柑橘パッショナート

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「怒り」を見てきました/“怒り”は何処へ向けたものか

「怒り」の試写会が当たりました。

前もってどんなもんかという知識は頭に叩き入れておいたわけですが原作読んで「お、おお……」となっている部分が非常に強く(好みが分断されると思います)個人的には原作については「…で、怒りってなんだったんだろう…」とそっと読み終わってから思ったわけですが。

今回の映画は「悪人」を作ったチームで作っています。

 

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原作:吉田修一

監督・脚本:李相日

音楽:坂本龍一

出演:渡辺謙 森山未來 松山ケンイチ 綾野剛 広瀬すず 宮﨑あおい 妻夫木聡 など。

 

www.ikari-movie.com

 

ということで大分ネタバレしているのでご注意を。

 

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概要

八王子で平穏で平凡な夫婦が殺された。“八王子夫婦殺害事件”といわれるそれは、猟奇的殺人として世間を席巻。犯人の山神一也は一年経ってもまだ逃走中だ。

それと同時期、東京・千葉・沖縄でそれぞれ素性のしれない男たちが現れる。三人のうち誰かが「山神」なのか。それとも三人共犯人なのか、はたまた三人とも違うのか……という物語。

 

3つのパート

東京ではゲイの妻夫木聡が出会った綾野剛。ハッテン場で見つけて半ば強引にそういうことをして、行くところがないならうちにおいでよということで一緒に暮らし始める。最初は何者なのか口にしなかったが彼は「なおと」という名前で、年齢が28歳と語る。

 

千葉では家出し、東京歌舞伎町でソープ嬢をしていた宮崎あおいを保護した男親の渡辺謙宮崎あおいは軽度のハンディキャップを思わせるような発言が多いが「本当にそうなのか」はたまた「違うのか」は明確化されていない。ソープ嬢として必死に奉仕をするせいで客が面白がってエスカレートして、まさに身も心もズタボロになった状態を父親が発見して保護。家に連れ帰ってきた状態。そんな彼女が居ない間にひょっこりと千葉に現れたのが松山ケンイチ(=”田代”くん)。

 

沖縄では恋愛に対して奔放な母親に振り回された少女「泉」(広瀬すず)がやってきた。波留島で過ごす彼女はそこで少しずつ馴染んでいく中で親しくなった「辰哉」が使うボートに乗り小島につく。そこで「田中」となる男(森山未來)に出会う。

 

ということでこの3つのパートと加えて警察サイドのストーリーが紐解いていくお話でした。

 

感想

原作よりさっくりと分かりやすくなっています。少なからず北見の恋人である美佳の存在をさっくりばっさりとカットしたことによって分散しにくくなりました。

ただ、一方でまきさんに重きをおきすぎてバランスが崩れているようにも思えなくもない。

 

東京

綾野剛妻夫木聡のゲイカップルの二人に関しては出会いが直人側からすれば最悪なんですが(半ば強引でしたし)、それでもついていったのは私は「そういうもんなの…?」となってしまったんですが、終盤のこと彼のことを考慮して、人生に対して諦念的なものがあったのかなあとか……。

穏やかな時間になっていったわけですが筋通していくとお前それでいいのか……いやいいんだな…うん……と言いようのない気持ちになりました。ほらだって泉があれでもしそのままされた後に「うちくる」言われてるようなもんじゃん……?とも思ったんですが

妻夫木氏の黒さと綾野剛氏の白さと太ももの大きさの違いというかが非常にはっきりしていて、シンメトリー的に描かれているなあと思いました。

ストーリー的にフェードアウトしてしまっている感が出てしまっていて後半ほとんど出番がないので「あっそういえばどうなったんだっけ」みたいな感じの思い出しなのは残念。

兄のやり取りについては総カット。お墓同じ所に入ったかどうかも不明です。なので原作より後味がこのカップルは悪い感じでした。

 

千葉の田代と親子について

全体的に主演が渡辺謙氏であることもあり、丁寧に書いている印象でした。宮崎あおいさんはこれのために7kg太って10日で戻したっていう話を聞きましたが正直そこまで丸くなっている感じはしませんでした。多分元々がめちゃくちゃ細いのでしょう。普通体型ぐらいじゃないかなあ。

髪の毛が傷んでいる&髪の色を抜いている部分が見事なプリンカラーになっているわけですが、それにふわーっとした雰囲気が印象的でした。田代くんはほとんどしゃべりません。それにしてもこの時の松山ケンイチは聖の青春より前なのか後なのか……聖の青春の後だったら一気に戻したんだろうなあすごいなあと思うばかりです。

原作で「お父ちゃんのせいで」と喚くシーンがあってそれがどうにも共感できず「お、おう……」とやっぱりなっていたんですが、あんまりその描写は多く感じませんでした。

「あの子は普通じゃないかもしれない」けれど「普通じゃない」と言われることが怖くて、認められなくて、検査すら受けなかった父親が「あの子が幸せになれるわけなんかない」っていうのはぶっちゃけ父親に対しても私はたいそう遺憾の意でしたが(ちゃんと分かるからこそそれにあった対処がとれるものだとも思う)。愛子が本当にハンディを持っているのかそうじゃないのか、は置いておくとして。彼女はあくまで田代を信じたくて信じたくて信じていて、でも「明日香姉ちゃんやお父ちゃん」に言われたから疑ってしまってその結果田代くんはいなくなったというジレンマ。純粋がイコール100%良いというわけではないんだろうな、とも思います。

3つの人々の中ではハッピーエンドよりだと思う。映画ではやーさんが来るのはカットされていたので「田代くんじゃあなんで逃げた」という根本的疑問。「ご迷惑になるから」という理論もわかるけれど…。

愛子の言葉を拾ってきて「とってもこわいんだよ」はもう彼女が体験した(=来てた)ってことなんだろうか……?とかいろいろぐるぐるしています。

 

沖縄の三人

沖縄に関しては沖縄で起きている米兵による婦女暴行問題等が顕著に描写されています。というかそれが引き金。前半は泉がメインですが途中から辰哉と田中の関係にバトンタッチ。田中に対してあっさり懐いてしまう泉と辰哉はある意味で「純粋」がゆえなのだろうけれど。

純粋=正しいわけではないのだろうなと今回本当各所で見てて思いました。

辰哉と田中さんのやりとりは原作ではなかったと思うんですが、そこにスポットが当たってくれたというか、どうやって死んでいったかが分かるというか。

田中さんは辰哉のことを理解するような素振りをしながらいろいろ話をして、予告で言っているセリフをいってくれてこのことが辰哉にとって心の支えになります。

だから、民宿(=実家)で暴れまわって逃亡した田中が気になって心配になって追いかけるし、だからこそ絶望する。

もう本当辰哉……ああ……不条理……となります。

辰哉が文字を消しているのが。もうしんど。本当しんど。一生だまり続ける。それについては絶対言わない、彼女が「言わないで」といったから、と思ったらうわー…となりました。

映像としては結構随所にヒントが与えられており、逆立ちしたまま考えている田中の描写があったりとか。ボートで海を割くように進む姿が印象的でした。

 

原作では山神が途中で人が変わったかのように……とかいろいろな描写がありましたが映画はそのへんはさっくりカット。

警察の北見さんのこともカット。警察はあくまでも調べてストーリー進行役として動く感じですかね。

 

田中がなんで豹変するのか………とかもいろいろ考えてたんですが「俺頭に血が登らないと気が済まないタイプなんだよね」みたいなこと言ってたからかなあとか。そのへんよくわからんかったです。

 

ただ辰哉の絶望と田中との関係と、その後の泉の関係がまたちょっと原作と違ってああー……となりました。この後彼女は原作通り証言するんだろうか。でも北見と知り合いでもないから言わないままなのだろうか。そもそも辰哉の証言も「信じていたのに裏切られたから」という後半の証言に変わっていたので、もしかしたらあのままで終わるのかな、とか。

 

見てて思ったのは森山未來は良い俳優さんになられたなあとしみじみしています。いやあ最初わかんなかった。言われてから「あっあれ森山未來か」ってなるぐらいのインパクト。

因みに辰哉役の佐々本宝さんはこの役柄を1200人の中から勝ち抜いた人なわけですが。最初見た印象は「卓球の水谷隼選手に似てる」とか「林彰洋にちょっと似てる」とかそんなかんじでした(ごめん)お芝居見てて楽しかったですし、これから活躍してくれたらいいなあ。

 

終わってみて

あんまり「長い」とかは思いませんでした。切り替わりがあったからだとも思います。惜しいのは泉と母親の関係が結局泉の口からだけだったこと、とか。高畑充希の薫って必要だったんだろうか・・・?とか。

怒りって結局何やねんって話とかなんで山神「怒り」ってやってたんだろうとかそういうところ。考えるな感じろってことなんでしょうか。

言い切れるのはマイノリティが抱えるどうしようもない気持ちの置き場とかそういうのなのだろうか、とか。

「悪人」のときも言いようのない「あの人は悪人なんですよね」って言って終わる後味の悪さがありましたがそれとは違う「おう……おおう?」というこの、なんだ、何?言いようのないこの気持はなんだろう感がありました。 

 

映画としてはいろいろ細やかに作られていて、映像としても面白かったし撮り方もへええ、ってなるものがいっぱいでした。 悪人でも思いましたが、「邦画っぽい邦画」というかんじはとてもしました。それにしても、ピエール瀧が出ている映画最近良く見ているなあ(笑)

 

おまけ:貰いものの謎

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貰った時点で「違うそうじゃない……」感半端ない。

ちょっと待ってどういうことなの……( ゚д゚)

これ知ってる…居酒屋とかのメニューと一緒に立てかけられてるやつ……と思って友達とネタにしていたんですが、帰りお好み焼き食べてきたらそのお好み焼きに立てかけたところ違和感皆無すぎて持って帰るのを忘れました。お店の人本当に申し訳ない。

 

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