきました。またシス・カンパニーのお芝居、見てみたいです!