エスパルスが昇格したぞー!おっしゃー!という気持ちも色々あるんですが、その記事書いてたら圧倒的に文章が馬鹿みたいに長くなっているので、一足先に見てきた映画についての感想録から始めたいと思います。
「ボクの妻と結婚してください」を見てきました。先日、あさイチのプレミアムトークショーに織田裕二さんがゲストでいらっしゃっており、この作品について取り上げていました。
感想をつらつら友人に語っていたら「お前が記事書いてから見るかどうするか決めるわ」と言われたので、ちょっと書いてみようと思います。
いつもの通り言っていますが非常にネタバレしていますのでご注意を。
あらすじ
バラエティ番組の放送作家である三村修治は、12本ものレギュラーを抱え、このところ忙し過ぎるとは思っていた。
体に異変を感じて検査を受けた結果、告げられたのは末期のすい臓がん。余命6ヵ月という驚くべき診断だった。
放送作家として、今までずっと世の中の色々なことを好奇心で「楽しい」に変えて来た修治は、自分がいなくなっても、妻が前を向いて進めるようにある企画を思いつく。
「妻の結婚相手を探そう!」
そんな時、元仕事仲間の知多かおりが現在結婚相談所の社長であると知り、妻にとって最高の結婚相手を探し出してもらうことに。まさに命を懸けた一世一代のプロジェクト、家族に遺せる「最期の企画」が動き出す…。
(東宝シネマズより引用 ―― 映画 ボクの妻と結婚してください。 || TOHOシネマズ)
キャスト・スタッフ
原作 - 樋口卓治『ボクの妻と結婚してください。』(講談社文庫)
監督 - 三宅喜重
脚本 - 金子ありさ
原作の樋口さんは実際に放送作家の方で、当時の学生における視聴率が半端なく高かった「学校へ行こう!」をはじめ、沢山の作品を手がけています。笑っていいともにも参加されていたとか。
また、監督の三宅さんはドラマ演出が多かったものの最近では「阪急電車 片道15分の奇跡」「県庁おもてなし課」「レインツリーの国」を担当。どれも有川浩作品ですね。ドラマの演出だと「結婚できない男」「アットホーム・ダッド」「がんばっていきまっしょい」等。
脚本を手がける金子ありささんについて調べた所「ナースのお仕事」「電車男」など00年代における数々の作品を担当。
この3人の方を並べてみてて最初に思ったのは、作中における「三村」という男に対して非常に近い仕事をされている(まあ皆そうなんですけどね)なあということ。
ナースのお仕事も結婚できない男も、学校へ行こう!も全部笑いの要素が詰まったコメディ感もあるバラエティ中心のびっくり箱のような作品です。
なので、今作においてもそうなのだろうとまず最初に思ったこと、また同時に「そういった人たちが魂削って創る」ということに非常に関心を寄せました。
キャストは
三村修治 - 織田裕二
三村彩子 - 吉田羊
三村陽一郎 - 込江海翔 など。
他にも高島礼子や小堺一機、大杉漣などが脇を固めていますが、ストーリーとして重要なのは上記4人。
感想
ヒューマンドラマだけど「ありえない!」を「ありえる」にしたもの
ボクの妻と結婚してください をみてきました。泣かせにくる映画であることは分かりきってたんですがあさイチの紹介からどう作るのかとても楽しみで見て、ハンカチではなくタオル持って来ればよかったと本気で思った映画でした。織田裕二も吉田羊もいいんだけど原田泰造が良かったなあ pic.twitter.com/3TcIkZn4hm
— せつな (@magic_rhapsody) 2016年11月21日
作中において「そんなばかな!」が一杯出てきますが、それも含めて笑いに変えようとしている作品なのだなあと思いました。
そこを踏まえて「楽しい」「面白かった」かどうかを考えて欲しいです。
三村修司という人
あさイチでも有働さんが「なんでいってくれないのよ!」とイライラしていたという旨を語られていましたが、まぁぶっちゃけ私も「そりゃそうだな」「お前それはないわあ」とまず映画としてというか彼の行動に納得できない状態でした。
まぁ開始5分で泣いてる時点であれなんですけど。
彼の行動原理はあくまでも「家族のため」であり「自分のため」です。「自分が、家族の笑っている姿がみたいから、家族のために奔走する」です。
周囲から理解されなかろうとなんだろうと貫こうとする姿は、納得する、しない、の問題ではないのです。彼は、「そう」いうことしかできないのだなあと。それも含めて「三村修司」なのだろうと思いました。
ただ、彼の行動に対して、決して周りが納得しているわけではないです。主に奥さん。
そりゃあ「一緒に生きてよ!」っていいますよ。当たり前じゃないですか。なんで死んだあとのこと考えるのよそうじゃないでしょ、残された時間一緒に生きてよってなるわけで。
でもそれをしない。できない。なぜなら彼は「放送作家」で今までもこれからも「悲しい」終わり方なんて嫌な人だから。これがドラマの脚本家とかだったならまた違っただろうとも思いますが、この作品を作った樋口さんが手掛けたものをずらーーっと並んでいて読んでいたら「そうだよな」と納得できました。
だって学校へ行こうで悲しい終わりなんて見たくないじゃない。
未成年の主張で仮に振られたとしてもエーヴィーシャラララーエヴィウォウウォウ~~ってBGM流して一生懸命って美しいなって思わせるように作られているじゃないですか。そういうことですよ。
だからこの映画における「旦那が身勝手すぎて見たくない」という方に対していいたいのは「そういう風に最初から計算して作られている」のだということです。それを指摘する部分もありますので一概に「肯定」しているだけじゃないよ、って話。ただまぁだからといって「はいそうですか」とはいえないよなってのが人の心だなと思うのがこの作品の特徴だと思います。
”優しい嘘”は誰が誰のためにつくのか
この作品のポイントで描かれる「嘘」って誰のためのものなのかなって思いました。
終着地点はお互いに同じかもしれないけれど、向けるベクトルが違う。
三村の奔走に「共犯」になってくれる結婚相談所の社長さんは彼の生き方に同意してくれる理由は多分、彼女も「創る側」の人間だからなのだろうなと思います。一度止めた上で、それでも「これで私は共犯」と言っている。
最後まで奥さんに「笑っていて欲しい」と思った三村。最後くらい旦那さんの望みを叶えてあげたいと思った奥さん。
そして彼らのエゴイズムに巻き込まれた伊東さん。いい人だけど、彼が最終的に彼女と「そう」ならないのか、それとも「そう」なるのかは未来にかかっていると思いました。
頭を下げて騙したとしても、騙されたとしても一緒にエゴに乗ってあげているのは彼もまた三村の優しさに触れたんだろうなあと。息子への手紙には現代人における「おいおいそんなのおかしいだろ」も混じっています。なんで行きたくもない3次会までいかなきゃいけないのさ、とかね。でも、それも踏まえての「ええー」も含めてのこの作品なのだろうと思いました。
織田裕二という俳優について
世代によってこの人の印象というのは違うと思います。
ある人は東京ラブストーリーと言うだろうし、またある人はアマルフィというだろうしまたある人は踊る大捜査線という。
織田裕二という人について調べてくると色んな表情が伺えるのですが、先日のあさイチでのやり取りで「50になっても主役をやること」について語っています。
器用ではないから、たくさん噛み砕いて咀嚼して考えての自分があるからの、「主役」ということへのこだわり。割りと私は助演、脇の方々の芝居を見るのも好きなのですが、彼が「主役でありたい」ということの考え方はその作品における「どういうものを作りたいのか」「どういう考えて物事を進めていくのか」ということの考えを知りたいという気持ちがより出ているのだなあと思いましたし、またそういう俳優さんが一人いてもいいのではないかと思います。
言われたことを素直に受け取るのではなくて、一緒につくっていくという意味で、意見をする人も時にいたっていいじゃない。っていうことと、それを「する」ということを考えている俳優さんというのは、よりよいものを作ろうとする考えとして面白いと思います。
映画でひたすら泣いた話し
もはやどこで泣いたのかわからないくらいぼたぼたに泣いてました。
真面目になんで私ハンカチじゃなくてタオル持ってこなかったんだろうというレベルでした。
一番泣いたシーンどこと聞かれると、奥さんとの対話シーンでしょうか。扉を挟んで淡々と語るシーンは身勝手極まりなく、奥さんの気持ちをわかっているくせに言うわけで。その上の、言葉が全て敬語で、ちゃんと伝えよう伝えようとすれば空回りしている感じが余計に辛いです。
どうやっても覆せないどうやっても、仕方ないというのはわかっているけれど、伝えようとするのは正直なんでだよおって気持ちと、いろんなものがぐっと来ました。
頭ではわかっているけれど、心がついていかない、親しくなっていくにつれて段々と切なくなっていく。「それでいい」「それしかない」とわかってるのに、っていう過程が本当にもどかしいなあと。
だからこそ、最後の結婚式は色々とくるものがありました。笑ってくれてたならいい。この人に託したい。そういう色んな、彼なりの結論がそこにあったのではないかな、と。息子への万年筆の話も切なかったです。あの万年筆を彼は父親から受け継ぐのだろうか、とかね。色んなことが考えられました。
聖の青春を割りと近い中で見た上での感想なのですが、二人共命のリミットが尽きるまでの生きる道がはっきりしていた人たちなのだなあと思います。
ちょっと違うけれど似ているなと思ったのは「僕の生きる道」でしょうか。あれもまた個人的には好きな作品でした。
意見が違って当たり前で、その「意見」が性差やあり方で全然変わってくるものだと思います。そういう意味合いも込めて恋人で、夫婦で、家族で、色んな人と見て話をしてもらいたい映画だと思いました。
また、内村光良氏が過去に舞台とドラマでもやっていたそうで。
そういう意味でも違いも含めて見てみたいんですがDVDとかになってないんですかねえ。気になるものです。