柑橘パッショナート

インプットとアウトプットを繰り返すごちゃまぜスタイル

『ミュージアム』を見てきました

小栗旬主演の「ミュージアム」を見に行ってきました。

名前は聞いたことあるしどんな作品かわからないけど、タイトル的に何か惹かれるものがあり、シネマイレージも溜まってるし折角だし行こうかなと突発見に行ったのですが、まぁ一言で言うと行ってよかったなと思いました。

 

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煽り文句は「あなたは、最悪のラストを期待する」。

 

原作は巴亮介氏による「ミュージアム」。

kc.kodansha.co.jp

こちらで試し読みもできます。なお私は原作読んでない状態で見に行きました。

 

ということでのんびり感想とか。相変わらずネタバレしていますのでご注意ください。

wwws.warnerbros.co.jp

映画はこちらから。

 

www.youtube.com

 

 

あらすじ

 雨の日に起きる連続猟奇殺人事件。犯行現場に残された謎のメモ、そして見つけられることを前提としたかのような死体。

 犯人はカエルのマスクを被った通称・カエル男。事件の関連性に気付いた沢村刑事が捜査を進めると、驚愕の次のターゲットが浮かび上がる。

カエル男の次のターゲットとは…。犯人を追うはずの沢村が、逆に絶望的な状況に追い詰められて行く。果たして、カエル男の真の目的とは…?

 

キャスト・スタッフ

監督には「るろうに剣心」「プラチナデータ」の大友啓史。今後だと「3月のライオン」も予定していますね。

脚本は 高橋泉、藤井清美、大友啓史と共同脚本のようです。

高橋泉氏は「秘密」でも大友氏とやっており、引き続き、みたいなかんじです。

藤井清美氏は「るろうに剣心」で一緒の方のようです。

出演は小栗旬尾野真千子野村周平丸山智己田畑智子市川実日子伊武雅刀大森南朋松重豊など。

 

内容の感想

映画として内容見た時に「沢村(=小栗)」の人物像として仕事に傾倒しすぎて家庭を顧みなかった男です。その結果妻子に出て行かれているわけで物語は冒頭そこから始まります。

”刑事としては一流だけど父親としては最低”と言われているぐらいなわけで。

この事件における被害者たちの理由が皆裁判員制度を用いた裁判員だったということが途中で分かるわけですが、真っ先に「12人の怒れる男」を思い出しました。あれはまたちょっと違う系統ですし内容としては裁判員同士の「無罪」「有罪」を話し合うところなので、ミュージアムにおける描かれなかった部分なのかなとか。

 

ストーリーだけ見ると「冤罪」のために死んでしまった男がいて、その男についての復讐劇と思わせておきながらそんなことはない、彼の真意は?!みたいな話。

動けば動きほど袋小路になっていき、空回りしていく沢村刑事が見てて痛ましく、けれど「失ってわかる家族への大事さ」みたいな部分が見て取れました。

まぁそれって著しく身勝手なんだけどね!でも仕事仕事になるのには沢村には沢村の理由があり、そこでのコミュニケーションが互いになかったというのがきっと原因なのだろうな、とか。いろいろなことを思いました。

また、部下の西野くんが死ぬところはヒッとなりました。いろんな殺害シーンも(それこそ2番めの殺害シーンとか)「うわー」ってなる部分もあるのですが、西野くんについては「清涼剤が!!」と頭を抱えました。

作品におけるいいやつほど死にやすいみたいなことになってて辛い。そして彼もまた、婚約者や家族等がいて……と思うと婚約者は何も知らなかったのだろうか、伝えられなかったのだろうか、沢村と同じだったのかどうか、と思うと色々がぐるぐると。

 

ハンバーガーが食べられない

加えて、あの、「パズル」からの「ハンバーガー」のシーンに全力で封神演義が好きな自分としては嫌な予感しかセず。案の定な展開になっててですね。でもその前にひたすらパズルを解くことで思考停止しているから…と思うとエグい。挙句に全部その台詞のやり取りを覚えて(盗聴して)たわけだからなお質が悪い。

「は、は、は、伯邑考ーー!!!」ってなりました。封神演義好きな人はあのシーン色々思い出すんじゃないかな。西王があの時ニコニコしながらハンバーグ食べた振りして泣いてたの思い出して辛い。

気になる人はフジリュー封神演義御覧ください。原作のほうも安能版を読んで「だ、だ、だ、妲己!!」って気持ちになりましたがフジリュー版だと「実は恐ろしいことをひたすらコミカルにやって気づいた時に恐怖感を与える」というものだと思いました。

雰囲気的にはコミックス版の封神演義に近いものがありました。からの冷蔵庫バーンに「やっぱりいいいいい」って思いました。

 

カエル男の正体

 

カエル男のうす気味の悪さはとてもトリッキーで非常に気持ち悪かったです。

また、彼が彼に至るまでの話を考えるとまた…。双子の片割れは医者になるけど片割れはどうしようもなくあの豪邸の中に一人なのかと思うとエグいなあ。

カエル男の日光アレルギーは後天性+心因性によるものだと思うとまた何ともいえないですよね。過度なストレスからの結果で、要するに人の目からなのだと思うと……。

カエル男=妻夫木聡なんですが、私は妻夫木聡であることを全くエンドロールまで気付かず「えっそうなの!?」と驚いたぐらいでした。それぐらいカエル男は怪演、が似合っていると思います。

未解決事件の豪邸の夫婦バラバラ殺人事件の被害者の遺族である子どもがカエル男の正体なわけですが、あのじめーっとした世界の中で生きていくうちに感受性が狂っていったのかなあとも思うし、同時にどこにいっても「あの家の子ども」と言われただろうから(メディアとかついてまわるし)「人間」に対しての価値観は感じなくなっちゃった結果なのかなとも。少女樹脂殺人事件はレジン使う身としては「うわあああ」と思いましたが。

でもレジンって乾かすの手間がかかるというか「UVライト」とか「太陽光」での乾かすイメージなので、そのうえで彼が「樹脂」を使ったのだと思うと、「絶対に自分が捕まらない」(日光アレルギーだからUVもNG)ってことなのかなとか。色々思いました。

 

セブンを思い出したよ!

映画全体としては「和製セブン」と再三いろんなサイトで言われていますが、まぁ確かに雰囲気似てるな~と思います。比較しながら見ても面白いと思います。

www.youtube.com

こちらセブンの予告。あれはあれ、これはこれで楽しめると思いますし、個人的には逆にミュージアムを見た後に見てもらってもいいと思う。

 

終わり方について

エンディングについて、沢村がエンディングは3つある、と霧島が言っていた言葉が頭に残っており、また同時に翔太(息子)が首あたりにできた湿疹をかいているシーンがあります。間に挟まれる妻・遥が「冤罪の人を自殺にした気分ってどう」というルポライターの突撃取材における不快感が出ていて、あれはあれで明らかにトラウマになっているのも明確。家族間は修復しようと彼らは健闘している感じですが…。

霧島がいっていたエンディングは

1.霧島を沢村が殺して家族三人ハッピーエンド

2.沢村が妻を殺して子供と二人で生き残る

3.ラストは?

ってなるわけですが……。あれをどうとるかで変わりますね。

また、「エンディングの後に悪夢は終わるのだろうか」という言葉が胸に刺さりますね。ハッピーエンドではなく、後味になんともいえぬ気持ちになる感じが個人的には大変気に入っています。息子が霧島と同じ道を辿ってしまうのか、それとも、みたいな。

 

気になった所

霧島と女医は双子だったことが伝えられていたので、うっかり最後のカエル入れ替わりは医者だと思っていました。いやでもまぁ展開的に奥様ですよねそうですよね……。

個人的には、双子の関係についてがワンシーンしかなくフワッとしてので、具体的にどういう関係なのか知りたかったなあと。

霧島が狂った流れの中に双子の片割れが別のところで養子になったことで拠り所がますますなくなったというのがあるとは思うんですが…。じゃあ女医側から霧島はどうだったのだろう、とか色々思ったり。この辺は原作に書かれているらしいので印象が変わるかな。

 

後遥(妻)の友人に詰め寄るシーンがありますが(まぁ結局彼氏いないのに彼氏名乗るやつがしれっと入り込んでえらいことになわけですが)そこの彼女と、妻の関係、また同時に沢村の関係が全くわからなかったので「沢村と学生時代からの友人」なのか「遥の親友だけど沢村とも気心が知れている」のか分からなくて「この人どういう立ち位置?」と不思議な気分でした。とてもいい田畑智子さんのお芝居だったと思います。

 

後は流産の流れもちょっとふわっとしていて、見ていておそらくは産婦人科で冤罪の男の自殺の心因性によるもの、過度なストレスにおける流産なのだろうけれど…。ちょっとそこもなんかフェードアウトになってしまって残念だったかなあとも。

カエル男が「どうやって殺したんだ、あの二人の心を」っていう問いかけのところで流産の話とか出ると思いましたが出なかったので、このへんも多分原作の漫画に出るのかな・と思いました。

心を殺していった流れは「コンビニに行く時自分は眠たかったが二人は嬉しそうだった」からの「どっかいったっけ」で完全にとどめだったのかなあとか。でももうちょい色々見れたらよかったかもしれない。

 

全体を通して振り返る

アーティスト/表現者 としての死に方は漫画試し読みをしたらより動きがはっきりしているというか、第一の”ドッグフードの刑”がより明確感が出てたなーとか。

スポットがずっと沢村だったので、より掘り下げて掘り下げて一緒に考えていく感じのサイコ・サスペンスでありながらミステリー紐解いていくのもありました。

演出も普通に吃驚とかドッキリとかしましたし、何より「ひゃあ!」となりました。映像としての動きも見てて楽しかったのと、俳優陣の動きも見てて入り込めました。

呼吸一つ、死に方一つ(野村周平くんとても良かった)、相手への信頼の仕方や感情の動きまで。沢村が精神的に追い込まれてすがってしまったところまで含めて興味深かったです。

 

この映画はカエル男が引き起こす猟奇的殺人事件の単なる顛末を描くのではなく、究極の状況下で人間がどのように振る舞うのかという生理的な反応をモチーフにしています

小栗旬主演『ミュージアム』追加キャストに尾野真千子、野村周平ら - 映画・映像ニュース : CINRA.NET より、大友監督のコメント)

 

と、大友監督は言っていますが、本当にギリギリのギリギリの状況で人はどう動くか、というのが出ている気がしました。

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