原作を以前から途中まで(2年になって後輩引き連れるところあたりまで)読んでいたのですがこのたび映画化ということで「わーいじゃあ見てこよ」という軽いノリで見てきました。
キャストに惹かれたのも大いに有りますが少女漫画からの実写において青臭い・青春モノとして個人的には好きな漫画だったので素直に嬉しかったです。
あらすじ
吹奏楽の名門・白翔高校に入学したトランペット初心者の小野つばさ。
全国大会を目指すレベルの高い練習についていけず、何度も挫折しそうになる。そんなつばさを勇気づけてくれる、クラスメートで野球部員の山田大介。
お互い夢に向かって励まし合うふたりは、ある「約束」をかわす。いつの間にかつばさには、大介へのほのかな想いが芽生えていた。
1年生の夏、地区予選の決勝まで勝ち進んだ野球部を吹奏楽部が応援。ところが途中出場した大介のミスで敗退。グラウンドで立ち尽くす大介のために、つばさは一人でトランペットを吹いてしまい、謹慎処分となる。
心配して訪ねて来た大介への想いを抑えきれずにつばさは大介に告白するが、フラれてしまう。大介は、仲間の夢を潰してしまった自分が許せないでいた。
ふたりは“両片想い”のままそれぞれの夢を追いかけ、そして、最後の夏が来る―。つばさと大介の恋の行方は?そしてふたりの夢のたどりつく先は?
(公式ホームページ参照)
スタッフ・キャスト
監督 三木孝浩
原作 「青空エール」河原和音(集英社マーガレットコミックス刊)
脚本 持地佑季子
音楽 林ゆうき
主題歌 whiteeeen「キセキ~未来へ~」(UNIVERSAL J)
出演 土屋太鳳 竹内涼真 葉山奨之 堀井新太 小島藤子 松井愛莉 平 祐奈 山田裕貴/志田未来 上野樹里
感想
最初サイトであらすじを見た時にはすごいびっくりしました。えっ大分ネタバレしてるけど大丈夫?!!。そして大分駆け足じゃないの?!とも。
元々つばさは「応援がしたい」から吹奏楽に入っている子です。初心者で一生懸命でわからないことだらけの中名門校の戸を叩くような存在。
大介君はこれまた出来る子でタッパがあってキャッチャーとしてぐんぐんと伸びている子ですね。
そんな一見すると「ただただ青臭い二人がただただ甘酸っぱいだけ」の物語になるわけですが、浮足立ったらしっぺ返しくらっていたり、「駄目なことは駄目である」ということを作中で明確に言っている、その上で「部活動」に対して熱意を持つというのが個人的にこの作品の魅力だと思います。
原作を途中までとはいえ既読済の作品だったので「この作品は展開どうするんだろう」という部分が多々ありました。時間を詰め込みまくったらそれはそれで描写大変だろうし、何より「時間を掛けてお互いに鼓舞し合い、お互いに頑張っていく」のがこの作品の最大の魅力でもあると思っていたためです。
三木監督といえばアオハライドはじめ「青春モノ」「少女漫画もの」の監督することが多いわけですが今回もまたタイトルにあった「青空」の描写がとても綺麗に描かれているなあと思いました。
個人的に高校野球の吹奏楽って苦行かな!?って言いたくなるぐらい大変だと思うんですが(ついこの前ニュースになってましたね)、それでも「これをしたい」と頑張っている子たちは美しいと思いました。
頑張る子は美しい。まさにその通りだなーとか。
役者さんについて
土屋太鳳さんは度々いろんな作品でお見かけすることが多いわけですが最初「つばさ=土屋太鳳さんかあ…」とプラスかマイナスかでいえば後者だったわけですが(イメージと違ったという意味でね)つばさの少々引っ込み思案だったり困惑しながらもどうにかこうにか皆に付いていこうとしたりとか、気持ちの動き方は表情や目で取れる方で、だから彼女を起用されたのかな~とか思いました。
竹内涼真くんに関しては先日イベントでお会いした際「青空エール楽しみにしてますね」ってニコニコして言ったのに「まぁサッカーじゃなくて野球してますけどね!(笑)」と言われました。サッカーファン=サッカーだけじゃないんだぞ!(笑)
野球は野球で魅力があるんだよ……と主張したい今日このごろです。大丈夫作品は作品で楽しんでいるから!(笑)とか最初散々ネタにしていたわけですが。大丈夫相手もこっちも本気じゃなく捉えているのでそういう会話のテンポ楽しいから大丈夫。
まぁ彼に関して言うと、最初にこの作品のキャストが発表された時既読していた手前「えっ……あの怪我のシーンやるの…松葉杖ついて背中で語るシーンやるの……」と一瞬本気で血の気が引きました。
嬉しかったけどいろいろなものが重なってみてオロオロ一人でしていたわけです。
彼の経歴を見るとわかりますが高校時代に大きな怪我を負い、戦線を離脱しています。それは彼のファースト写真集「Ryomania*1」でも言っていて、高校三年間のうち試合に出れた時間は少なかったけれど掛け替えのない時間をもらえた、という言葉がありました。まぁ泣きましたね。
なんていうか、追体験というか、デジャヴというか、「ああ、これを、あの時経験したであろうことを、彼は今度”芝居”としてやるんだなあ」とか。
その時のことを私はほとんど知らないわけですが彼以外のサッカー小僧たちがたくさんの夢をいだき、怪我をし、挫折し、それでもまた前に向かって頑張っている様を見てきているので、ついつい気持ちを重ねていました。
で、実際見てみると思った以上に息が詰まるかと思った。
ああいう怪我のシーンは本当に応援している身としては心が痛い。
佐野克っちゃんが怪我の後にプロの練習をしている皆の横でひたすら歩くリハビリを続けているのを三保のグラウンドで見るのを思い出すぐらいには辛かった。
大前元紀が怪我をして戦線離脱してる今、ピッチに立てない中でグラウンドで走っている子たちをスタジアムの客席から見ているのを後々知って「そうか来てたのか…」と「はやく治してね!」という気持ちとが織り交ざるような気持ちになりました。
脱線してますが、つまりそういうことです。
役者が「等身大」を演じることについて、以前UNDER GROUND'OGSという漫画で「リアルに近い立ち位置は俳優としては評価されにくい。素のままの自分を演じているようなものだから」といったような言葉がありました。個人的にこの漫画はアクションのスタントさんを描いた漫画なので是非読んでもらいたい。
まぁとにかく「等身大」っていうと素の彼じゃん……みたいな気持ちになるのは、ちょっと失礼なのかなあとも思わなくもないんですよね。
だって「演じている」のに「思い出す」っていうのは「キャラクター」じゃないから。難しいなあ。
でも、その一方でいろいろなものをリンクさせてデジャヴを感じさせることがこの作品で”必要だった””怪我をした、苦悩したからこそ今がある”彼だったこそこの仕事が舞い込んできたと考慮するのであれば、とてもハマっていたと思う。
原作ファンから「大介=竹内涼真ではない」という風に言われたかもしれないしどうかは私にはわかりませんが、個人的には半端な形で原作を読むのを止めてしまった手前、一概には言い切れませんが「竹内涼真が映画版の大介を演じてくれて、綺麗な形に収まった」とは思います。
配役については個人的に上野樹里さんのドンピシャ感が嬉しかったです。志田未来ちゃんもすごく「そう…そうだよそう…!」というか。ふんわりとした笑顔が印象的でした。春日は漫画と髪型が全然違っていて、それも込でキャラクターとしてより個性が出たと思います。残念なところを言って良いのだとしたら二人の関係がちょっとふわりとしていているので原作を知らない人間は「?」ってなるんじゃないだろうか、ってところ。
予想していなかったというか当初の時漫画だと凄くさらさら黒髪イケメンに描かれていたので水島君のイメージと葉山くんが当初イコールじゃなかったんですが(それこそ吉沢亮君とかそういうタイプの「THE少女漫画顔」でくるかと)葉山くんの水島、とても好きです。厳しいことをいって、でも認めていないわけではない。相棒としての3年間を走っている姿は印象的でした。
ストーリーについて
ストーリーに関しては大分駆け足感は拭えないですが、それでも3年の間に揺らぐことなく蓄積されていく気持ちを描こうとしてるのは伝わりましたし、巻数がそれなりにあるものをまとめようとしてんなあとは思いました。
何より「恋愛」と「部活」の二本柱というのはなかなか描くの大変だと思うのですが、真ん中らへん、つばさ自身が部活に向き合うこれをしたいあれをしたい、メンバーになりたい、初心者なりに向かって行きたいという気持ちについては非常に心突き動かされるものがあり、またその間には山田大介という存在はいるけれどもいない、頑張るのはあくまでも「つばさ」であること、彼女の吹奏楽という世界が描かれています。
何でもかんでも大介から影響を受けるのではなく、例えば森先輩・例えば春日・例えば顧問の杉村先生。例えば水島。そのへんがちゃんとあって、いろんな人との出会いやきっかけで励もうとしていく姿が見れて良かったです。
まぁでも、「恋愛」が見たくて見ている人にとってはそのあいだの時間が納得いかない、もっと恋愛についての揺れ動き描いてよという主張をするんもわからんでもないです。逆に言えばあれだけ部活に時間を割いたのに最後の演奏についての描写はカット!?えっそれでいいの!?コンクールで演奏しているの見たかったよ、という部活について最後駆け足になっているのは個人的にはちょっと残念です。
ただ、見せ場である大介から言うシーンは「やっと言えたやっと伝わった良かった良かった」ってなりました。この作品におけるインタビューで竹内涼真君は「キスシーンが大変でした」と言っていましたが、タッパの問題からかがむとあれだし初々しさはないしでの四苦八苦したんだろうな~感。
また、森先輩のことや大介に対しての謹慎になるような行動について。
つばさの「お節介」は少女漫画のヒロインあるあるなんですが、それが好転に100%なるわけではない、時間をかけてゆっくりと紬上げられていくわけで、リアリティとしてつきつける人たちの存在というのはとても重要で、そんな人達に囲まれながら励んでいくからこそつばさが人間味を増していくのだと思っていたので、上記お二人の役柄、ポイントとなる部分は見ていてぐっと手に力が入りました。
先生の謹慎を言い渡すところは「そりゃそうだろうよ」とおとなになったら分かる部分です。ちはやふるにてかなちゃんが「「伝える」「伝わる」はルールの向こうにある」という言葉を言っておりましたが私はこれが大好きでして。
本当それだよなあ…と今作の映画のシーンでも見ていて思いました。
でもその反省を活かし、人間として「抑えきれなかった」部分と「吹奏楽は一人でやるものではない」という反省をいかしたからこそ2年、3年になっていく時大きくなったのだと考えています。瀬名くんとのやり取りはとくに感じますね。「団体でやってる」ということへの意識を持てというのはつばさのことに結びつく。
でも団体だから動いていたからこそ、最後吹奏楽部で大介のために音楽を奏でたいと言い出してのってくれる人がいたんだと思います。
いろいろ挫折して苦悩して(まぁちょっとカットされてるけど)築き上げてきた君の3年間は無駄ではないんだよっていうのは見えた気がしました。
ただの作品語りになっていますが、映画でのシーンでより印象的だったシーンとして漫画原作の重要ポイントのシーンを描いてくれたのは嬉しかったです。
まぁ先生の問題とか解決してないし「それを知ってるの水島だけなの?」とかいろいろあったりとかね、しなくもないけれど。個人的に城戸と大介の「バッテリー」「キャプテン」としてではないコミュニケーションのとるシーンがあったのがじわっと来ました。あそこは泣ける。
つばさにしても大介にしてもこの作品を通じて言えることは「一生懸命な人は格好いい」なんだと思います。青臭さを笑うこともあるし一生懸命にやってる奴がだせーと思うこともあるでしょう。
でもやっぱり「一生懸命な人はキラキラして見える」のだと思います。大介は天然だしつばさはそれに振り回されてドギマギしているわけですが、全部をひっくるめてお互いがお互い、そういう存在だったからこそ惹かれたものもあるし、一生懸命だからこそ、見ていてよかったんだといつか振り返って言える。そういう作品であって欲しいなあ。
こういったTHE青春モノが今もなお残っていてくれて、映画になってくれているのは時代を超えても「一生懸命はやっぱりかっこいい」と思えるからなんじゃないかなあと。
また、このブログを読んでいる方の中でサポーター関連・サッカー関係でフォローしてくださって来ている人もいらっしゃると思うので作中であった台詞で。
「誰かを応援し続けるっていうのは頑張り続けるのと同じぐらいに大変だ」という言葉がありました。でもちゃんと届くんだよというのが続きます。
全然違う目的で見に行って不覚にも「ああ自分も応援し続けるの大変だけどやっぱり応援したいよなあ」と思い出しました。だって応援するのはやっぱり好きだからじゃん?頑張って欲しいわけじゃん?一緒に戦えるわけではないけれど、結局戦うのは選手たちかもしれないけれど、そのために自分たちが最後の一歩を踏み出す何かができるなら、それを声にできるなら届け届けってなるじゃん?っていう。
うまいこと言えないんですが、私はあのシーンのやり取りでサポのひとりとして応援していることはムダなんかじゃないんだよ、って思えました。押し付けにならないようにはしたいですが難しいですね…。
気づいた小ネタといえば2回め見に行った時につばさの弟が食べているのが爽で笑いました。竹内涼真繋がりだ・・!(笑)