Kiramuneという声優さんたちが歌うレーベルを皆さんご存知でしょうか。
知ってる人は「そんなのあるのか」と思ってくれれば幸いです。私が好きな声優さんたちも出ていらっしゃいます。
でそんなKiramuneなのですが年に一度、みんなが集まって歌って踊って楽しむ通称「キラフェス」(ジャニーズカウントダウンとか、超英雄祭的な)と、声優という本業をいかした「リーディングライブ」が行われます。
ということで、今回はその「リーディングライブ」に足を運んできました。
まったりと雑記になります。後まぁいつもどおりネタバレはオンパレードです。
一応更新が観劇後、芝居後のネタバレ解禁後なのでセーフだと思いますが、ネタバレ回避したい方は避けて下さい。
そもそもの話…
Kiramuneとはそもそも何かっていう話なのですが、
Kiramune(キラミューン)レーベルとは、表現の可能性にチャレンジする男性声優が参加するレーベルです。
Kiramuneとは「きらきら」「コミュニティ」「ミュージック」という単語をあわせた造語で、音を通じ、ユーザーと様々なコミュニケーションを図り、映像・音楽業界を更に盛り上げていく輪を広げようという意味をこめています。
と、公式サイトにあるように(ちなみにこの「きらきら」「コミュニティ」「ミュージック」について、Kiramuneの紹介をかつて木村良平・代永翼・江口拓也のキラキラビートで話していた思い出がある。Trignalになる前の話ですね)、いろんなことを挑戦しようとするかんじです。
で、みんなが集まっている「キラフェス」のコンサートではなんかすごいキラキラというかジャニーズファンの人が好きそうな演出してるなーって思う箇所がたくさんあったりとかします。楽しそうで何よりです。
こちらがそのKiramune Music Festival通称キラフェスの様子。
代替わりし、色んな人が入ってきて、大所帯になりました。
Kiramuneリーディングライブについて
で、「Kiramune」というとやはり「キラキラ」「Music」「コミュニティ」ということもあり音楽要素が強くアイドル感も大いにあるのですが、それに対しての「いや待てでもこの人達声優さんだから。こういう事もできるから」のチャレンジの場と個人的に解釈しています。
毎年KiramuneレーベルからCDを出している声優さんの他にゲスト声優を招き、既存作品やオリジナル作品に挑戦する「リーディング」とともに「ライブ」であることも含め《視覚的》にも楽しめることを重視したイベントです。
今回は「カラーズ」というオリジナル作品に挑戦しました。AチームとBチームに分かれて「同じ作品」を「別の声優」が演じるとどうなるのか、ということを見られるイベントでもあります。この技法でいうとポプテピピックもそうですね。同じセリフをどんなふうに他の人が言ったら違うか、っていう。
カラーズ
作品内容
天才プログラマーの灰原が自殺した。
不審に思った親友の緑川が調査に乗り出す。
背景に、口座番号さえあれば金を盗み取ることができる禁断のスキミングソフト「ドリームキャッチャー」が絡んでいることを知る。
詐欺師たちと警察によるソフト争奪戦に巻き込まれ、事態は二転三転。
様々な欲望が交錯試合互いが疑心暗鬼となっていく中、やがて詐欺師たちの衝撃的な目的が明らかとなっていく。(公式ホームページより引用)
物語は「灰原」という男が死んだことからはじまります。
彼が死んだことに対して「嘘だ」と疑っている親友の緑川という青年。その青年が調査を勧めている中で黒部という男と知り合い、青柳、赤井、黄金崎、シラサワという男たちと知り合う。さまざまな点が結びつき、調べていく中で「知っていく」物語です。
キャストとスタッフ
物語の主人公とも言える”緑川”はAチームに柿原徹也氏、Bチームに木村良平氏。
詐欺グループのリーダーでプロの詐欺師、内面に激情を抱えている男・”青柳”をAチーム吉野裕行氏、Bチーム神谷浩史氏。
プログラミングが得意なハッカーで少々おちょくった物言いが特徴の”黄金崎”にAチーム代永翼氏、Bチーム岡本信彦氏。
医者でもあり、物事を俯瞰して見ており緑川にも懐疑的な”赤井”はAチーム野島健児氏、Bチーム江口拓也氏。
詐欺グループ「カラーズ」のボスである腹の底が読めない男「シラサワ」をAチーム田中秀幸氏、Bチーム井上和彦氏。
警察ながらもその危うさを腹に抱えた男・黒部をAチーム浪川大輔氏、Bチーム三木眞一郎氏。
脚本は中尾 浩之 (@nakao_universe) 氏。
演出に伊藤 マサミ (@masami820703) 氏。
音楽は島秀行(@Studio_Saari)氏。
スーパーバイザーに水島 精二 (@oichanmusi)氏という構成です。
場所は舞浜にあるアンフィシアター。
Mマスのコンサートが行われたり、2.5のお芝居をされている印象が強い。声優さんが多く使っているイメージ。
私が入ったのはBチームの初日になります。
なので、感想としてあくまでも「Bチーム」を見た上での感想です。
感想
作品内容について
最初に思ったのは、概要をさらっと読んだだけでは灰原に対しての殺害をした人間は黒部ではなく詐欺グループの中の人間と思わせる3段仕組みになっているのかな、でした。
それこそ「大どんでん返しがやばい」という内容がちらりと目についたので「つまりそれって”そして誰もいなくなった”方式で緑川が犯人という説も有りうるのでは?」でした。
内容を開けてみると、結構ストレートに作った形で、『クロサギ』とかよりも『コンフィデンスマンJP』よりかなってかんじ。おそらくはイメージとしてオーシャンズシリーズを意識しているのではないかな、という印象を受けました。
なので、「推理して作品を追う」というよりも、その作品の華やかさというか、ゴージャスさを追いかけスリル感を味わうべき作品であったように見受けます。
キャラクターにおいてですが、一番主軸というか「語り手」でもあり物語においての鍵を握っていた緑川の印象が少々薄いのが残念。個性が強い人間たちの中で”普通のようで普通じゃない”という青年であるのが鍵だと思うのですが、今回見ていたシナリオの中では、危うさ等はなく安定感が強い印象です。頭のキレる人でもあるのですが、「やるなあ」という見直したシーンが薄く感じられました。
青柳という男についてですが、彼はこの作品における「彼のストーリー」要素も孕んでいるのですが点と点が結びつくのに時間を有しているためなのか、それとも物語として語られている”だけ”なのか分からないのですがちょっと掘り下げが薄くて、キャラクター的に好きな予感がする真面目青年枠なのでもったいないなーっていうのが個人的印象。
黄金崎ですが、今回の作品においてのトリックスターとして、印象に一番残ったキャラクターとなりました。「金に頓着しない」という要素は作中ではちょっとわかりにくかったのですが、飄々としていて表現の仕方次第では陰キャになりそうなものを岡本信彦氏のお芝居の仕方で「明るいが全く中身が見えない、何なら目が笑っていなさそう」という印象になりました。アニメでやったらこのキャラクター目が死んでいるかもしくは糸目キャラな気がする。
赤井については、作品で疑いにかかっている、俯瞰しているポジションなのですが、結局今一歩踏み出せないという要素が強く「君はいうだけ言って引っ掻き回しているのでは……?」という疑問がありました。キャラクターとして青柳に対して彼に全部を任せて大丈夫なのかという気持ちと、彼の重要な人物を看取った人間でもあるという部分があるので、そこが掘り下げられていたらまた印象も変わったかな。ところで「変装の達人」っていうの私には分からなかったのですが、その辺ってウエイターやボーイになっていたということでいいんでしょうかね……?
シラサワについてですが、まぁこういう作品なのでそうだろうな、というのが第一印象。芝居の中でおかしいと思える部分をわざと演出の中で散りばめているように見られたので、見ている側としては分かるように作っていたと思います。腹の中がまったく見えない”狸爺”というように作りたかったのかな。なので、極論言うと彼のキャラクターがどこまでが《本当》で、どこまでが《嘘》なのかアヤフヤでも別にそれはそれで「キャラクター」として成り立っていればいいのかなと思います。緑川との対話も詐欺としてなら嘘だったのかもしれない。何が嘘で何が本当なのか。それは誰にもわからない。というところでしょうか。
黒部についてですが、妻を失ったことについててっきり私は彼が殺めたのかなと推理していたのですが(保険金的な)そういう描写がなかったので単純に死んだのか、それとも彼女が死んだことで彼の人生が狂ったのか、最初からサイコパスだったのか…という掘り下げが足りなかったので「この人はどう考えているのか」という部分が掌握しきれず、ただ単純なサイコパスとして掘り下げていったのかなーという意味でも見ていて結構探り探りでした。悪なら貫いて悪でも私は全然有りだと思います。幻想水滸伝2のルカ様とか、後は黒子のバスケの花宮とか貫いている悪役だからこその美学みたいなものもあると思いますしね。だからこそ、黒部にも「どこまでいってもこいつはクズの極み」だっていうのがもっと見られたら良かったかなって思います。
ちょっと否定的な部分を書きましたが、これはおそらく「尺が足りない」から生じたことなのだろうなとも。よくもわるくも2時間弱の芝居なので、その分で掘り下げるのにはいささか難しい作品であったように感じられます。
ただ一方で、だからこそ焦点を絞ってやってみてほしかった部分もあります。群像劇要素を取り入れるなら、じゃあ幅を広げすぎずコンパクトにやってもいいかな、とも。
Kiramune presentsなので、誰が主役というよりも「みんなが主役」の群像劇だからですかね。全体的に広げすぎて、もうちょっとキャラクター一人ひとりの深い部分を見てみたかったかな、というのが作品内容の意見です。
ライト演出とかは見ていて非常にわかりやすかったです。今誰が出ているのか。ある意味で彼らが「声優」であり、立ち絵がないからなのでしょうけれど。個人的にはライト演出で「今、誰と誰がいる」のが分かるなら、別の人物を彼らが演じている、声優ならではの複数の様相もあっても面白かったのではないかなとか思わなくもないですが。
お芝居という点での感想
三木眞一郎さんの生のお芝居を久しぶりに拝見したのですが、集中力がすごいなと改めて感じました。
普段どちらかといえば兄貴分やアカシャそれはアカシャ*1のイメージが強いのですが、考えてみれば「腹の中が全く見えないキャラクター」も非常にうまいんですよね。
良い意味で「こいつやべえ」というべきか。ゲスというか。ヒヒヒと引きつったように楽しそうに笑って朗々としゃべる姿にゾワリ……と言いようのない「薄気味悪さ」を感じられるお芝居で見ていて楽しかったです。
カーテンコールで「ライブという割に自分はひたすら喋っていた印象だ」というお話をされていましたが、芝居においての集中力がありステージにいらっしゃる姿を見て「すごいなー」とただひたすら思うという。ヴァイスクロイツの頃とはぜんぜん違う三木さんでした。
また、Kiramuneの方々の朗読劇も久しぶりに拝見しましたが、アドリブで笑いを持ってこさせようとするのが印象的でした。緑川を演じる木村さんが「そうだぞー!(棒)」というお芝居はわざとなのか台本なのかちょっと分からないのですが、そこで笑いが起きていたのでスリル/サスペンス+コメディ作品という要素が結構強くする部分が彼ら声優さんに投げられているのかな、と。
中央から黄金崎と赤井が上がってくる部分も即興でなにかやってください、というお話があると岡本さんか江口さんがお話されていたので。そういう意味でも「声優さんだけどそういう描写を作る」というのは大変だなと思います。
アドリブの有り/無しに関しては作品の傾向によって全く違うと思うので、「全くのアドリブ一切禁止のガッチガッチのお芝居」というのも彼らの芝居で見てみたさもある。
劇団四季とかはアドリブ一切禁止で有名だったはず。宝塚でもアドリブが許容されているパターンと許容されていないパターンがあると聞いているので、そういった意味でも一切笑いを取りに来ないでやってみるお芝居というのも見てみたいと思えました。
今回のお芝居に関しては「アドリブがあり」なお芝居であったため、結構随所にいろんなアドリブがポロポロあるように感じられました。多分そのお芝居お芝居で全く違うのでしょう。知ってる、ネオロマンスでアドリブ三昧なのよく見た!(笑)
また、ライブビューイングがあるということでカメラを使った演出に対してのやり方はある意味で「Kiramuneレーベル」だからこそでしょう。
声優さんの朗読シーンというよりもアイドルのMCにも似た類のような印象を受けました。
それが良いととるのかどうかって言われると、「リーディングライブ」というカテゴリ内で見るのか「Kiramune」というカテゴリで見るのかで意見が分かれるのだろうと推察いたしますが、「Kiramuneレーベルだから!」といわれると、こういう文化の一つ。それこそ彼らの3本柱である”キラキラ”に該当する部分になるのではないかな、と。
ただまぁ、個人的にはどうせやるなら作品の展開にあったものであってほしいな、っていう風には思います。
ただキャーキャー言われるためにやるよりも折角物語の世界に入っているので、物語に適した、物語の世界に入りながら「こういうこともできます」っていうのが見られたら引きずり戻されないで済むので良いな、と。
また、ステージの上に背景画像とともに場面展開の文字が出てきていて、それがすごく…個人的には「すごく…逆転裁判とかで見るやつ……」ってなりました(笑)
ゲーム感が強いというか、別になくても音と言葉の表現でできたんじゃないかなあとか思ったのですが、あれは視覚的にもっとわかりやすく分かりやすく、ということを意識した結果だったのかなあとかも考えているのですが…。
黒子の方々の演出に関しては動いたりアクロバットをしたりと結構バタバタ忙しそうでやることが多いなと思いました。あのライトの持ち方見覚えがあるぞ…!!と思ったらテロップ流れてきて、アンフィシアターでこういった演出見ることが結構あるなーとも思ったり。
見ていて思ったのはAチームの芝居とどう違うのかというその「違い」を見てみたくなったということ。
ホンが同じであっても、例えば同じ青柳であったとしても声のトーン、芝居するセリフは全く違う「青柳」になるわけで、そういった意味で、規律を重んじる、どこか神経質な部分を孕んでいそうな神谷浩史氏の演じた青柳と、吉野裕行氏の演じる青柳は何が違うのだろう?とか。
赤井に関して言えば、野島健児さんの喋り方は宜野座(PSYCHO-PASS)のようになるのか、それとも明智光秀(下天の華)よりになるのか、とか。
シラサワなら井上和彦氏はトーンを落としたときの極道感はどちらかといえば洋風要素が強かったですが、田中秀幸氏はどちらかというと私は声のトーンのイメージが「狸爺」というより「狐」的な印象があるので、どのように変えてくるのかな?という興味もあります。腹に何かを抱えていて全くわからない。でもだからこそ、声音でお互い探っていく。同じシラサワでも全く異なっているのではないでしょうか。
二面性の強い黒部という男を浪川大輔さんがやるとき、表面上はキラキラ爽やか王子様(乙女ゲー等でもよく演じていらっしゃる”好青年”)だろうけれど裏面になったときどうされるのか、とか。
そういった”違い”を楽しめるお芝居かと。視覚的に見てみると彼らが台本に目を通し、息継ぎをし、声だけではない部分で芝居をするという表情を汲み取っていける貴重なものでした。
声優さんの作品イベントだと結構フリーダムになってしまいがちなアドリブがぶっこまれることが多いだけに「カラーズ」がどういう作品として全くわからない”オリジナル”だからこそ主張したい部分、ニュアンスみたいなものを探り探りこちらも聞いて、視覚的にも情報を得て考える機会があったように感じられます。
音楽に関して言うと最初COWBOY BEBOPのTank!と同じくスウィング調なものだったので、ビバップやスウィングが好きな人間である自分にとってはリズミカルに楽しめた気がします。アバンが全体において結構長く感じられただけに切り替えとして大きくドーンと変えたのだなって印象。
全体を通してみて
これもまた一つの表現であると思います。良いのか/悪いのかをおいておくとして、「キラキラ」「ミュージック」「コミュニティ」であるKiramuneが「声優が行う一つのコミュニティとしての場所の提供」であり、この「声優業」であるからこそのリーディングというのは普段声優である一方で「kiramuneレーベル」の音楽要素に触れることが多い彼らの「生で見て、生で感じられる」ものの一つとしての表現でこれからも続けてみてもらいたい一つだと思います。
ガッチガッチのサスペンスとか、めちゃくちゃ完成度の高いホラーとか、完全オリジナルな分声優だからできる、また「Kiramuneでしか出来ない」ものとかあったらいいなと願うばかりです。
ということで最後はCONNECTのめちゃくちゃ好きなSay Helloをご紹介。ありがとうの魔法もCONVERSATION!!も大好きなのでとりあえず言いたい。CONNECTはいいぞ。