Twitterで「安室を100億の男にする」という単語を散見している中で、見たい映画があるのに梅雨入りでもうダメだーってゴロゴロしていたのですが「ピーターラビットのおはなしが想像以上にヤバイ」という口コミを聞き、なにそれ超面白そうというはやりに乗っかるスタイルでいってきました。
「ピーターラビット」とは
イギリスで作られている世界中で愛されている兎。
日本では皿のイメージが強い気がする。かくいう私も家にピーターラビットのお皿がありました。懐かしい。
いたずら好きのうさぎのピーターがマグレガーさんの庭に入りこんでレタスを食べていると、彼に見つかってしまいます。
ピーターはどうなってしまうのでしょう。
1893年9月にビアトリクス・ポターが5歳の少年ノエルにあてて書いた絵手紙を送ったことからきっかけにはじまったこのお話は、イギリスの田舎の農園を舞台にしており、まぁ割と思ったよりもブラックだったのは驚いた。
どちらかというとゆるふわ可愛い物語だと思っていたのですがいたずら好きって「兎から見たら」のお話だよね、って改めて考えると思う。
映画版「ピーターラビット」
ハリウッドで作られるに至るまでとても時間をかけており、”うん”と言わせるまでに壮大なプロジェクトにまで発展したという話をネットで見ました。
ということで今作について。
あらすじ
ピーターは世界で一番幸せなウサギ。
たくさんの仲間に囲まれ、画家のビアという心優しい大親友もいる。
亡き両親のことを想うと寂しいけれど、ビアの存在がすべてを吹き飛ばしてくれる。
ところがある日、大都会ロンドンから潔癖症で動物嫌いのマグレガーが隣に引っ越してきたことで、ピーターの生活は一変!
今までの幸せを守りたいピーターと、あの手この手で動物たちを追い払おうとするマグレガーとの争いはエスカレート。
さらにビアへの“恋心”も絡まって思わぬ大事件に発展!ピーターはあるミッションを秘めて、初めてのロンドンへ向かうのだが——。
(公式ホームページから引用)
驚きの「だいたいあってる」けど「だいたいあってない」感。
こう…こう・・説明だけ見るとほのぼのわちゃわちゃキャットファイトっぽいのに……あの…言いたいのは何故こうなった。
キャストとスタッフ
今回の監督は ウィル・グラック 。『ANNIE/アニー』を作られた監督ですね。
ANNIEを見た感想としてはジュリア・ロバーツそれでいいんかーい!だったんですが(存在的にそこまで押さなくても良かったのでは?っていう意味で)好き嫌いも含めて「子供の受けが良さそうだな」なのと「色調がはっきりした撮り方が好きな方」という印象でした。
キャストは画家のビアがローズ・バーン。
アメリカで放送されていたドラマ『ダメージ』では5シーズンに渡ってエレン・パーソンズ役を演じ、エミー賞助演女優賞にノミネートされた女優で、ANNIEにも出演されていました。秘書の役だったはず。2009年度の最も美しい顔トップ100で1位になるなど、華々しい経歴を持っています。スターウォーズEP2で侍女を演じていたのも印象的。
引っ越してきた完璧主義のトーマス・マクレガーはドーナル・グリーソン。
2015年『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』でハックス将軍を演じています。超小物だがそれが愛しい。
\フィギュアにもなってるよ/
さらに調べてみたらハリー・ポッターのビル・ウィーズリー*3もやっていました。ビリー兄さん…だと…。二次創作でおなじみの人だ。
やる役やる役で印象がゴロッゴロ変わるお人ですね。
また、ピーターの天敵となるマクレガーさんはサム・ニールが演じています。
ジュラシック・パークがやっぱり有名。ジュラシック・パークのワクワク感大好きです。
本人もTwitterをやっているのですが、みているととても楽しい*4。
Good. https://t.co/H6hfZDdxIz
— Sam Neill (@TwoPaddocks) February 17, 2018
想像よりずっとTwitter使い慣れている人である。面白い。
で、ピーターラビットの声優さんたちですが、字幕版だとピーターラビットはジェームズ・コーデン。「はじまりのうた」でヒロインの昔なじみであるスティーヴを演じていた方です。
三姉妹の兎はカトンテールがデイジー・リドリー。スター・ウォーズのレイを演じている方です。
モプシーがエリザベス・デビッキ。
そしてフロプシーが「スーサイド・スクワッド」でハーレイ・クインを演じたマーゴット・ロビー。アイトーニャも演じていることが話題ですね。すらっとした気の強そうな雰囲気があって素敵な女優さんです。
言いたいことしては「濃い」。
なお今回は字幕版ではなく「なんかこうネタ感満載だから吹き替えのほうが良さそう」ということで吹き替えで見てきました。どちらかというと字幕派なのですが…なんとなく「吹き替え」のほうがいいかなと思ってチョイス。
ピーターラビット は元祖あざとい、千葉雄大が演じています。ゴセイジャーから見ている俳優さんなのでここまで来たかと不思議な気分(笑)
ビアは渋谷はるか、トーマス・マグレガーに浅沼晋太郎。浅沼さんといえばクロウ・ホーガン*5のインパクトが強いだけに「あっこれ浅沼さんなのか!」とテロップみてびっくりしました。
ベンジャミン(いとこ)は吉田ウーロン太、三姉妹はフロプシーが清水理沙、モブシー木下紗華、カトンテールが下田レイでした。
予告編
そもそも日本版と海外版での予告があまりに違いすぎてその違いを見ていても面白い。
これが日本版。ほんわかである。
すごく…ソニー推し…。
感想
※ひょっとしなくてもずっとネタバレしています。ご注意ください。
まとも #とは
本作におけるポイントとしては「ほのぼのキャットファイト」と思わせておいて「実は全然そんなことなかったぜ」というところが冒頭に出てくる。ほのぼの教育アニメみたいな要素は皆無です。あるとしたら「反省→仲直り→頑張ろうね」みたいな感じかな。
登場人物に誰一人として「平静」な人はいません。それぞれがそれぞれに生存戦略をねって生きようとする要素が満載。
もともとピーターラビットのお父さんは「おい、パイ食わねえか」ってごとくマクレガーさんの奥さんによってミートパイにされていて、ピーターラビットからすれば「親の仇」でもあるわけです。
が、一方で、マクレガーさんの視点から立てば自分が栽培している野菜たちを彼らに食い荒らされるのは納得いかないよね。そりゃそうだ。
家としてはマクレガーさん家─ビアの家─ピーターラビットの家 という形。
なのでいつも庇ってくれるのは「同じ人間」だけど変わり者のビア。ビアは兎が大好きなわけで、「兎イズパーフェクト」という兎党なわけです。だからめちゃくちゃ甘い。「お前は何を言っているんだ」と外側から見ていたら思わなくもない。あの兎たちどう見ても悪知恵働きまくってるぞ。
うさぎたちは言います。「ここは元は僕らの土地だ」と。
でもマクレガーさんは「ここは私がたがやしている畑だ」といいます。とりあえず野菜食い散らかしているのはそりゃあ…うん…怒るよね…とは思う。本能的なものとは言えね。
で、マクレガーさんが亡くなったことで嬉しい~☆☆☆となる動物たちのハッピーウェイウェイタイム(という名のマクレガーの畑と家を食い散らかす)をよそにトーマス・マクレガーという親戚が戻ってきたところがポイント。
湖水地方での命の奪い合い、一人vsチームの修羅場映画でした。
トーマスとビアの恋路
人間同士による恋愛模様は基本コメディ要素よりもトントン拍子に進んでいきます。
誰がどう見ても好きで、誰がどう見てもほのぼの恋模様で。何事もなければそれなりにうまくいっている。
けれど間に「兎」が入ることにより、うまくいけない。
トーマスからしてみれば兎は「害獣」で、自分の畑(※望んで来たわけではないけれどきちんと売るためには必要なもの)が荒らされるのは困る。
けれどビアは「可愛い」という。モンペじゃねーか。
そんな彼らの恋路をどうにかこうにか引き裂こうとするピーターの悪質極まりないいたずらは見ていてブラックでした。それを笑えれば良いけれど、ってかんじ。
映画として
ソニーの映像クオリティがめちゃくちゃ高い。兎も動物たちも躍動感がある。
人間たちはしっかりと行き来している。色合いも田舎の鮮やかな雰囲気が出ています。
トーマスという人物が出てくる中での、彼の中にある「完璧主義」が崩れる部分は見ていてしんどいなと思いました。彼に幸あれ、っていう部分と、あと「おいおいビアは謝らないのかその辺」と思わなくもないけれど(笑)見ていてファンキーというか、容赦ないな~って思いました。
だって感電させようとするし、ダイナマイト仕掛けようとするし、割と特効ガンガン使っているし。幸いだったのはトーマスがライフルとか銃の類をつかなかったことかな。そのへんは使わないでいたのはある意味で「最後まで彼らを生かす」という部分もあったと思うし。
ソニーはすでに謝罪していますが、ブラックベリーのアレルギーの描写は日本版だと「注意」という形で言葉にしているのでマシだったけど、アナフィラキシーショックのことを考えると<やりすぎでは?>って多分むこうのそのままを見ると言ってしまいそうだなと思わなくもない。
「朗らかに楽しい映画」ではないし、社会的に何かを学ぶというものでもないけれど、イギリスではリメンバーミーを抜いて2018年売れた映画になったらしい*6。そのへんも鑑みるとイギリスのブラックユーモアが詰まった作品だなと思います。イギリスらしいといえばらしい。作ってるのハリウッドだけれど。
戦闘シーンに力めっちゃ入っている
この映画、作中での戦闘シーンがめちゃくちゃ派手なんですよ。
うさぎたちが並んでザッ…ザッ…ザッ…って歩いてくるところどこのゴッドファーザーとか任侠物だろうってぐらいの並び方だし。
で、インタビュー記事*7を見ていたら、戦闘描写には相当力を入れていたことがわかりました。そりゃそうだ。爆発めっちゃしてたもん。
それもそのはず、実は戦争映画『プライベート・ライアン』(1998)の戦闘シーンを参考にしたんです。爆発も全てCGではなく、実際に火薬を使った特撮で頑張ったんですよ。
CGのピーターラビット相手に戦うマクレガー役のドーナル・グリーソンは特に大変だったはずです。ブルースーツを着たスタッフをピーターラビットに見立てたりと、色々な方法をやりましたが、基本的にドーナルは何もないところに向ってモノを投げたりして、一人で戦っていましたからね(笑)。
( ―― 同上インタビュー記事より)
まさかのトム・ハンクス主演プライベート・ライアンがこんなところで単語として登場するとは思わなかった。スティーブン・スピルバーグによる戦争映画ですね。そこモデルとは思わなかった。
しかしバトルシーンに於いて、CGであることを忘れるくらいよくよく白熱していました。ドーナル・グリーソンが一人でこれやっているのかと思うと大分シュールだし彼の俳優魂みたいなものを感じるのですが、非常に躍動感があるのと「うっわ~~~やべえ~~~」っていう気持ちがいろいろあったりね。見ていて「特効出たー!!!」とニチアサ民だから思わなくもない。
アニメーションについて
この作品は元々絵本からきている作品なのもあって、いろいろ要素として盛り込まれていました。あんなふわふわ可愛いイラストなのに形にしてみるとこれだよ!!とかね。そういう意味でも見てて楽しかったです。
声優陣について
千葉雄大超うまくなってる……ゴセイジャーの頃からここに至るまでで本当に成長したんだな……と…(笑)
ゴセイジャー第一話で私は相当頭を抱えて「この子大丈夫かなあ」と思って最終話で「すごい!!」ってなったのは記憶にあるのですが、改めて見たら「ちゃんと聞ける」「何を言っているかわかる」「そして違和感があまりない」という3コンボでフィニッシュだったので違和感はそんなにありませんでした。確実に人は成長するんだなという感動。頑張ったんだろうなあ……と。
千葉雄大くんの芝居直近だと帝一の國かな。あれもよかったなと思いつつ、ピーターラビットのこの…なんだ…イラァっとくるかんじも、可愛げがあるかんじもあったと思います。さすがあざとい。
周りを固めている方々は本業の方々なのもあって、違和感なくスムーズに聴けました。浅沼さんはまじで最初分からなかった。鈴木達央さんは即わかった。このイケメンなねずみ……!ってなったりね。一緒に見に行った人と終わって「あれやっぱそうだよね!?」ってなった次第。
また、千葉繁さんはひたすらに千葉繁さんでした。出ていることは知っていた。知っていたけれどここまで「THE 千葉繁さん」とは思わなかった。
参考例になるものがなにかないかと探したらこんなものを見つけた。
お察しください。
ということで、ずらずらと書いていったのですが所要時間が90分強だったので、コンパクトに、さらっと何も考えずに見られる映画かなとは思います。ただこれはあくまでも「ピーターラビットという作品がぶっ飛んでいる」という上で見に行ったからという部分もあるし、難しいところ。
イギリス的ブラックユーモアも含めて楽しむという意味で見に行ってみたら「なるほどなあ」っていう部分も多いと思います。そして改めてピーターラビットという作品についてデザインや大まかなことしか私は知らないんだなと痛感した次第です(笑)
調べてみたら「イギリスを旅する」本とかも出ているんですね。すごいぞピーターラビット。
いつかちゃんと絵本そのものをきっちり読んでみたいなと思うばかり。
また、オムライスでおなじみの「ラケル」もピーターラビットのお店があることを知りました。自由が丘にあるらしい。
一度行ってみたいけれどガーデンカフェって「それマクレガーさんとこの野菜では……」ってなるあたり大分あれでそれだな!!(笑)っていうね。
*3:正式名はウィリアム・アーサー・ウィーズリー。ロンの兄さんで7兄弟の長男。牙のピアスをしてイケメン(公式設定)
*4:Sam Neill (@TwoPaddocks) | Twitter
*6:Peter Rabbit outruns Ready Player One at UK box office | Film | The Guardian
*7:【インタビュー】映画『ピーターラビット』ウィル・グラック監督に、ドーナル・グリーソンやマイク・シノダについて訊いた | THE RIVER