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パルコステージ・栗山民也演出「凍える」感想

 坂本昌行さん主演の凍えるが開幕いたしました。坂本くんというとミュージカルのイメージが強いですが、「Oslo」や「君が人生の時」が好きだったので非常に興味津々。楽しみにしていました。

amanatsu0312.hateblo.jp

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 以下、本作についての感想は全編においてネタバレになりますので一度畳んでおきます。あれやこれや「こうなのかな」「こっちかな」というこねこね感想になります。ご注意ください。

作品概要

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 本作は1998年にイギリスで初演された作品。原題は『FROZEN』で、ニューヨークでも04年に上演。トニー賞にもノミネートされています。さらに2018年、ロンドンのTheatre Royal Haymarketでリバイバル上演もされるなど、センセーショナルかついろいろな見方が出来る作品。演出は栗山民也氏。翻訳を担当したのは平川大作さん。調べてみたら戯曲の翻訳に数多く携わるお人のようです。

作:ブライオニー・レイヴァリー
翻訳:平川大作
演出:栗山民也
出演:坂本昌行 長野里美 / 鈴木 杏

 新国立劇場Facebookではコラムも執筆されていて、ユニークなお人柄と映画に関する熱量の篭ったお話が読めました。

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 出演は坂本昌行さん、長野里美さん、鈴木杏さんの3人。3人劇で繰り広げられるお話ですが、聞いている限りペドフィリアとかそういうお話なのかな……とか最初の概要を見たときはすごく身構えていました。

 あらすじは次の通り。

ある日電話が鳴った……
あの日から止まったままの時間が、静かに動き出す。

10才の少女ローナが行方不明になった……それから20年後のある日、連続児童殺人犯が逮捕された……児童連続殺人犯のラルフを前に、ローナの母ナンシー、精神科医のアニータがそれぞれ対峙する。三人の内面に宿る氷の世界……拭いきれない絶望感、消えることのない悲しみ、やり場のない憎悪、そして……
それぞれの止まったままの時間が、不意に動き始める。
善悪の羅針盤を持てなかった男……裁くのは誰か。

(「凍える」チラシより引用)

 

ざっくり感想

 ステージが「多分これは絞首台の様子とキリストの十字架を模しているのではないか」と思わせる非常にシンプルな形でした。

丁字路仕様


プロジェクションマッピングで文字を浮かび上がらせ、それぞれの感情を吐露させながら描く描写は非常に生々しく「パルコステージ」といわれる分類をがっつり凝縮しているようなタイプ。決してハッピーラッキーよろしくね!な作品ではなく、重厚感がたっぷりと詰まった作品でした。

正義とか「正しい」というものというよりも「何を持って捌くのか」「羅針盤」というものがない中でのぷかぷか浮いてしまった人への救いってどこにあるんだろうという疑問があります。

栗山さんの黒くて、心の奥底に沈んでいる感情を「ステージ」という場所に引っ張り出してきて突きつけるような作りって日頃人間の中にある感情を向き合わせるというか「ありえない」が「ありえる」になっている舞台だからこそのできるものでもあるのかなとつくづく思いました。

 

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全員に対して主張があり、全員に対して考えがある。本作における主人公はいません。あくまでもローナという少女の失踪に併せて、周りが動く。彼女に深く関わりを持つラルフ。全員が大人でありながら、どこか歪んでいます。何なら空白の4人目のイングリッドが一番俯瞰して物事を見ています。

幼児虐待家庭内暴力といったものへの描写があったりとかという最初の注意書きを見た上で自分がどういう風な印象を受けるのかを向き合いながら、とにかく言えることはただただ悲しいだけだったら時間は少しずつすり減っていくけれど「そうはならなかった」「そうしたい」とはならなかったのが母親の部分にあり。また、ラルフは必要悪であり絶対悪ではあるけれど「生まれながらにしての悪」かどうかという部分に関しては議論として「否」ではないかなとは思いました。彼には彼の生い立ちがある。明るくて気楽なマイムマイムを聴きながらごめんなさいを繰り返す彼の中に何が生まれ落ちていたのかーーというものは描写で振り返りながら咀嚼しながら考えざるをえないのかな、とか。

マイム・マイム

マイム・マイム

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映画におけるドルビーシネマってあるじゃないですか。無音の中で針が落ちるところすら音を拾う、というあれです。

何だか本作はあの「針がぴん、と落ちる音」やかすかな音をかき分けて、FROZENという氷漬けになった世界を晒して刮目せよといっているような作品でした。決して明朗快活な劇ではないし、登場人物全員に感情移入はできない。何なら「そうはならないんだよな」という気持ちとのせめぎ合いはある。でも、確実に何かを得るものがあった。そんな作品でした。

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