佐世保といえばなにか。ジャパネットたかたの本社があるところの印象です。友人が佐世保の出身なので何かと話を聞いたりもするのですが、ちょっと特殊な場所ですよね。
さて、今回はそんな日本の要素と海外の要素が組み合わさった変わった場所である長崎を舞台にした作品「坂道のアポロン」が実写化し、足を運んできました。
同作はノイタミナでアニメーションになっており、とても上質で楽しませてもらったもんです。
ということでのんびり感想を。
「坂道のアポロン」概要
画のタッチが好み分かれると言われていますが動きのある、しなやかな表現の漫画です。
また2012年にはアニメーションにもなっています。
主役はノイタミナ作品にも多く出ている木村良平さん、細谷佳正さん、南里侑香さんなど。楽曲を攻殻機動隊等で知られる菅野よう子さんが担当したことも有り非常に当時話題になりました。
私が知ったのはアニメからなのもあり、作品を触れて思ったことは「いつかそのうち実写化しそうだなあ」って思っていたので、今作の実写化については「ダヨネー」ってかんじでした。
ちなみにアニメの主題歌はYUKIの「坂道のメロディ」、そして秦基博の「アルタイル」。
アニメについての評価は言わずともがなですが、とても丁寧に作られていることと、ノイタミナなのでシンプルですんなり入ってきやすいと思います。それこそ「普段あまりアニメ見ないけれど」という人にもおすすめしやすい。
どっちも良い曲なので是非。そして今回の映画についてもアニメの主演として一言頂いている様子。
🎼 各界のみなさんから到着した
— 映画『坂道のアポロン』 (@apollonmovie) 2018年3月17日
『#坂道のアポロン』への絶賛の声 🎶
✨ #木村良平 さんからのコメントをご紹介 ✨ pic.twitter.com/AW2B7rKa0N
あらすじ
医師として病院に勤める西見薫。
忙しい毎日を送る薫のデスクには1枚の写真が飾られていた。
笑顔で写る三人の高校生。
10年前の夏、二度と戻らない、特別なあの頃―あの夏、転校先の高校で薫は、誰もが恐れる不良、川渕千太郎と運命的な出会いを果たす。
二人は音楽で繋がれ、荒っぽい千太郎に、不思議と薫は惹かれていく。
ピアノとドラムでセッションし、千太郎の幼なじみの迎律子と三人で過ごす日々。
やがて薫は律子に恋心を抱くが、律子の思い人は千太郎だと知ってしまう。
切ない三角関係ながら、二人で奏でる音楽はいつも最高だった。
しかしそんな幸せな青春は長くは続かず―
スタッフ・キャスト
主演の薫にHey! Say! JUMPの知念侑李、千太郎に中川大志、律子に小松菜奈。
この他、憧れのマドンナに真野恵里菜、兄貴分にディーン・フジオカが並びます。
また、ジャニーズの後輩ということで松村北斗(SixTONES)が出ています。
監督は「青空エール」の三木孝浩。
脚本に「親指さがし」「ミュージアム」の高橋泉、音楽はLITTLE CREATURESの鈴木正人が担当。彼について調べたら秦基博はじめ様々な人のサポートメンバーをしているようです。
感想
原作が巻数が9巻なので、広げすぎず、非常にコンパクトになっていたと思います。
細やかな設定が変わっている、描写していない(薫の母がどういう人だったのか、淳兄と百合香との関係等)ところやまた、1960年台という年代が舞台の中で、色合いも含めて彩度が非常に落ち着いていた、けれど嫌味のない形ですんなり入ってきたものでした。
作品のテンポはどうやっても早くて、時系列がトントン拍子で進んでいくので気持ちが追いつかないっていう部分も無きにしろあらずです。ずっと波が上から上へとついてきてしまうような感じというか。
それでも「ここは絶対外せない」というポイントは抑えてきているように感じました。
百合香の立ち位置が1つ上の先輩から、大学生になることでミステリアス度をあげたように感じました。少しずつの立ち位置の変化でもたらしている「変化」が興味深いなあと。
また、知念侑李くん、中川大志くんのセッションシーンは長回しでよくもまぁしっかりこれを撮ったなあと思います。先生についてひたすらやったと聞きますが、それにしたって曲数はどうやっても多いので、素敵に演じながら弾くまでに努力が必要だったことと思うので「すごいな」という一言。特に文化祭のシーンは圧巻ですね。
カーテンをあけて、ライトが無い中での二人のセッションは見てて印象に残ったと思います。
ここで惜しいのは「王子様が仲良く喧嘩してるみたい」っていう凄い個人的にアニメで好きなフレーズがあったのですがそれがなかったことかな!!
勿論「言葉がなくても分かる」っていう部分も絶対あるし、りっちゃんの泣いている姿が全てなのですけれど、フレーズとして耳に残って、個人的にとっても好きだったからちょっと残念でした(笑)
お芝居について
知念侑李くんは「未成年だけどコドモじゃない」を以前見たときに「うん…うん…?」っていう(あれは多分作品として私と相性が合わなかったのだろうけれど)印象がありましたが、今回は馴染んでいる印象がありました。薫という神経をすり減らす環境に居た中でストレス感じると吐き気を催すキャラクターとして表情が動くところが良いですね。演出で階段を行き来するところで気持ちが先走る足が動くだけのところが印象的です。また、りっちゃんに対して、千に対して全部に気づいてしまうという繊細さと、殴りかかって「殴り合い」も出来ない立ち位置の切なさをどうにかして動いてやろうというのが見えて、非常に彼なりに役作り考えてやったんだろうな、って思いました。
文化祭のピアノのシーンが特にやはり印象的なわけですけれど、楽しそうに「弾いているなあ」っていうところ。最後のセッションも含めての「薫として」のいきいきしている表情は個人的にあっていたと思います。
中川大志くんは私彼のことをあまり詳しくないのですが、見に行った友人二人に「こう……福士蒼汰くんと市原隼人と雰囲気似ているよね」と言われてああ、確かになあって思いました。千は豪快である一方で内面の柔らかい部分の切なさがある人なわけですが…そういう意味で喧嘩っ早い、喧嘩強いところと、薫との距離感が印象的でした。
千と薫(知念くん)の体格差がこの作品では大切なので、そのへんも凄く考慮して作られたんだろうなあって印象。バイクでのりっちゃんとのシーンでもまた分かるポイントがあるのがいいですね。
失恋したときのグシャグシャになった表情と殴りきれない部分と。クリスマスコンサートの過程と。くるくる表情が変わる役どころとしてとても彼の軽快なドラムと同じように弾むようにお芝居されていたと感じます。
りっちゃんを演じる小松菜奈さんは新進気鋭の女優さんですね。今度「来る」で岡田准一氏の彼女役を勤めることも決まっていますし、「沈黙」の芝居はお見事としか言いようがなかった。個人的にあの役本当苦しかっただろうししんどかっただろうと思うのですが、そのへんも含めて「りっちゃん」という、二人の間に挟まれつつも、好きという感情を向け、見守っている精錬された都会感のない、素朴さがあるキャラクターとして、どう演じるのか期待していたのですが……。有る種溺れるナイフとは真逆な立ち位置で(あの子はあの子で私は好きですが)まっさらだからこその失恋する流れだとか、言い出せない踏み出せない「幼馴染に享受する」部分が良かったです。叫ぶ役柄ではないのですけれど、りっちゃんというバランスを保つ際に小松菜奈さんのはっきりした顔立ちから「どう素朴にするのだろう」というのを考えていたのですが、お芝居でカバーしているなって印象。それにしたって膝丈スカートなのに腰の位置が高くて足がすらーっとしているからきれいなことこの上なくて羨ましいです(笑)
彼女の言葉で「王子様が仲良く喧嘩しているみたい」が聞きたかったな!!(まだ言う)
また、松村北斗くんが演じていた松岡星児は、こう…原作の美術部のホープ感皆無の状態で(笑)心底当て馬というか嫌な役になっていたのですが(尺の都合上どうやっても描ききれなかったんだろうな、と思うのでこの判断は仕方ないと思います)、「い、イラッとくる~~!」という印象です。松村北斗くんについてアイドルしているときに対して友人が「ほくほくは顔がきれい」「後和服めっちゃ似合う」という風に語っていたので「そうなんか」と思っていたのですが、あまり詳しくないので…(すとーんずさんたちがKAT-TUNの系譜を踏まえているということぐらいしか知らない)
なんか確か大分文学男子だった?ような?記憶があります。
どちらにしてもあまり詳しくない中で、ビートルズのような要素を持ちながらあのナポレオン衣装を着て(原作通りなんだよ!)(友人に「V6のナポレオン衣装思い出した…」と言われました)*1「当て馬」「嫌な役」として印象に残る役をしていたと思います。まさか本当にお歌うたうとは思わなかったけれど。完全に合いの手のタイミングが当時の雰囲気である。
また、淳兄のディーン・フジオカが今作における重要な役回りをしています。
配役を聞いて真っ先に「まぁね……歌えるし英語できるし……」って納得した部分が多数ありました(笑)抑えようとして喋りだした瞬間に元々彼が海外で演技のお芝居をしていたのを踏まえて楽しめましたし、歌いだしたときに「歌手だもんね…」って思ったり。
昭和レトロ感のある、けれど都会に出て学生運動をしている淳兄がどういう風に表現されるのか、と思って原作の絵柄とは少し違いますが、当時のことを鑑みたり雰囲気を寄せているという意味では私はいいなと思います。後は彼らのその後の演じるにあたってのポイントがあるので、だから年齢が10年後設定にしたとき違和感がない彼になったのかな、とも。
中村梅雀のウッドベースも非常に雰囲気がありました。お父さんとしてレコード屋の主として。とても印象に残っているバイプレイヤーズでしたね。
ジャズが聞きたくなる青春映画として
使われていた楽曲はMoanin'はじめとして原作と同じく聞き覚えのある楽曲が多いです。
特にマイ・フェイバリット・シングスが注視。この二つがよく出てきた印象です。
セッションしている彼らの表情はいきいきとしていて楽しそうでしたね。
エンディングでりっちゃんが歌ってくれたら良かったなあという風にもちょっと思いました。小松菜奈ちゃんが駄目でもエンディングでMy Favorite Thingsを歌入りで流して小田和正がくるのかなと思ったらそんなことなかったので「な、なんだと…」と驚きました。そこは…そこは入れてもらっても良かったんやで…!!
こちらはアニメで歌われたりっちゃんが歌ったMy Favorite Things。
ジャズ系の音楽だと「SWING GIRLS」がやっぱり有名ですが、ジャズも色々だと思うので個人的には「音楽を楽しむ映画」である部分と「音楽を通じて触れ合う人と人の物語」として“それはそれ”という形で楽しめました。
実写化についての考えはいつでもそうなんですが「何もかも同じは無理な話で、その中でどうアレンジするか、それが面白いか」であると思うので、この「坂道のアポロン」は原作を踏まえた上で色々細工をして面白かったと思います。
「原作」がある実写化として
なんかこう…うっかり足を踏み入れて、新しいものに出会えて、何かが少しずつ変わっていくというのはいい。それが実写化で「作品に触れる」にしろ、それが作品を通じてジャズを知る、でも。
何にしても新しいことを知るきっかけがあるというのはいいと思うしそれがポジティブであったらことさら。
全部に対してなるほどな~っていう部分とああ…おう…おう…?って部分と、ここそう表現するのかあっていう部分と。それぞれがあると思います。
ただまぁ「めっちゃ泣けた」と言われるたびにあんまりそこまで感動しなかった(多分激流がずっと続いて、緩急として心が落ち着かない間に次次と話が展開されたから、追いつけなかったのだと思う)ものの、空気は楽しめたし音楽も楽しめました。
これはこれであり。「同じ作品をテーマに派生していった作品」として見ても良かったと思うし、音楽が映画館の中で反響しているのは楽しかったなあと思います。
ということでアニメも漫画も映画も其々に良いところ探しをしながら、楽しめたらいいなあて思うばかりです。
Twitterの有効活用
基本Twitterの公式の使い方ってニュースサイトのRTとか、カウントダウンぐらいな印象なのですが坂道のアポロンの公式は非常にうまく紹介+気になるように誘導をしているなと思いました。
主に役者ファンに向けては「ハプニング&NG紹介」をしていて、笑いを誘い、「もう一度あのシーンをみたいから足を運んでみようかな」とリピーターを獲得できるようになっています。ハプニング大賞NG大賞ってTV番組での番組改編期のドラマの紹介で昔からある印象なのですが(そして私の印象はKinKi Kidsの堂本剛くんが「ガッコの先生」で色々やってた印象)そのへんをTwitterという形で紹介することで、フォローしていれば「元々の興味がある」という意味で見に行けるし、その人達が拡散すれば「こんな形で撮影している」と「さほど興味はないけれどマイナスではない人」がプラスに転じることができるようにもなっている。興味をもたせることに成功できているなと思います。
#坂道のアポロン ちらっとビデオ🎥
— 映画『坂道のアポロン』 (@apollonmovie) 2018年3月22日
千太郎と律子のバイクシーン🎶
ところが...律子が乗ろうとしたとたんハプニングが...‼️
(カットがかかった後は思わず笑いが💓) pic.twitter.com/3XUqRcRiEX
知念くん・松村くんは流石に事務所の動画の都合(画像はOKになったけど動画はYoutubeだけなのだろうか)*2があるので、そこに関して出して良いのかどうなのか微妙なのでしょうね。
まぁ彼らに関してのハプニングとNGに関しては是非円盤で出したときに特典で入れてもらえたらいいなと思います。彼ら以外の人たちのものも含めて。
また、三木監督の「Q&A」を行ったりと結構諸刃の剣になりやすい*3なかで、チャレンジ精神が旺盛だなと感じる場面もちらほら。
せっかくなので、もっともっと映画『坂道のアポロン』を応援してもらうべく、質問タイムにしようと思うのですが、みなさん映画に関するご質問とかありますかー? #坂道のアポロン #質問タイム #二度見三度見促進企画w
— 三木孝浩 (@TAKAHIROMIKI) 2018年3月19日
著名人のコメントがあるのもこだわりとして「本屋大賞みたいな形だなあ」って思いました。
予告・告知、そしてその先を紹介したいという意味ではとてもおもしろいアカウントだな、と思います。
以上感想でした。