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音楽と騒乱で紡ぐミステリー・サスペンス再び!「Murder for Two」

以前「Murder for Two」が公演された時、有り難くもチケットを確保出来てお伺いしたのが何だか懐かしいです。

今回は坂本昌行さん、海宝直人さんの二人による形で、前回とはまた違う形で彩りを変えて見せてくれました。

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今回は場所をBunkamuraに移しての公演です



 

▽初演の感想

amanatsu0312.hateblo.jp

 

2016年ということは丁度6年前になりますね。このブログをもうやっていたことにも驚いてしまいます。

また、現在楽しませてもらっているグループ「A.B.C-Z」の塚田僚一さんも一緒のタイミングで観劇していた?らしく……お客さんと同じタイミングで出ていかれたというお話を聞いて「暗転して帰らないで最後まで見ていくジャニーズの人」という認識が当時出来上がっていました(笑)

 

ということで、今回のざっくりの感想は次の通り。海宝さんは何とびっくり今年この後、橋本良亮くんが出る「next to normal」で同じチームでも見るので一足先に「はじめまして」として見ることが出来ました。ありがたい。

 

※がっつりネタバレしていますのでご注意ください。

 

 

本作について

 2013年にオフ・ブロードウェイのニュー・ワールド・シアターで公演されたことが最初になります。当時のニューヨーク・タイムズ紙には『この傑作ミュージカルコメディを見逃すな!とにかく巧い! Murder For Two は“粋”で、抜群の楽曲に彩られたコメディミステリー 』と称賛されるほどとなりました。

 これを踏まえ、2016年に日本版を初演。当時のキャストは今回と同じく坂本昌行さん、松尾貴史さん。当時は坂本さんが10役、松尾さんが3役と合計13役で振り分けられ、さらにさらにピアノが披露されました。「知恵熱を出した」と坂本さんが当時お話されていましたが、お芝居として見ごたえのあるものだったのを覚えています。

 舞台としても評価され、第24回読売演劇大賞 優秀男優賞を坂本さんが、優秀スタッフ賞を照明の原田保さんが受賞されるなど、華々しいお芝居でもありました。

 ……さて、大まかなストーリーは次の通り。

偉大なアメリカ人作家のアーサー・ホイットニーが、自らのバースデーパーティーの席で銃に撃たれ、致命傷を負って殺された。現場から1時間と、最も近い町にいた新米刑事マーカスは、寡黙な相棒のルーを引き連れ現場に向かう。個性豊かな容疑者たちが立ちはだかる。

犯人はアーサーの有名女優の妻ダリアか?それとも第一容疑者として疑われている、プリマドンナのバレットか?はたまた馴れ馴れしい態度で接してくる、精神科医のグリフか?ベテラン刑事が到着するまでの限られた時間の中で、事件を翻弄する容疑者たち。果たしてマーカスは真犯人を見つけることができるのか?
時間は限られている、急げマーカス!
逃げ切れるか真犯人!

シアターコクーン公式より引用)

 「有名な作家、誕生日や表彰式で殺人事件に巻き込まれがち」というのは正直ミステリーにおける鉄板ですよね。
 以前見た映画の「ナイブズ・アウト」でも顕著に出ていたのを覚えていますし、海外ミステリー小説関連だと作家とか大富豪が散々な目にあうのが「王道」かな、とも(勿論そうじゃないケースもたくさんありますが)。本作はそんな「THE定番」を持ってくることで「入りやすく」しつつ、一方で「トリッキーさ」に挑戦してる作品でもあります。

 キャスト・スタッフは以下の通り。

作:KELLEN BLAIR

音楽:JOE KINOSIAN

演出:SCOTT SCHWARTZ & J.SCOTT LAPP

翻訳:北丸雄二 上演台本・訳詞:高橋亜子 音楽監督:岩崎 廉 振付:本間憲一

出演:坂本昌行 海宝直人

(敬称略)

 公演日程は2022/1/8(土)~1/23(日)と社会人にとってとてもありがたい日程です。
日程が長いとどこにいこうか――というのが組みやすいので助かります。

 

作品の感想

 コミカルに、そしてポップに、ただし非常に内容はダーティに。そんな作品の「Murder for Two」。ステージは大きなピアノが置かれ、椅子があるなどもありますが、基本的には何かが大きく転調して変わる――というよりも、その「場所」にとどまり続ける人々を描いている密室劇であり会話劇です。

 単調に進むかと思いきや、歌あり、ダンスあり、「トリッキーな笑い」ありの三拍子の揃えた作り。「誰がこの作家を葬ったのか」ということを探偵の役割をする新米刑事のマーカス。そして「2人しかいない」都合から一緒にいるけれど”シルエット”のみで登場する同僚のルー。マーカスを海宝さんが、そしてほぼそれ以外を坂本さんが演じています。「探偵役」を海宝さん、「容疑者」を坂本さん、という見解でいいでしょう。

 私は初演を見ていたので、大体の知識を持っていたのですが演出面での記憶は6年前のものから引っ張り起こす状態なのですが、根本的なストーリー仕立てはほぼ変わっていません。容疑者となるキャラクター一人一人の坂本君の演じ分けコンセプトもあまり大きく変わってはいないように見えました。それこそ、ステフという助手志望のキャラクターの耳のかけかた、愛嬌のある姿は相変わらず「女子~!!!!」という感じでしたね。

 劇中劇として携帯電話が鳴ってからの「集中」がぷつっと切れてお客さんに問いかけるシーンがあるのですが(舞台上の展開として必要なことですね)そこで言い回しをする「容疑者役」の坂本くんは完全にパブリックイメージの坂本くんでした。「ちょっと」と顔を歪めているシーンでもあるのですが、さも「いつもどおりの姿」を「演じる」ということの難しさを感じます。

 また、登場人物が多い割に壇上に立てる人間が2人しかいない分、コロコロと演じ分けて変えていく坂本くんと、「ここにドクターがいるはずなんだけどピアノを弾かなければならない、でも演じられるのは二人でどうにかしなくてはならない」という打開策で音楽監督を引っ張り出すなど”劇”ならではの「今非現実にいる自分たち」が「ふと現実に引っ張り戻される」の反復横とびを非常にする作品でも有りました。

 ストーリー上の好みはこの「非日常という舞台」の中にあるものから「我々お客さんにも問いかけてくる”日常”」との組み合わせに関しても非常にかかってくるかなと。それを「楽しい」と思えるか、集中できないか、で取るかで評価も大きく二分しそう。

 アーサーの妻である有名女優ダリアの「おしゃべりが好き」な様子と「マダム特有の自分の語りをしたくなる」様子、「マダム」と想像して話すとそういう人だよね~という動きからの「ステージの使い方」からの非日常/日常の使い方というのも含めて坂本くんエンターテインメント劇場感が印象的でした。

 また、マーカスの立ち位置が「新人警察官」であり「刑事」という立ち位置ではないからこその「彼もまた隠している部分がある」なかでの動きが出ていました。初々しさと真っ直ぐさ、そのうえでの「過去」と折り合いをつけきれていないジレンマや誰か「大切」なものを作ることへの拒み方なども良かったです。

 概ね時間としては2時間ですが「歌」「ダンス」「芝居」「小ネタ」が詰まっているので、そういう意味では飽きさせないようにできていたステージでした。開始すぐにピアノの前の陣取り合いのシュールさも「ふふっ」と笑うところも多かったです。

 ただ、今はコロナ禍なので”声を出して笑う”ことの是非というものはどうしても問われる部分があり、「静かに観劇したい」という気持ちと「思わず出てしまう笑い」というものの二律背反があり、何度も劇場で笑いが起きているのを「大丈夫かな…?!」というドキドキさもありました。コメディの劇だから仕方ない一方で飛沫を懸念されている今だからこその難しさも感じました。それを言い出したら「お笑い」も「寄席」も「落語」も聞けなくないのでは?というお話になるのでアレなんですが……笑って大丈夫かな、という不安もちょっとあったのでそこらへん難しいですね。

 

個々人の印象について

坂本昌行さん

 言わずともがなの坂本くん。何人ものキャラクターをくるくると演じて、その上で「歌わなければならない」という難しさがあるなかで非常にチャレンジングな役回りだったように思います。「ここはアドリブなのかな?」と思わせる海宝さんとのやり取りもくすっとくるものがあって、見ごたえもありました。

 ドクターの役での「一人にしないでぇ」の言い方が非常に好きでした。ステフのチャーミングさと、キッズたちとのチャーミングさの「ベクトル」の違いがあって、子供、青年、レディ、マダム、ドクター、中年夫婦の温度差が激しい。中年夫婦のやり取りをこなした上での「ここでやるな」のセクシーな下りなど全部一人でこなすことの難しさを感じました。

 楽曲での声質も変えるということの難しさは以前「孫悟空」「孫悟飯」「孫悟天」をその場で演じ分けする野沢雅子さんのお話をラジオで聞いたことがあるのですが、そういった声優さんの「大変だなあ」と思うことをこなそうとされている姿も面白かったです。「表情」「声音」「動き」で分けるということへの難しさと、それでも伝わる坂本くんを通しての「こういう人がいそうだなあ」という想像力が膨らむというのも面白かったです。マーカスとステフの最後の一曲が重なり合うところでの海宝さんとの目配せや柔らかな表情すごく良かったです……。どちらかというと坂本くんはジェントルマンな様相もありながら、マーカスのようなツッコミも出来るタイプのお人のように感じているからこそ、コロコロと代わり、芝居の中で死んだりがなったり怒鳴ったり喧嘩したり色香を漂わせたり、笑わせたり――という表情をよく見られたように感じます。

 

海宝直人さん

 「歌が!!!!!!うまい!!!!!!」という衝撃がすごかったです。貫くような歌も、高音も、低音も、台詞一つ一つも、劇団四季のご出身ということをうなずける滑舌の良さと滑らかさに入り込むのが非常にスムーズでした。

 また、若々しいマーカスが抱いた傷の描写が「笑い」ではあるけれどサイコパス要素が打ち込まれているからこその記憶として蘇るシーンは何とも言えませんね。凄く印象に残ったシーンでもあります。

 坂本くんと年齢がすごく離れている俳優さんではありますが、堂々と、そして颯爽と二人のコンビネーションで舞台を彩っていく姿に気づけば目で追っていました。ぽつ、ぽつというシーンも、華々しく謳うシーンも、名探偵として推理するシーンも良かったように思います。他にどんなお芝居をされているのだろう、もっと見てみたいな、と思える惹きつける力がある俳優さんで、カーテンコールの晴れやかな表情も素敵でした。

 調べたらたくさんの音楽を配信されていて、それも含めて楽しませていただきました。

ゴー・ザ・ディスタンス

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  • 海宝直人
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes
カラー・オブ・ザ・ウィンド

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  • 海宝直人
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 今後も期待したい、安定感とブラッシュアップを続けられているお芝居であったと思います。今回の「Murder for two」を見られるのは1公演なのですが、レ・ミゼラブルジャージー・ボーイズに出ていたと知り「もっと早く存じ上げていれば…!!!!」と思うばかりです。next to normalには初演の頃からでていらっしゃるということもあり、楽しみです。

 ……と、ここまで書いていて福田雄一演出の2014公演「フル・モンティ」を見に行っているはずなので……絶対見たことがあるんだよな…と衝撃を受けました。色んな所でいろんな「あなただったか」があるご縁というのは、自分の人生を彩りますね。海宝直人さんのお芝居を意識した今、益々のお芝居が楽しみです。

 

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