人生日々ハイテンション

好きなものをビュッフェスタイルに楽しむ人の備忘録

「今夜、ロマンス劇場で」はとても上質な逆トリップものでした

タイトルの段階で「ああこいつ通ってきたタイプだな」って言われそうですけれど。多分一般的な映画のファンの方に比べていわゆる二次元的なファンでいることのほうが圧倒的に長かった自分なのですが、そのうちの一つで「逆トリップ」というものにハマったいたなと思い出しました。

いわゆる「自分は相手を知っていて、”イメージの中”の世界の人間である存在が、自分のいる”こちら”へ来た」という設定のお話です。

 

ということで、超オードリー・ヘップバーンみたいな格好が似合う綾瀬はるかみたさで映画見てきました。

ポスター画像

作品概要

wwws.warnerbros.co.jp

配給会社はワーナー・ブラザース銀魂とか割りと最近2次元からの実写化が多い印象があります。

www.youtube.com

あらすじ

映画監督志望の健司(坂口健太郎)は、映画館「ロマンス劇場」に通い詰めていた。

彼はそこで一人の女性と出会うが、彼女こそ健司がずっと恋い焦がれてきたスクリーンの中のお姫さま・美雪(綾瀬はるか)だった。

美雪はモノクロの世界から抜け出して、色にあふれた現実の世界を満喫するが……。

出演・スタッフ

製作がフジテレビジョンホリプロ。監督は「デート~恋とはどんなものかしら~」や「のだめカンタービレ」「テルマエ・ロマエ」の武内英樹氏。

信長協奏曲」の宇山佳佑氏が脚本を担当。

 

出演者は綾瀬はるか、坂口健太郎、本田翼、石橋杏奈といった若手から北村一輝柄本明といったしっかりと支える人たちが揃っていました。

 

感想

映画館で見るべき「映画」

最初全力で期待せずにいったのですが、思いの外とっても質が良かったです。

昭和35年というテレビジョンが頭角を現しだしたことにより映画業界が右肩に下がっている状況の中で、それでも映画を作る人たちの熱意みたいなのが見られるものでした。

映像見てて「どうみても東映だなこれ」って笑ってしまう部分がいっぱいあったり、「出、出た!昭和スタアだ!」という文言を用いたりするのはこの武内監督の良さみたいなのが出ている気がしました。聞いているこっちが恥ずかしいのにさらりとやりこなす主に北村一輝さんがすごい。キャラが立ちすぎて凄い。ローマ人にVシネにキザったらしい役を演じさせたらピカイチだなって思いました。

 

また、主演の綾瀬はるかのCMでも出ていたオードリー・ヘップバーンの「ローマの休日」みたいな空気感を持っていると思った作品が「えっなんだろうこのオペレッタ狸御殿*1みたいなの…」って全力でツッコミが迷子になりました。いや私オペレッタ狸御殿好きですよ!ツッコミが迷子なだけで。オダギリジョーがとてもかっこよかった。

なんにせよスタッフロールのときの出演者に「竹中直人」ってあって「エッいたの!?」ってぐらいに驚いた。お供のへっぽこ三獣士の虎かな。

綾瀬はるかの演じる「美雪姫」のおつきの森に住む3匹のお供がへっぽこすぎてこれはこれで1時間30分映画だとしたら「どういうこっちゃ」って意味で見てみたい。

映画に対して、見終わって思ったのは「これはスクリーンで、映画館で、それこそシネコンじゃなくて単館上映のところでみたいなあ」って思いました。早稲田松竹とか、目黒シネマとか、吉祥寺オデヲンとか。

映画館で見てたら、もしかしたら作品から飛び出してくるかもなあ、みたいなワクワクがあって、私はいいなあと夢膨らみます。

 

王道は”王道”だからこそいい

前半のコメディ部分はAnotherなら死んでた*2っていえる、割りとこう、一言で言うと「超ツンデレな女の子に振り回されるヘタレ男の子」なストーリーでブチギレるまで「このヒロイン、綾瀬はるかじゃなかったらできないよな全力「はぁ!?」って言われるやつだよな…」って思いました。いわゆるツンデレ暴力ヒロイン。

まぁそれも彼女の「キャラクター付け」で作られている存在だからこそ「やめてください」に対して「無理だ」って言ってしまうのだろうなって思うところも多々ありました。

そこから関係が徐々に変化していく、超一方通行の片思いからちゃんと相手を「相手」として見たときの変化は感じられますし、昭和の良きレトロ感に綾瀬はるかと坂口健太郎という俳優二人の空気感がとてもあっていました。「美男美女」という言い方よりも「平凡でさえない男の子」と「誰もが振り返る美人」という空気感があります。ただまぁ健司は東映京映の社長令嬢の女の子(本田翼)に片思いされるという「ハーレム主人公だ!」感もあるんですが。

それはそれで何故彼にモテ要素があるのかと聞かれたら彼がとてつもなく優しくてとてつもなく映画が好きで、っていう典型的なかんじだからなのでしょうね。

 

作品における洋画、邦画のリスペクト感がすごくて、「ローマの休日」「カサブランカ」「風と共に去りぬ」といった有名どころを踏まえて、その上で昭和35年の流行に沿った作品(ハンサムガイシリーズ聞いて笑えるあたりそうなのたろうし、ぶっ飛んでるのも含めての良さだとおもう)たちの面白さ。作中劇なんぞこれと言いたくてたまらない。資料ください(笑)

 

後姫のお衣装がモノクロからカラフルな世界にやってきたという意味もあってなのかとてもかわいいんですよね。この年代のお洋服が似合います。その前にやっていらっしゃったSK-II綾瀬はるかさんのCMで各時代に併せた格好をしているのが見られましたが、この辺の昭和30~40年台のお衣装が似合うこと似合うこと。かわいいな~って思いました。黒のセパレートもですが、ピンクや水玉もいいな、って思います。非常にかわいい綾瀬コレクションでした(笑)

 

この作品に対して思ったのは「王道は皆が好きだからこそ貫く、貫いた結果こうなる」っていう部分が強くあるのだろうなと。例えば雨が降って仲直りをしたら雨が上がって虹が出る、とか。

男勝りな口調もきっついヒロインが少し柔らかくなると表情が優しくなってドキッとするとか。そういう細やかな「あるある」「わかる!二次元で見た!」っていうのがいっぱい詰まっていて、「昭和35年」「昔ながらの作品」「ナウでヤング」にかっこよい、を貫いたのだろうなと。

石橋杏奈の看護師に対しては「いやお前仕事しろよ!!」ってツッコミポイント山盛りでしたが、彼女は彼女でめっちゃ泣いたり喜怒哀楽を大きく持っているのがかわいい。

本田翼のお芝居を見るのはアオハライドぶりぐらいの超久しぶりっぷりなんですが「青臭さ」が少し減って、「深窓の令嬢」という空気感がにあっていたと思います。彼女は決してメインじゃなくて物静かにひっそりと懸想して明らかに失恋するというTHEわかりやすい当て馬枠なんですが、役として良かったと思います。

動の綾瀬はるかのお姫様、静のお嬢様の本田翼。空気感が違うからこその良さですね。取り合いのようで取り合いじゃない。お互いがお互いを羨ましいと思いながら少しどこか遠慮しあう、という三角関係は可愛いです。

 

まぁこの作品のMVP誰?って聞かれたら北村一輝柄本明加藤剛なんですけれど。男性陣が本当に良い芝居をしていました。表情一つ、目の動きひとつで心をぐっと引き寄せるな~って感じます。

 

で、逆トリップって言われるとあれです夢小説を思い出すわけですが、夢小説通ってきてない人には私のブログ微塵も優しくないからそこらへんはまぁ割愛してください。そういうジャンルがあるんですってことで。未完成の10年前に作られた小説未だに某管理人さんお待ちしています。

 

途中で明かされる「自らの意思でこちらにきた」という美雪姫と、そのハンディがわかったときの絶望感たるや。それでも側にいたい気持ちと、自分がモノクロの「こちらの存在ではない」からこその動揺みたいなのは「王道」だけど新しさが感じられましたし、カラフルに映画を撮っているからこそ姫のモノクロさが浮き立ちました。

 

モノクロームから、カラフルな世界につながっていく

モノクロの世界で、何度も何度も同じことを繰り返される世界で、彼女は「映画のなかの存在である」自分を理解し、息をし、「作品」として今よりももっとすぐ出てきては消えてしまう作品の一つとしてあって、そのなかで忘れ去られながら健司が見つけ出してくれたことに「作品の中」の存在なのに喜ぶという、いわゆる住む世界が違う人魚姫のような、次元の違いみたいなものを感じました。RAINBOW GIRL*3じゃあないですか…。

最近話題のポプテピピックで「こんなげーむにまじになってどうするの」ってネタがありましたが(元ネタは「たけしの挑戦状」らしい)、第三者にとっては「そんな古くてつまんない映画の何がいいのかねえ」でも彼にとっては「大切なもの」なんだろうなっていう。

 

好きなシーンは前述した三人の男性のそれぞれのシーン。昭和スタアは言うことが違うぜ!っていう背の押すところと、彼自身が生きているだけでネタになっている作品の中でそれでも最後「か、かっけえ…」ってなるのがいいなっていう。

柄本明のロマンス劇場の主が言った「もらってるよ、ずっとまえにね」って言ってお金を見せるところも好き。彼と彼の大事な人のロマンスについても想像力かきたてられるわけですけれど。自分の知らないところで来てしまっていたのだとしたら、それはとても切ないよね。

加藤剛の好きなシーンはもうラストのシーンですよね。姫と連想ゲームをするところはもう見ててボロッボロ泣きました。うっかり泣いた。私の席の列に居た人たち多分全員大号泣していた。超泣いてた。

 

姫はあくまでも強気で「お前」「あいつ」「~だろう」という口調で通していますし決して崩れることのない気の強さがありました。それを受け入れる度量のある健司すごい。そして健司のライバルであり親友である伸太郎の「羨望」「嫉妬」といろいろな気持ちを持ちながら見ているかんじがいいですね。握手しているところとか、それでも、ってなるところか。令嬢のこと好きだったのかなあっていうところとか。3枚目の親友、でもやっぱりわかってあげているところの良さかなと。中尾明慶くんのお芝居久しぶりに見ましたが、見てて良いものでした。

 

また、最後のシーンで、互いにこの世界を去ったからこそ映るモノクロのシーンから、「お前はまだまだしもべだな」って笑われて受け取ってもらえなかった、あの時差し出した「薔薇」という赤を手にとってもらえて、一気に「お転婆姫と三獣士」の世界が彩りをもつところはうっかり本当に息を呑むぐらいキレイだったし、この作品の監督や、姫を演じた女優さんについての話は微塵も出てこなかったというのは大きいと思います。あくまでも「受け取った側」が見た世界、そしてそこから派生して生きていくものなのだろうなと。

作品の受け取り方は十人十色であるという肯定をなんだかもらったような気がします。

ちなみに自分の好きな作品の登場人物がいきなり映画館にしろ家のテレビにしろ(家のテレビにした途端いっきに貞子感出るのやめてほしい笑)、「部屋きたねえ!!!!!」ってめっちゃ怒られそうな予感がします。掃除しよう(真顔)

 

見てて面白い映画だったし、「触れなくても、一緒にいられたら」って気持ちを何年も何年も続けて時代の流れと一緒に映画が廃れていくのを見送りながら、それでも生きていく二人の姿はなんだか切なくも愛しかったです。

映画見ようぜ!!!!って気持ちになりました(笑)2018年今のところ見た映画の中では一番好きかもな、と思っています。期待値があまり高くない「まぁコメディだもんな」って思ってたからかもしれないけれど。それでも良い映画でした。

 

小説にもなっているらしい。今度読んでみようかな。後サントラがいい意味で懐かしさがあるレトロな空気感があってとても良かったです。

今夜、ロマンス劇場で (集英社文庫)

今夜、ロマンス劇場で (集英社文庫)

 

*1:美空ひばりなどで上映された「狸御殿」のリメイク。05年に発表。チャン・ツィイーオダギリジョーが主演。見ながらすごくツッコミどころが多くて私はそれはそれで好き。

www.kadokawa-pictures.jp

*2:Anotherなら死んでたとは (アナザーナラシンデタとは) [単語記事] - ニコニコ大百科

*3:2ちゃんねるの「作曲スレ」で作られた楽曲。RAINBOW GIRLとは (レインボウガールとは) [単語記事] - ニコニコ大百科 オタクの移り気な心を批判しながら、それでも純情な気持ちをさらけ出している曲。ゲームの中のヒロインのお話